「農家はつらいよ」

「農家はつらいよ」#寺坂祐一
#寺坂農園

“家業を継いだらどん底をみた…!?借金を返済し、売上19倍・年商1億円を突破!と思ったら、除草剤を撒かれてメロン6600玉が全滅、周囲からの過干渉でうつに…苦闘の末に見えてきた、新しい景色。会社、家族、自身の回復の物語。“

いやここまでつらい内容とは思わなんだ(汗)せいぜい男はつらいよ的な笑って泣けるつらさと奮闘記と思って読み始めて、ある地点で息が止まる。

”農業経営に希望の光が見え始めた、、、、のに、
 なんだか世界が怖くて、幸せじゃないのである。”

肝が冷えた。
俺がこれを体験したらもう2度と笑顔にはなれないかも、、そんなエグい生々しすぎるエピソードの波状攻撃。。一つ目猿の島に生まれた二つ目猿が自分の片目を抉り出す、そんな寓話を思い出す。

この地獄王手の状態からいかに突破口を掴んでいくのか、公私絡み合った挽回と回復のファイト!がもちろん本書の最大の読みどころ。

無限大の可能性から掴み取った、という贅沢な選択はここには一つもない。だからこそ著者の経営上の決断において「何をやらないか」が要所で宣言されていることが光っている。
機械化農業で農協だより、
ではなく集約的施設園芸栽培で直接販売。
言いたいことをいう、
のではないお客様に寄り添うパンフレット。
売り上げの増加、
ではなく品質や効率や充実度を高める。

”この結論を選んだ理由“を説明できる人は多い。しかし”別の結論を選ばなかった(選べなかった)理由”を説明できる人はそうはいない。
だからこんなに説得力があるんじゃないかと感じた。赤裸々な選択肢を恥ずかしくとも公開できることを人は器量と呼び、一つの選択肢を磨いてかけることを勇気と呼ぶ。

頭の中で中島みゆきの時代が流れた、そんな一冊です。

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