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LIVE the Jazz Triology at Iida CANVAS 2022 .7.7. 太田裕士(sax) 岡只良(g) 中司和芳(b)

『ローカルスター』を中心に『聴く』という営為を始めてから何年かたつ。これは『表現者』に対して本当はいささか失礼な物言いになるのだが、『聴くもの』としてある現場に立つ以上、『素晴らしい演奏』に出会えなければ『感動』がないというのは多分に貧しい。ある一定以上のsomethi’elseは主体的に音楽に踏みいっていけばどのような音楽表現からも得られるもので、でなければ地方に在住してなおかつ演奏表現から実存の震えを感じ取れるわけもないし、また、『ローカルスター』たちの行為が『中央』の戯画であるはずもない。プロフェッショナルは誰もが一定の技術とヴィジョンをもっているのだし、その一瞬のほとばしりが時にひとであることを超え『宇宙』と導通する瞬間は、ミュージシャンである限り経験しているし持っている。その一瞬をしっかりと、『垣間見る』ことが『聴く』という営為なのだ。ある意味ミュージシャンとともに音楽に向き合うこと。

であるから私は地方在住であることにコンプレックスを持っていない。

『本物の音楽』は『臨場する』ものでなく『演者』と『真に聴くもの』が『ともに創る』ものなのだ。当然ながら、音楽のジャンルを問わず、『弾けている』『吹けている』ことに私は評価の基準を置いていないということだ。

人類の共有財産である音楽(ここで少なからず西欧近代のバイアスのかかったという修飾をつけるのが正確なのだろうが、私は音楽表現をもっと広いものとしてとらえている)が神なるもの・宇宙との同一化ないし一体化を目指してあるという言い方はいささか恣意的に過ぎるだろうか。だが少々演奏にも関わるものとして得た内宇宙と外宇宙の一体化の体験-これが真実・真理だという一瞬の確証… そのとき私は宇宙だった。が、もうひとつ言えるのは、『音楽』から『何を』『聴き取る』かは『聴くもの』個々人の『自由』だということ。

脱線はこのくらいにしておこう。

この3人、ことにベルリンから凱旋してきた中司を『ローカル』と呼ぶのに私ですら抵抗がある。『中央』の『一線級』に勝るとも劣らぬ実力を持つものばかりだが、同時に『ローカル』な『辺境』からの発信をと、志を同じにする仲間たちなのだ。1stステージはチャーリー・パーカーの比較的知られないナンバーから始まった。この曲で太田のマウスピースがいつもと違う気がした、当夜遅くまでバンドのメンバーと歓談していた私にそこを尋ねる機会はいくらでもあったのし失念していた。痛恨である。太田のソロレガートは相変わらず音数たっぷりだ。それを饒舌と感じさせないのが太田の音楽性だ。岡とと中司がトロピカルなムードを作り上げ、まさしく夏のトータルサウンド。太田がぶっ飛んだ。中司オリジナルgohst driverは私には難解だったのだが、オーディエンス受けは大変良かった。まだまだ私は修行が足りない。3.太田がクレイジーなリーダーぶりを発揮している。サビから不意にギター登場。こういう所に現れる太田の美学の極北に、残念ながら私の言葉は及ばない。そうして岡のソロにふっとかぶさるようにいきなりの中司の慟哭。1st最後は、太田の今日の中でも私もいちばん好きな曲のひとつ。天の河原で。バースソロから最初のリフまで、ファンキーなビートなっても太田ソプラノでのソロは続く。太田のめいっぱいがたっぷりと聴ける。ベースのご機嫌なグルーブ、ギターとの会話。ソロまわしはかなり自由なセッション風だった。中司ビートまわし圧巻!最後こらえきれず太田が入り、岡との会話のあと後ろ髪を引かれるようなコーダ…

2ndは太田岡ファンにはおなじみAlone Togetherから。オーソドックスな4ビート。岡続いて太田がしっかりとバップで歌い上げる。中司が切れる。続いて太田のオリジナル水眼。ガットギターが雰囲気つくって、太田。

太田のオリジナル、ことに自身が演奏したときのこの胸に迫ってくる感情はなんだろう。暖かく懐かしく泣きたくなる。ぐっとくる優しさ…泣きのギター、突然のように飛び込んでくるベースの慟哭… タイトルからMr.P.C.を思ってしまったMr.O.T. アルトでリフのあと、しかりと野太い岡のソロ。リードする太田がイッチャってる!中司怒濤のソロのあと、太田のソロは粒立ちが綺麗に揃ったレガート、音数たっぷりだ。太田の作品Loving Only You はソプラノから。吐息のようなサブトーンで始まる。バブルの頃をふっと思ってしまった岡のソロのあと、太田。この曲も泣きたくなるほど太田らしい、優しい、美しい。最後は太田のオリジナルまだノーネーム。ワルツ、太田岡太田と続く。セッションじゃないのにヘッドのサインは久しぶりに見た。アンコール、これも大好きな太田オリジナルカノヤ桜。スロー。太田のリフ、ギターも不思議に懐かしい。しっかりと、音、フレーズ…泣く。太田ソロ音数たっぷり。すさまじい燃焼度のライブだった。

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