書き出し切る

まだ所感が弱い、という指摘を受けた。
以前の職場では、レポートをするとき箇条書きにして要点のみ簡潔に書いたのだが、この部署では通らない。

「取材して得た情報はためずに、書き出せ。そして頭に中に残さず出し切れ」と。

感情をこめて、少し強い言葉で書いた。この感覚はあれに似ている。
そう、酔いが回りすぎたとき、指で下の奥を強く押して、腹から中のものを搾り出すような感じだ。出し切るとすっきりする。

俺の取材メモは上司をクリアした。そして社内で回覧が開始された。

仕事を終えて、一日の紙ごみを片付けにゴミ箱に向かった。ゴミ箱には赤ペンの殴り書きが記された原稿が捨ててあった。今まで俺が書いてきた、上司の推敲を受けた原稿だ。新たな原稿を提出するたびに、これら上司の添削を受けた赤ペンの原稿を一緒につけている。不要と考え、きっと上司が捨てたのだろう。

「この文章は成長の過程だ。」

俺はその原稿を拾い上げ、ファイルに閉じてファイルに入れた。同じ指摘を受けないように、次書くときの参考にするために。