ヒッチハイク 前編


 1000ドルライブに負けた僕らには、交通費など無かった。

 僕は小杉さんと、大阪までヒッチハイクで帰る事を決めた。


 まず会場の方南会館から用賀ICまで一時間半かけて歩いた。この一文にまとまってしまうのが、ゾッとするほど疲れた。
 僕らは前日も夜行バスで寝れていない。

 目的地まで着いた。ICの前の信号に止まった車に、海老名サービスエリアへと書いたスケッチブックを掲げる。

  30分位で1台の車が止まってくれた!この瞬間ほど嬉しいものは無い。60代後半のおじさんが1人乗っていた。大量の荷物をどけながら、
「今日今から星を見に行こうと思って。行かない?」
と言ってくれた。
 僕らはすぐに「行きたいです。」と伝えた。どうやら星が見えるスポットに、連れて行って貰えるらしい。

 
 行きの車内で学生芸人をしている事や、ライブで負けてヒッチハイクをしている事を説明した。
 すると、おじさんはテレビの編集をやっていた事を教えてくれた。タモリ倶楽部やボキャブラ天国を編集していたらしい。
 凄い人だった。

 テレビがつまらなくなったと、おじさんが言った。
「ホモとか、おかまとか、ブスとか、言ったあかんでしょ?」
 あかんやろ。

 神奈川の山の奥の公園に着いた。満天の星空だった。

 寒かったが、綺麗だった。

ドイツ兵みたいな小杉。


  おじさんは海老名まで送ってくれた。海老名でラーメンを食って、また再開した。

 

30分程で、40代半ばのおじさんに声をかけてもらった。おじさんは札幌から沖縄まで車で向かっているらしい。
 吹田SAという、1番僕の家に近い所まで送って貰える事になった。


  おじさんは大病を患い、今はもう完治したそうだが北海道で死ぬのは嫌だ、と感じて沖縄移住を決めたらしい。
 結婚もしており、妻と子供は札幌に置いてきている。妻とは事実上離婚している様な状況らしい。 
 とにかく沖縄が好きでしょうがない、北海道民だ。

  僕らの状況を説明すると、
「なんくるないさー、だね。」と言われた。
 ちょっとイラッとした。

  おじさんは色んな職を経験していた。ガソリンスタンドには8年間勤務をしていたらしい。ただガソリンスタンドの店員として必須の免許を、8年間取らなかった。

 無免許だったので、1人で店を回している時間に警察が来たら終わりだった、と笑っていた。どうやら売上の成績を1番になり続けていたので、文句をあまり言われなかったらしい。

「バッテリーに電圧かけて、数値バグらしてさ。これじゃヤバいって、ビビらしいたら儲かるのよ。」
マジなんやねんこいつ。


  タバコの話をした。その延長で、大麻の話になった。
「僕は賛成。若い頃吸っててさ、」
むっちゃ犯罪者だった。


 最初は寝るタイミングで下ろすかも、と言われていた。でもタイミングを消すように、死ぬほど喋った。8時間あったが、ほぼ喋りっぱなしだった。
 小杉さんは後半2時間以上寝ていた。

犯罪者と僕ら。


 吹田SAに着いた。ここが長かった。着いたのが10時で、家族連れが増えたので難しくなっていた。僕らは完全にストップしてしまった。


 

すると、手にタトゥーが入った青髪のおばさんが声をかけてきた。


後半へ続く。


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