見出し画像

キミにさよならを♯5


サカガミのマンションを横目に歩くルナ。
警察が来てごった返しのマンション下。
keepoutの黄色いテープがマンションへの侵入を許さない状態になっている。

ーーなんだ……?クソイライラする。誰が殺りやがったんだ……。

苛立ちもそこそこに、小鳥遊医院へ向かおうとするルナに後ろからひと声。

「殺気を放ち過ぎると、目立つぞ」
振り返るルナの腹に一撃。
呼吸が出来ずにルナは涙目のまま気を失った。
そのままルナを背負い、その場を去る男。

ーーこれで伊能悟をおびき出す。


悟は争い傷付き果てた小鳥遊をベッドに、そのベッドにサカガミを寝かせた。
そこに非通知で電話が鳴る。

「誰だ?」
『伊能悟だな』
「質問に答えろ」
『紅月ルナは預かってる。夜、23時、港9番倉庫内で待つ』
それだけ言うと電話は切れていた。

ーー人混みだろうと何処だろうと関係ないってことか。

「すまねぇ、ふたりとも。世話になったのに弔ってもやれねぇ」

踵を返して、街へと悟は消えた。


夕刻。

スズタニ運送には闇の仕事が入っていた。
その依頼内容に極力冷静さを保とうとしていたスズタニが居た。

『小鳥遊医院の掃除』

ーー小鳥遊先生が……まさか。あの人がそんなに簡単に……。

現場の下見に行くスズタニ。
いつもの慣れた道。
小鳥遊医院の下でハイエースを停めて、ビルを上がっていく。
嗅いだことのある匂い。
血と微かに残る硝煙の匂い。

小鳥遊医院のドアの前には血液溜まり。これが彼のものではないと祈りながらスズタニはドアを開ける。

血の跡を辿るスズタニ。
ベッドに寝ているふたりを見る。

「小鳥遊先生……サカガミ……」

血の気が逆立つ様な怒りの感情。
物陰から飛び出す男がスズタニに襲い掛かる!
スズタニの顔面目掛けての蹴り!
マトモに喰らうスズタニだが、フラつくが倒れずに、攻撃してきた男を睨む。唇からは血が滲んでいる。

「馬鹿だね、あんた……今のあたしに触れるなんて」


能力解放、ポワゾンボディ

シーリングポワゾンの応用で、身体全体に猛毒をまとったスズタニに蹴りで触れた男は毒に侵される。

男の呼吸が乱れ苦しみ始めた。
そこに男の首を掴み、無理やり立たせるスズタニ。

「誰に雇われた?言え……死ぬぞ」
男は瞬時に舌を噛み切って絶命を選んだ。

ーー殺しのプロか。こいつらが動き出しているのはかなり厄介だ。ルナや悟は生きてんのか?

思考の外れに一抹の不安。

ーーカヲル……。

この依頼が囮だとしたら。
スズタニ運送にいるカヲルをひとりにさせる為の囮だとしたら。

スズタニはハイエースに飛び乗って、スズタニ運送へ車を走せた。




𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

サポートなんてしていただいた日には 小躍り𝑫𝒂𝒏𝒄𝒊𝒏𝒈です。