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2023年も楽しもう!!

 「あっち(ゲームセンターの方向を指差して)行く!あっち行くの!」

 ショッピングセンターにて、妻の洋服選びに付き添っていた際に、飽きてしまった2歳の娘が、隣にあったネオンに釣られて興奮し始めた。恐らくこれは、ゲームセンターから発せられる煌びやかな光と、ポップな音楽が、脳内でドーパミンを生成させたのが原因だと思われる。

 新しい情報、例えば新しい環境を渇望するドーハミン産生細胞が存在する、ということは、新しい情報を得ると脳は報酬をもらえるわけだ。人間は新しいもの、未知のものを探しにいきたいという衝動がしつかり組み込まれた状態で生まれてくる。 「新しい場所に行ってみたい」「新しい人に会ってみたい」 「新しいことを体験してみたい」という欲求だ。私たちの祖先が生きたのは、食料や資源が常に不足していた世界である。 この欲求が、新たな可能性を求めて移動するよう、人間を突き動かしてきたのだろう。

アンダッシュ・ハンセン 『スマホ脳』 2020, P.60

 まさに、新しい情報が届いた合図である着信音によって、ドーパミンが放出されて、ついついスマホを手にとってしまう私達と同じ脳のメカニズムで、娘はゲームセンターに魅かれてしまうのだろう。UFOキャッチャーやガシャポン、アンパンマンを模した遊具等々、バラエティに富んだ空間での楽しい記憶が彼女にはあり、光と音がトリガーとなってドーパミンが放出され、未知のオモチャに遭遇出来ると感じたのだろう。

 そうこうしている内に、駄々をこね始め、床に寝転がり、足をバタバタと地団駄を踏み始めた。私が行く素振りを見せないものだから、店内に響き渡るようなさらに大きな声で「行く!遊ぶの!早く!!パパ!」と最高潮までエキサイトしてしまった。

 ただ、私はどうしても連れて行きたくなかった。

 額の奥にある前頭葉は衝動に歯止めをかけ、報酬を先延ばしすることができるが、成熟するのが一番遅いこともわかっている。 25〜30歳になるまで完全には発達しないのだ。 つまり、ポテトチップスを全部食べちやダメだと言ってくれる脳の部分は、 10代の頃はまだ割と無ロなのである。

アンダッシュ・ハンセン 『スマホ脳』 2020, P.136

 ドーパミンシステムの活動は生きている間に減少していき、10年で約—割減ると言われている。

若い時ほどの興奮を感じることはなく、そこまでのリスクを冒すこともなくなる。ドーハミンがいちばん活発なのはティーンエイジャーの頃で、その量は報酬という形で激しく増えるし、失望するとやはり激しく減る。衝動を制御する能力が完全には成熟していない上に、激しい興奮を感じる時期と重なり、若者は危険を冒すことができる。もうひとつ言えるのは、若者のほうが依存症になるリスクが高いということだ。 

アンダッシュ・ハンセン 『スマホ脳』 2020, P.137

 つまり、未成年は興奮しやすい一方、その制御システムはまだ整っていない。そのため、依存症に陥りやすいのだという。私は常々、娘には精神的にも、経済的にも自立した人間となって欲しいと願っている。依存は、それとは正反対の状態である。

 もう手が付けられなくなり、周囲の視線がチクチクと刺さって痛いので、見失ってしまった妻を電話で呼び出した。すると「パパと喧嘩してたの」とママを説得しようとする始末。それでもゲームセンターへ行くのを諦めない姿勢を崩さないのを見た妻は、「アイス食べに行こっか?」と代替案を出し、意識を上手に逸らした。流石、娘の扱い方は私よりも数段上だなと、感心させられた。ただ、今度はアイスの糖分が気になり、砂糖依存症にならないが心配になる私。いやいや、大事なのはバランスだ。刺激も栄養素も適切な量を摂取するのが、健康な体を作るには必須だ。むしろ気にし過ぎるあまり、私が自身が、依存症にならない事に依存してしまってどうする。

 「アイス美味しいね❤️」

 ゲームセンターの事はどこへやら、満面の笑みでアイスを頬張る娘。思考を巡らす事は重要だが、考え過ぎは禁物だな。徳川家康が「及ばざるは過ぎたるよりまさりけり」と辞世の句を残したように、考えすぎは考えなさ過ぎより悪い事であるらしいし、それに、過去や未来に囚われていると現在に幸福を感じる事が出来ないというのも、何かの本で読んだ気がする。

 よし、今、この瞬間を楽しもう。

 PS.もし、宜しければ、諸先輩方からの子育てに関するアドバイスや、同じような境遇の方からのお悩み等、コメントにて書き込みを頂けますと非常に嬉しいです!

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