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母のそばで♡自分のお金を動かせない篇

95歳の母が私の家で療養する直前のこと。
銀行に行きたい、というので連れて行った。

よろめくのが心配で母の横に立っていたけど、
手元は見ていない。
いくら親でもジロジロ見るのは失礼と思うから。

ところが!!
えらく時間がかかるので
「どうかした?」と声をかけてみた。

母は困った顔で「お金を下ろせない」という。

手元が狂って違う番号を押したんじゃないの?
母に番号を聞いて私が操作してみた。
機械は反応しない。
母と私で何度か操作したので、もう無理だ。



とうとう…?


窓口に相談に行った。
暗証番号を変えたら良い、と
アドバイスを受ける。
そのためには印鑑が必要。
今日は持ってきていないから、また来よう。

番号を忘れたか…。
とうとう来たか、こんな時が!!

よくあることらしいよ、心配要らないさ。
番号は変えれば良いのだから、大丈夫。
また一緒に行こうね。
今度は私も一緒に覚えるから。

どんな言葉も慰めにならない。
母の落ち込みはすごかった。
自分が入力した番号に間違いはない、
と思っている。

お金を出せなかったショックと、
ひょっとして自分の記憶が違うのか、
というショックと。

とうとう、ボケたかな?
お金の管理、どうしよう?
本人の気持ちを傷つけずにうまいこと
できるかな?

妹たちと銀行の出来事を分かち合った。

うまくいった?


母は、今度は郵便局に行きたいと言う。
銀行がダメだったから郵便局から
下ろしたいのだろう。

通帳を渡され、番号を耳打ちされた。
言われたとおりに番号を入力すると、
お金が出てきた。

ん?
この番号は覚えてるのね!?
ということは、ボケたわけではないってこと?

ナゾは深まる。

後日、妹も一緒に銀行へ向かった。
印鑑を持って。
母は、家のメンテナンスの件で業者に早く
送金したい。
そういうことをさっさとしないと嫌な人だ。
この仕事は銀行が都合良いのだろう。
窓口で手続きして、番号を変更した。

今度は大丈夫、たった今番号を変えたし。
通帳を預かってATMで操作する。
しかし、送金できない!!

窓口に事情を説明。
すると

高齢者を詐欺から守るために………

説明がそれ以上入ってこない!
悪いことをするヤツのために、一般の人たちが
不便になっている!?

それって、母が番号を忘れたからではなくて、
そもそも出てこないようにしてるってこと?
高齢者は自分のお金を自由にできないの?

私は高齢者予備軍なのに今まで何も知らず、
うかつだった。

窓口に相談して、お金が出るようにして
もらった。
ATMではなくて、窓口に行けば良いのかな。
それも不便な時があるよネ!

今度は私がショック!!
世間の常識に疎いことと、これから先
自分も不便になるだろう、ということに。

お金をどうするか?



母は自分の意識がハッキリしているうちにお金を動かしたいらしい。
全部、私の通帳に移動したいと言う。
そして、母が亡くなった後姉妹で分けて
欲しいそうだ。

しかしねぇ…。
「生前分与」ということになるし、簡単にできるのかな?
税金のこともあるし。
それなりの手続きがあるはず。

銀行の人から説明してもらった方が良いか?

母を伴って銀行へ。
案の定、私の言ったとおり。

しかし、亡くなった後に代表者がすぐ出金できる保険があるという。
母は乗り気だ。
調べてもらったら「年齢制限」があって、
母は無理だった。
90歳まで、だったかな。

また、母は拗ねた!

生前分与にあたらない上限の額を年に1回入金することはできるそうだ。
私たち姉妹3人に今年の分だけでも入れてくれたら良いけど、こちらからは言えない。

とにかく、自分の思うようにいかないので
ご機嫌ななめだ。

普通預金と定期預金と証券?


そうこうしているうちに、母は具合が悪くて
動けなくなった。
死期が迫っている、と感じるらしい。
通帳のお金をなんとかしなくては、
と思っている。

「全部下ろしてきて」と私に言う。
本人でない者が行っても無理よ、と思いながら
言われるとおりにする。

銀行で相談したら「電話で本人の意思確認ができたら良いです」という。
ならば、妹が居る時にライン電話して銀行の人と確認してもらえば良い。
定期預金はそれで良いらしい。

問題は意外にも普通預金だった。
なんと、母は証券か何かと紐づけていた。
証券の利益が普通預金に入る仕組み。
証券の解約をして利益を普通預金に入れて、
それからの普通預金解約。
しかも、母が契約した支店でないと解約も
できない。

いつの間にそんな資産運用的なことを
したのだろう?
全く驚くし、頭も下がる。
何の知識もないと思っていたけど。

妹に動いてもらうしかない。
代理人の手続きが必要ではないかな?

銀行で聞いたことを報告すると、がっかりして
一層元気を失くした。

安心して!


なにかと面倒なことになると知っているので、
私は遺言証書を作っている。
私の死後、相続人は証書をもって行けば銀行の
解約・出金が即座にできる。
まあ、申し訳ないくらい少額だけど。
しかも、私が死ぬ頃には限りなくゼロになって
いるはず。
もはや作る意味はあったのか?と思う。

しかし、遺言証書作成を母に勧めるわけにも
いかなかった。
しかも今となっては母は動けないので、
公証役場に行くことは不可能。

お金のことはデリケートな問題だ。
元気なうちは言いにくい。
元気でなくなったら更に言いにくい。


母が旅立った後、手続きは面倒だけど
大丈夫!
母が節約と資産運用したお金をちゃんと
受け取って、大事に守る。
だから安心して!
慌てて出さなくて良いから!
ちゃんとするから!
妹たちが困らないように
責任もってするから任せて!











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