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指定難病を患った話13.【ついに退院の日】

免疫グロブリン治療を終えた後のお話。

2022年10月30日の点滴初日から6日目。
前日まであった頭痛や
悪寒は落ち着いたものの若干下痢気味。

それでも少しは調子がいいので
この日は昨日お休みしていた
リハビリに復帰しました。

基本的にリハビリは
午前と午後の2回にわけて行い、
午前は軽作業のリハビリ、
午後は足腰を使ったリハビリでした。

まだ握力があまり戻っていなかったので
午前中は特にこれまでと大きな変化を
感じられませんでしたが、
午後のリハビリでは大きく飛躍しました。

まず足がこれまでよりも
動きやすくなっていたので
病棟の中を歩いてみると歩行器が
いらなくなっていました。

むしろ歩行器があると邪魔になって
歩き辛く感じました。
これまで長い間、
膝を伸ばして骨で体を支えていたので
まだ歩き方はぎこちないのですが、
それでも何もいらずに
歩けることに感動しました。

次に階段。
家の玄関を出るとすぐ3段の階段があり
病院で外出するたびに命懸けでした。

実際上り下りしてみると、
杖は不要で数段であれば手すりも使わず、
歩くことができました。

また日常生活の中で最も低い位置からの
立ち上がりがお風呂の座椅子。

同程度の高さの台を用意していただき、
チャレンジしたところ、
手をつけばすんなり
立ち上がることができました。

お風呂の座椅子は35cm〜40cm程度。
飲食店の通常の椅子で45cm〜50cm。

入院当初は55cmの高さからであれば
なんとか立ち上がれる程度でしたが、
チャレンジしたところ20cmまでであれば、
手を使えば立ち上がれました。

これにはリハビリ担当も看護師も
私も驚きで外食に周りの目を気にせず
行けるかも、お風呂に自分で入れるかも
と日常生活を取り戻せるかもしれない
という期待が高まりました。

その翌日はハロウィンで
コロナになってはじめての
自粛規制のない週末とあって
渋谷が大盛り上がりしているニュースや
韓国の梨泰院で将棋倒しになってしまった
悲惨なニュースがやってる中、
渋谷に行き交う人のように
日常生活を取り戻したいと思いながらも
韓国のように健康であっても
いつどんな形で死を迎えるかわからない
という気持ちを胸に、
リハビリに励みました。

この日はグロブリンの副反応と
思われる頭痛や悪寒、下痢がおさまり
本領が発揮できる気がしていました。

案の定、
握力はまだ測定できなかったものの
両手で2キロの重りを持ち上げることが
できました。

なぜ2キロなのか…

家に帰ったら飼い犬が2頭待っています。
手足が動かなくなってからは
妻に全てを任せてしまっていました。

自分のことができるようになったら
次は少しでも妻の役に立ちたいと
思っていました。

2キロはちょうど2頭それぞれの重さで、
リハビリ担当の方とトイレの片付けを
想定した訓練も行いました。

飼い犬のお世話で1番厄介なのが、
地面に一度座ってトイレを片ずける
必要があることです。

そんな地面からの立ち上がりも
手を使えばなんなくクリアし、
これは家に帰るまで内緒にして
驚かそうと考えました。

この日は回診で担当医が部屋に。
担当医は某大学病院で勤務していた
経歴があり、
その先生が勤務している時期に
私がそこの産科で生まれたという
ご縁がありました。

そういった背景もあってか、
とても親近感が湧いていた
信頼できる先生。

「とても経過が順調です」
「薬が効かない人もいる中で奇跡的な回復」
「明日の退院も可能だと思います」
「少し自宅で経過をみましょう」

いよいよ明日退院できる!
家族にも会える、
ギトギトラーメンも食べられる、
タバコも吸える、
毎日をこれまで以上に大切に生きよう。

入院最後の日と考えると
仲良くなったおじさんや
お世話になった看護師、
なんか少し名残惜しい気持ちが
湧いてきました。

そしていよいよ退院の日。

妻が朝10時に迎えに来てくれるので
起床はゆっくりでよかったのですが、
旅行前の前日のように
深夜3時まで全く寝れず、
朝5時からずっとソワソワしながら
部屋の片付けをして迎えを待っていました。

この部屋に来た時は自分で部屋づくりも
できなかったのに退院する時は
自分で全て片付けることができ、
本当に良くなって良かったと
改めて実感しました。

症状を改善する治療法が
この世に3種類しかなく、
どれも効果がない人がいる中で、
一つ目の治療で良くなったのは
とてもありがたいことでした。

後は再発するまでの期間が
どれだけあるか、
人によっては1ヶ月、
人によっては数年単位。

それによって生活水準も極端に変わります。

10時になり、妻と再会。
看護師や先生に別れの挨拶をして
病院を後にしました。

来る時は車から病院まで杖をついて、
病院内は車椅子で移動していたのに、
自力で何も使わず車まで戻ることができ、
妻も私自身も驚いていました。

車のドアを開けて、
シートベルトを自分でつける。

そのまま昼食のパスタ屋さんに。
入院する前は口で吸うように
食べていたパスタもなんなくフォークで
食べることができ、
椅子からの立ち上がりも問題なし、
セルフサービスの水まで運べるように
なっていました。

これまで当たり前にやってきた
仕草や行動が当たり前じゃないことを実感し、
一つひとつの出来事に涙が出そうなほど
感動したことを覚えています。

そして自宅へ帰ると2匹の飼い犬が
出迎えてくれました。

早速リハビリで訓練したエサやり、
トイレ掃除を実践。

妻と2人で本当に良かったねと
これまでの出来事を思い返しながら
心の奥底から喜んだことは忘れません。

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