「文字渦」

「文字渦」 円城塔

“昔、
文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい”
始皇帝の陵墓づくりに始まり、道教、仏教、分子生物学、情報科学を縦横に、変化を続ける「文字」を主役として繰り広げられる連作集です。

文字同士を闘わせる言語遊戯に隠された謎、連続殺「字」事件の奇妙な結末、本文から脱出して短編間を渡り歩くルビの旅、特定条件で発光する文字の発見の歴史、文字の魔力を引き出すプリンタの秘密、転生を利用した時空間旅行をハッキングする文字、唐の国を転覆せしめる文字をめぐる攻防。。
短編同士のつながりは、手塚治虫の火の鳥を想起させます。

翻訳不可能と言われた意味が、特にルビの旅の章でよく分かりました。ラジオ同時中継朝まで生討論!みたいな感覚(なんじゃそりゃ)を、読書で体験できるとは思いもよりませんでした。
表現の可能性を自分に開いてくれた一冊です。
空海、チューリングマシン、闘蟋、ゲームデザイン、カンブリア爆発に進化論、美術論に仏教哲学、、、文字を媒介としていろんな自分の本棚と正面から接続された、みたいな変な感覚でした。

“国家天下を相手にするまじないは、公明正大、誰の目にもそうとわかるはずなのにそれとは見えず、堂々と流通するものなのではないか”

読んでみて!とは言い難いけれど、
こんなのあった、、!と知らせずにはいられぬ奇書です。

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