Farewell, World ~Say Goodbye to Everything You Love~
ーーこいつ……ホンモノだ……。
冴子の右手首から先は対峙している男が持っている。
ーー殺しになんの躊躇いもない真物。
「炎神冴子、終わりだ」
ーーごめん……カズヤ……。わたし……。
容赦なく振り下ろされる刃は冴子を貫いた。
冴子の眼から生気が消えていく。
滲む世界。
ーー嗚呼……。カズヤ、どうか。
さらなる追撃。
飛ぶ鮮血。
「い……き……て」
小太刀を二刀、鞘に納める男。
その刀をケースへと仕舞い、肩に背負い踵を返す。
「敵ながら、見事だったぞ、炎神」
冴子の右手首を眺めて、男は言う。
「サカガミのことだ、恐らく能力で気付くだろう。パートナーの死を。自宅に届けてやる必要もなかろう。この手首はボスへの仕事完了の証明として使うか」
冴子の手首をコートのポケットに仕舞い込んで嗤う。
ーーさぁ、サカガミ。どうする?お前の愛する女は俺が殺したぞ。
強烈な頭痛と共に、発動もしていない『先見』が頭の中を駆け巡った。
能力の暴走か、それとも危機を知らせる本能か。
サカガミは自宅リビングで地に伏した。
冷たいフローリングが少し意識をこちら側へと戻してくれる。
すぐさまスマートフォンを取り出して冴子に電話するが……。
一向に出ない。
「クソッ!」
ーー何時の先見だ!?全く分からねぇ。こちらから探った訳じゃねぇ強制的な受信だった。まるで時間軸が見えてなかった。
『ただいまぁ』
玄関が開く音がして、冴子が戻る。
「冴子!」
急いで玄関へ。
傷ひとつない冴子に安堵したサカガミは冴子を抱き締めた。
『どうしたの?カズヤ?』
「しばらくの間、オレから離れるな」
『え?どうしちゃったの?カズヤ』
「いいからっ!」
いつ起こるかわからないあの世界線。
サカガミは震える手を止められなかった。
ーー絶対に守る。こいつだけは。
胸いっぱいのアイと情熱をアナタへ × Farewell, World ~Say Goodbye to Everything You Love~
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
『キミにさよならを』
サポートなんてしていただいた日には 小躍り𝑫𝒂𝒏𝒄𝒊𝒏𝒈です。