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キミにさよならを♯4


血塗れの男を背負って、小鳥遊医院まで急ぐ悟。
傍から見れば異常な状態なのは誰が見ても明らかだった。
それでも声を掛ける人は居ない。
みな、訳の分からないことに巻き込まれたくないからだろう。

しかし、警察官が呼び止めてくる。
「きみきみ、いったい……」
サカガミに触れようとする警察官へ
「触るな」
眼力のみでそれを静止させた。
気圧された警察官は動けずにそのまま立ちすくんだ。



その数十分前。
ルナは街中で洋服の買い物中に、ヴィジョンが頭の中に飛んできた。
「わっ!!」
閃光のような光がいきなり頭の中に広がったルナはたまらず声を出してしまっていた。

ーーなに……今の……冴子??

鳥肌が湧き上がるルナ。

ーー場所は港。

港へ向けて走るルナ。
胸が騒がしい。

ーー何なんだよ……この感じ。

サカガミのマンションを横目に走り抜け、港の方へ。

ーーもうすぐ港に着く。早く。早く。

そこに飛び込んでくるヴィジョン。
またも頭の中に走る閃光。

「うっ……」

衝撃が来るわけではないが、ルナはしゃがみ込んでしまった。

ーーなに……今度は……サカガミ?自宅じゃないのよ……。どうなってんの?みんな。

とりあえず港の様子を見に行くルナ。

「あ……」

1箇所、地面のえぐれるように陥没している場所からヴィジョンが飛んで来る。

ーー冴子……あんた……。

ルナには全て理解出来た。
冴子が全て教えてくれた。
スマートフォンを手に悟へと電話をかける。長いコールの後に悟は電話に出た。

「悟っ!今どこ!?」
「ああ、小鳥遊医院だ」
「サカガミ!?怪我したの?」
「ヴィジョンで視たのか?サカガミは……殺られた」
「はぁ!?そんなに簡単に殺られるわけ……」
「小鳥遊先生も……殺られている」
「ウソでしょ!?あの先生が殺られるわけないって!何言ってんの?」
「黒幕は殺し屋を雇って、オレたちを始末しようとしている。天王寺はフィクサーなんかじゃなかった。ルナは何処にいる?すぐ小鳥遊医院まで来い」
「今……港……此処で冴子が……」
一瞬の沈黙。悟の無念が其処に篭っている。
「そうか……急げ。なるべく街中を通って来い」
「わかった」

黒い渦が彼等を呑み込んでいく。
ジワジワと。
抜け出せないように。
堕ちていくーー。



𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

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