キミにさよならを♯2
サカガミに余裕は無かった。
抗いようの無い暴力が迫ってくる。
太刀打ちできる力を求めるしか方法が思いつかなった。
取り出したスマートフォンから呼び出す先は、『悟』だった。
ーーすまねぇ、巻き込んで。お前の力が必要だ。
「ん、どうした?サカガミ」
変わらずのトーンで出る悟。
「悟、すまねぇ……力を貸してくれ」
冴子に聞かれぬよう、ベランダに出て話をする。
サカガミは今までの一部始終を話した。
「わかった……すぐに行く」
悟はふたつ返事で答えてくれた。
ーー何かが変わってくれ、アイツが居てくれたのなら何かが……変わってくれるはずだ。
一縷の望みを託して悟を呼んだサカガミは、今一度『先見』を行う。
ーーゾワッ。
少し変化した『先見』の内容。
だが……。
「冴子っ!!」
リビングに戻るサカガミ。
其処に冴子の姿は無い。
「何故……」
冴子は人気の無い場所へひたすら歩いていた。
ーーありがとう、カズヤ。あなたの気持ちは痛い程……わかってるわ。
港の岸壁にて。
『つけてきてるのはわかってるわ』
ーーここならやれる。
小太刀を二刀、脇に差した男が音もなく現れる。無表情でイマイチ動きが読みにくい。
懐から銃を取り出し、即銃撃する冴子。そのタイミングを図ったかのように消える。実際は瞬時にかがみ込み、曲げた足のバネを利用して、冴子に向けて突進している。
一瞬消えたような錯覚を覚えた冴子。
男の殺気で向かってくる相手を迎撃するつもりだったーー。
それよりも速く、男に踏み込まれ腹を貫かれる冴子。
しかし、冴子さらに男に向かって踏み込んだ。
刃が身体に深く刺さっていく。
ーーリミッター解除。
冴子のスキルに加わっていた力。
脳のリミッター解除。
それによる脅威的な怪力で、男をホールドする。
「炎神……きさま……」
『あなたが脅威なのだとしたら、わたしが今……此処で……必ず仕留める』
「最初からそのつもりか……」
『わたしが……スキルを……増やさないわけ無いでしょ……爆弾は『熟練』してあるわ……』
ーーカズヤ……。ごめんね、予行練習したのにね……。
男は冷静にもうひとつの小太刀を冴子の肩口から体内へ向けて突き刺した。
冴子が吐血するが、力は衰えることは無い。
ーーなにっ?!……こいつ……。
『痛みは邪魔よ。脳を『熟練』した今のわたしに痛みは無い』
冴子の上着の裏地に仕込んだ小型爆弾20個が起動する。
「くそっ……」
『さよなら、カズヤ、みんな……生きて……ね』
小型爆弾の連鎖爆発!
至近距離で受けた男はひとたまりも無く吹き飛ぶ!
「冴子ぉぉ!!!」
絶望の『先見』は10分先。
足掻こうとしても間に合わない。
サカガミは冴子消え逝く姿を脳内で視ることしか出来なかった。
握りしめた拳からは、血が滴っていた。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
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