「同志少女よ、敵を撃て」

「同志少女よ、敵を撃て」
逢坂冬馬

何年振りかの徹夜小説。
アガサクリスティ大賞満票受賞作です。

一月にして、今年の少なくとも私的ベスト3には入りそうなものに出会ってしまいました。
独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。
戦場の怒りや逡巡が手に取るように、著者の主題が立ち上って行きます。
ノンフィクションからの引用が実に狙い済まされたタイミングで挿入されていて、全体の構成が非常に起伏に富んでいてかつ緻密です。
普通小説で、一回でも肌が粟立つような感覚になれればいい作品って思うところですが、読み通して10回くらいそうなりました。うわー、ここでそれがそうなるのかー!っていう。

なにより登場人物が皆魅力的。よくある“過去回想がその人のクライマックス”ということはありません。過去の背景、現在の立ち位置、そして未来への決断が立体的に活きています。それでいてしっかりと絡み合っている、、、それぞれの“見せ場”は十人十色でアツく、多種多様に哀しくて“格好いい”。

変容してゆく意識の中で、
それぞれの御旗のもとに。
彼女たちは何を喪い、何を得たのか。
翔ぶが如く、丘の上で見た景色とは。

「なあ、なんでだと思う?」
「分かりません」

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