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X.D. Across the Universe



独りだ。
私、独り。
とにかく走った。
あの人を、失くさないように。
勝手に涙が流れる。
きっとあの人は言うだろう。
『泣くな、走れ』と。

街外れの廃墟ビル。
朝までここで身を隠すしかない。
呼吸が乱れて戻らない。
鼓動が速くておさまらない。
わたしは生きてるんだ。


ーーん……。
陽の光がミサトの覚醒を促した。
気が付いたら眠っていたミサト。
寝起きで人の気配に驚く。




「お、目が覚めたか」

咄嗟に身構えるミサト。
声を掛けた主は銃を持っている。
「おいおい、そんな警戒すんな。あんたをどうこうしようなんて気は無いよ」
「あな……たは?」
恐る恐る聞くミサト。
「あたし?運送屋❤」
「運送……屋さん……?」
「そ❤こんな廃墟ビルで朝を迎える女子高生なんてFUNKYだねぇ❤」
「あの……私……」
「ワケありなんだろぉ?一緒に来るかい?」

女の名前は『スズタニ』といった。
運送業の傍ら、裏の仕事も持っていた。
『掃除屋』
殺しの現場を無かったことにする掃除屋の仕事を昨日行い、朝に最終チェックに来たらしい。

スズタニの車の中にて。
「それにしても、あんたいい顔してるねぇ❤裏側を見てきたのかい?」
「あ……いえ……私はそんなに……」
「ふーん、あたしの見立てでは……相当ヤバい所から逃げおおせて来たって感じがしててさ」
「…………」
「当たらずとも遠からずって感じのようだね。あたしんとこおいで❤行くところ無いんだろ??」
「でも……私、警察に追われてて」
「そうかい❤なおさらいいね❤あたしに任せな❤」

スズタニはそう言うと電話かけて、ミサトの容姿を伝えている。
「OK。準備しな、野郎共」
姉御肌全開の言葉を残して、アクセルを踏むスズタニ。
「会社行こ❤んで、その服脱いでね」
「え??」
「あんた❤名前は?」
「ミ、ミサトです……」
「ん、今日がその名前の最後ね❤」

加速するハイエースを尻目にミサトの不安は募っていった。

スズタニの仕事は早かった。
ミサトの格好に似た遺体検索、保管庫より出してミサトの服を着せる。
盗難車を用意して、事故に見せかけてミサトを形式上葬った。
車は崖の下の海の底。
ガードレールを突き破ったのでそのうち不審に思った人が通報するだろう。
車内にはミサトが持っていた携帯など持ち物全てを放り込み、ドライバーには誘拐犯であった輩の遺体を置いておいた。

「これでミサトは亡くなった。発見されてからならあんたは追われないよ」
「スズタニさん……あなたは何者なんですか……?」
「スズタニ運送社長よ❤」
ウィンクするスズタニ。
「ミサト、この名前で呼ぶのはこれが最後!さぁなんて名前がいいかな?生まれ変わったあんたの名前は??」

「カヲル」

ーーあの人を失わないように。

「私はカヲル」

Across the Universe × Full of love and passion to you




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