『X.D.』♯19.5
10月4日。曇り。
何故……わたしは精神病院に入れられているのだろう?
警察なんて信用出来ない。
何を考えているのかわからない。
笑顔を向けられても、それが仮面のように見える。
此処はどこの病院なのか?
そのヒントもない。
完全な個室。
鍵もかけられた。
どうやったら逃げられるのか。
それを探る毎日。
渡される薬は飲んだふりをして捨てていた。
なんだか贋物のように感じたから。
なんだか、あの人みたい。
贋物がわかるようになってきたのかな。
わたしに許されたのは、このペンとノートだけ。
ならば、記録してやる。
わたしが思ったこと、起こったこと全てを。
それが事実として、記してやるんだ。
10月16日。晴れ。
探り出す。
ここが何処なのかを。
とにかく、話した。
来る看護士さんや、病院スタッフに。
怪しまれぬよう、日常会話の中にさり気ない質問を。
答えられなくても、気にしない素振りで次の機会を待つ。
それの繰り返し。
なかなか情報は出てこない。
それは隠しておけという意図があるに他ならない。
病院スタッフを狙い撃ちした。
何処から通っているのか?
どれくらいかかるのか?
この病院の新しさと大きさについて。
角度を変えて、いろいろな質問を投げ掛けた。
メモした事柄を合わせてみる。
浮かび上がる場所。
きっと此処はーー。
わたしはノートの端を切って、指を噛み、血文字で病院の名前と『助けて』と綴った。
10月22日。雨。
警視庁の人が来た。
とても怖い人。
少し目が赤く見えるその人は、何となくあの人の匂いがした。
わたしの体調はもうだいぶ良いと伝えているのに、まだ入院が必要と言う。
『そのノートは?』
警視庁の人はわたしの日記を指して言う。
「日記です、人には見せられません」
警視庁の人の目は、わたしの贋物の部分を見つけようとしているみたいで、あの人を連想させてしまう。
ーー賭けてみようか……。コレに。
ノートの切れ端に、自分の血を使って書いたSOS。
何処か怖いけどあの人の匂いがするこの警視庁の人に……忍ばせてみようか。
鳴る電話。
警視庁の人がスマートフォンを弄りながら出ていく。
脱いだコートは椅子に掛けてある。
そこのポケットに手紙を忍ばせた。
続
サポートなんてしていただいた日には 小躍り𝑫𝒂𝒏𝒄𝒊𝒏𝒈です。