[詩]雨にけぶる街は
境界をなくしたぼやけた景色
こういう日はカーテンを閉めない
茫々と薄れるビル群は
どこまでも果てしなくもあり
閉じる世界の際のようでもある
長靴で歩きたいし
窓辺で立ち尽くしたい
サアサアと騒がしく
シトシトと静か
曖昧なはざまの時は
いくつかのものをはっきりさせる
ひとつは路面の光
ひとつは言葉の不自由さ
ひとつはあなたの物憂げな横顔
そんな表情も持っていたのだね
あらゆる不思議にすっかり魅せられて
ぼくはもう眼が離せない
部屋にもどっても明かりはつけない
温かいコーヒーもいらない
今夜だけは誰とも口を利かず
毛布にくるまって切なさの底で眠ろう
雨しかない街があるのなら
三月ばかし住んでみたい
しっとりと濡れる街と人は
きっと愛で溢れている
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