「農家はもっと減ってもいい」

「農家はもっと減ってもいい」
#久松達央

刺激的なタイトル(と攻撃的な表紙)ですが、中身はかなり論理的に地に足がついていて、現代日本農業の詭弁的常識がすごく整理されています。インパクトと棘のあるタイトルですが、その実、大小それぞれの事業体規模でのとるべき戦い方をしっかり示していて、補い合いながら全体で世のため人のための生産ができるような提言がなされています。

著者は「座組み力」の段でプロジェクトを要素分解し、遂行に必要なものを考えて集めていく重要性を謳っていますが、その力が農業界全体の現状分析にも遺憾無く発揮されています。可哀想感情と農業構造問題、景観地域コミュニティと生産、集約可能地域と不可能地域、マスとニッチ、理念としての有機と選択肢としての有機、、、一緒くたに語られがちなトピックが一つ一つ分けられてその条件をきちんとほぐして語られているので、とても腑に落ちる感じがありました。

読んでいて、語彙というか表現の引き出しが豊富なのでそれも楽しかったです。
・美意識は、「誰に褒められたいのか」で探れ。
・目の前の具体に没頭しながらも、その意味論を常に考えて抽象のハシゴを上り下りできる人が特定の文脈から解放され成長できる。
・選ばなかった選択肢をどれだけ考えられたかがチームの力となる。
・食べる人にとっては可食部だけが野菜、生産者にとっては植物全体が野菜。(豚もそう)
・本当の知性とは、目先の得のために立ち回る賢さではなく、自分よりも強い相手に挑む勇気である。
隙間を狙うものこそ全体をよく見る必要がある。
・過去の存在意義が未来永劫続くわけではない。存在条件と存在理由は常に見直されていくべき。
・集約化が進むと市場への個々の影響が可視化され、責任が出てくる。日本農業の幼年期の終わり。
・皆いいと思うものに寄せていけるのは経営資源に恵まれたプレーヤーのみ。
などなど、ざっと思い出せるだけでもこんなに、アゲダセバキリガナイホドです。

著者の自社像と、うちの自社像って相当違うはずなんですけれど、わりと取っている戦略に重なるところが多いのも非常に興味深かったです。
普通品(ハレとケのケ)をハイレベルに、つかみどころのないウリ、、などなど。もちろん真逆なところもあり。いろんな戦略があって、面白い。うちもしっかり強みを活かしてやっていきたいと思えました。

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