妖の唄ーエゴの果てにーその弐【スズムラ氏コラボ】
『西條邸』
立派な日本家屋。
余程の商才か、『ゆり』の力か。
門を潜るや否や、怒号が響いた。
「みなみ!今まで何処へ行ってた!ゆりはお前が居ないと言うことを聞かんのだぞ!!ん、誰だ?その男は」
拓磨が捲し立てて来るのをしり目に、
「奥の部屋に居るんだね?」
拓磨を無視してみなみに聞く麒麟。
「うん」
無視されたことに更に激高する拓磨。
「みなみ!ちょっと来い!」
かなりの勢いで娘の腕を掴み、引っ張った。
「いたっ!痛いよっ!お父さん!」
即座に掴まれたみなみの手に触れる麒麟。
いつの間にか拓磨が掴んでいたみなみの腕は抜けており、麒麟に掴まれていた。
「え?」
「な、なんだ!?」
「自分の娘が痛がっているでしょ?離しなさいな」
「なんだ!?きさまっ」
右手をパチンと鳴らす麒麟。
途端に大人しくなる拓磨。目がとろんとしている。
「お父さんっ!?」
「大丈夫、軽い催眠状態にさせてもらっただけ。すぐ解けるよ。さぁ、ゆりちゃんのところに行きましょう」
「は、はい……」
みなみの理解が追いつかないまま、ゆりの部屋へ。
「ゆりちゃん、最近見ないからどうしたのかと思ったよ」
『離れようとしたら、結界を張られてしまって……。みなみちゃん、連れてきてくれてありがとう……』
「ゆりちゃん!大丈夫っ?」
『うん……ちょっと苦しいくらいで大丈夫』
ーー目に見えるほど強烈な電磁波か。何処でこんなもの作ったかねぇ……。
麒麟は懐より符を取り出し、右手人差し指、中指に挟みブツブツと呪言を唱える。
そのまま電磁波へ向かう麒麟。
「麒麟さん!危ない!」
電磁波は麒麟を避けて通っていく。
「おまたせ、ゆりちゃん。一緒に出ようか」
『はい……ありがとう……麒麟さん』
部屋の扉が荒々しく開く。
「逃がさんぞ!オレのゆりだっ!!」
拓磨は手元のリモコンを押すと更に電磁波は強力に流れる。もはや電流。
触れれば死ぬだろう。
ため息の麒麟。
「やれやれ、仕方ないですね。こちらも実力行使でいきますよ」
「わかってますよ、ゆりちゃん」
持っている符に向けて呪言。
符を手に持ち電磁波を握る麒麟。
衝撃が麒麟に走る。
「撥!」
炸裂音と共に止まる電磁波。
「ふー」
大きく吐き出された息と電磁波を握った手から流血。
「大丈夫ですかっ!?麒麟さん!」
みなみがハンカチを持っている走り寄る。
「ええ、たいしたことありませんから大丈夫ですよ」
「くそっ!」
手元のリモコンスイッチを乱打する拓磨。
「逆流させて機械ごと壊しましたから動きませんよ。ゆりはここから出ていくと言っています。それをまだ邪魔するのであれば、わたしが相手になりましょう」
肩を落とす拓磨。
『たくま、依存したらダメ。あなたが普通に正直にお仕事したらきっと大丈夫。あなたが優しいのはわっちがよく知ってる』
「ゆり、行こうかね」
『ん……麒麟さん、ありがとう、みなみちゃん、ありがとう』
「うん……ゆりちゃん……元気でね」
ゆりと麒麟。
「ゆりちゃん、今度はさ、みなみちゃんにつくんだろ?」
『えっ!?なんでわかったの?』
「何となく」
麒麟は笑う。
『みなみはたくまと一緒で優しい。優し過ぎて傷付く時があるから、助けたい』
「ゆりちゃんは相変わらずだねぇ」
『褒めてる?』
「褒めてるよぉ!こんなに優しい座敷わらしはゆりちゃんだけさね」
『あ、ありがと……』
ゆりは照れたように笑った。
[完]
雑な仕上がり申し訳っ!!
┏○ペコッ
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