『X.D.』♯19.2
9月20日。曇り。
『イノウエミサト』の保護。
何気なくつけたテレビに報道されていた。入院と報道されていたが、あまり良くない印象を受けた。
贋物の報道のようで。
9月23日。雨。
実家へ忍びこんだ。
親父の書斎へ。
パソコンを立ち上げてファイルを漁る。
異能力者リスト。
何だこれは?
『イノウエミサト』の対処。
覚醒前。入院時の検査にて発覚。
覚醒の可能性あり。要注意人物。
覚醒させぬように、病院にて薬漬けで脳の機能を潰させる予定。
ーー異能力?どういう事だ?
異能力者淘汰推進本部より。
『特殊能力』を備えた人物は一般人の生存権を脅かす異形の存在。
これは発見した際には、如何なる法律も超えた超法規的措置を適応し、排除、抑制を行うこと。
ーーZIPANG政府からの文言だと……。
何らかの特殊能力を有するものは、排除、抑制対象だと云う。
国に一線を引かれた人達が居て、それを排除しているのが親父だってのか?
どうかしている。
眩暈がする。
何だ?この世界は?
『イノウエミサト』が潰される。
その事実は揺るぎようがなかった。
9月30日。晴れ。
イノウエミサトの病院を探れども、なかなか見つからなかった。
こうしている間に、イノウエミサトはきっと自己を封殺されてしまうかもしれない。
歪みなく、自分に正直に生きているだけの人間を封殺するだと?
歪みなく、人を傷つけずに自分が傷付くのを選んだ人間を?
どうにも我慢がならない。
必ず見つけ出す。
残りの時間、全てを賭けて。
もしも、僕に異能力なる力があったのならばーーどれほど良かっただろうか。
イノウエミサトの異能力が、もしかしたら世界を変えるかもしれない。
こんな妙な世界の希望になるかもしれない。
それを今は信じたいーー。
続
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