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お金と天文学

ワタシらの想像の範囲は、縦横高さの3次元、せいぜいが4次元ぐらいまでですが、現代物理理論によりますと11次元まで考えられるそうですな。どないな世界なんでっしゃろ。

●異次元にもほどがある

大谷翔平選手の活躍は、これはもう異次元すぎる。11次元顔負けですな。投手としても打者としても今やメジャー屈指の存在になりました。もはや超人です。収入も桁違いで、契約金は10年間で1000億円。CMなどの副収入だけで年間100億円というから天文学者もびっくりだ。盗難被害も別格で、一平ちゃんに26億円以上もやられたとか。どうにもこうにも別世界、といった感じですね。

人生の価値は稼いだお金の量で決まるものではない、とワタクシは考えますが、もう一人のどうしようもないワタクシは「そんだけありゃ本堂の改築どころか、大伽藍が建つじゃん」とマジでうらやましがったりしているのであります。

●仏教で読み解けば

仏教の考え方を一つ、紹介させてください。

お釈迦さまが生きておられたころの仏教教団では、「サンガ(出家集団)」での修行こそが弟子の使命であり、仕事(社会的生産活動)は禁じられていました。仕事の対価としての収入は、出家者にはなく、代わりに「ダーナ(旦那という言葉の語源)」からの施しによって生活していたんです。施しは世間の人々による尊崇と敬愛の証しでした。

社会的な生産活動に携わらないという意味では、スポーツ選手や芸能人、芸術家らは、現代の出家者といってもいいでしょうか。一生懸命に努力を重ね、ひたむきに結果を追求し続ける。そんな姿に多くの人々が感動と共感を抱き、施しをする。大谷選手は、世間の人々というダーナから「大いなる布施」を受けているのです。手にする金銭は本家本元の出家者とは比較にならないほど大きいですが、構造は同じですね。

●歴史をつくるのは誰か

「出家者」の道は厳しいですよ。光が当たっている間はいい。ですが、いったん評価が下がり、施しを受けることができなくなれば、生活すら維持できなくなります。そんな人は大勢いますよ。「出家」前にあきらめる人もね。

歴史を作るのは、大谷さんのような特別な存在の人たちかもしれない。しかし、もう一度よく考えてみると、この世の礎を築いているのは、大多数の一般人ですよ。ありふれたワタシらのような人たちですがな。歴史書の文字と文字の間にはワタシらの祖先の営みがぎっしりと詰まっているのです。

大谷さんのような特別な人は素晴らしい。しかし、当たり前のことだって、非常に重要なのだ。声を大にして言いたいぞ、っていうのがワタクシの見解なんです。しごく当たり前で済みません。

●その報酬、あなたの仕事に見合ってますか

農家の人々がお米を作らないと美味しいおにぎりは食べられない。漁師の人々が漁をしない限り美味しいお刺身は食べられない。畜産業の人々が牛・豚・鳥をお世話しない限り美味しい焼肉は食べられない。食べ物を配達する人々、それを加工する会社、それを販売する商店がある。ボクたちの日常は、想像以上に多くの人たちに支えられているのです。

大谷さんは素晴らしい。私らの仕事だって平凡ではありますが、素晴らしさだけを比べると、大谷さんと優劣つけがたいと思いますよ。なのに金銭での評価は雲泥の差がある。

仕事をお金で換算するから、結果的にそうなってしまうのです。労働力も商品の一つですから、価格がつけられちゃうんです。今の世界のルールだから仕方ありませんね、で済ませていいものでしょうか。

農家・漁業・畜産業の人々が仕事をやめてしまったら、ボクらの暮らしは簡単に崩壊してしまう。そんな大事な役回りなのに、それに見合った報酬といえるのでしょうか。

●おぬしは、どないやねん

大谷さんは一人ですが、働く人は大勢である、ということを考慮しても、現実的な選択としては、エッセンシャルワーカーの報酬をもう少しアップすべきなんじゃないですか、と愚僧は思うわけです。愚僧が言語にするのは、はばかられますが、いわゆるブルシットジョブに比べて安くはなかろうか、と。

もっとも、出家的立場にあるべきお坊さん、ていうか、出家してますやん、まあそのお坊さんがですね、立場にあぐらをかいていることも珍しくないじゃん。きっとそう言われるでしょうから、まずワタクシ、反省はしておきますが、ブルシットジョブといわれないようにですね、大谷さんとはいきませんが、精進をしてですね、エッセンシャルワーカーの片隅にでも置いてもらえるように、精一杯の努力を重ねないといけないな、と愚僧チョークー、そう思うわけであります。この辺り、若干歯切れが悪いながら、合掌。

でも、お金はほしいよね、邪魔にならんしな、ともう一人の愚僧がしつこくささやくわけです。人間ってどうしようもありまへんなあ。


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