芥川龍之介論ー芥川という人についてー

芥川龍之介論ー芥川という人についてー

芥川龍之介は、その自裁によって、半ば神格化されていると言って良いだろう。芸実至上主義の難しい人、という感じも、現代まで残存している気がする。しかし、例えば藤澤清造の随筆には、芥川が質屋の門をくぐったことがある、と言う様な事が書かれていて、人間、芥川の見方が少し変わったのを憶えている。また、志賀直哉には弱音を吐いているし、決して大胆に自裁などできる感覚を、研究していた頃は、受けて居なかった。実際、小説ばかり研究していても、小説については詳しくなるだろうが、素の芥川を知ることは、研究からは容易ではない。

また、少し前に発売された、『芥川龍之介 写真集』というものがあり、未出の芥川の写真が結構な割合で載っているものだったが、写真を見ていると、こんな表情の芥川は見たことがないな、という風に思ったものだ。声も聞いた事がないし、これこそ、本当に、カリスマという感じの要素を多分に持っている芥川像が浮かんでくる。一体に、本当の芥川の姿はどんなものなのか。少なくとも自裁は、病気の末の事だったろうと思う。飛び降り自殺などは、出来るタイプではなかっただろうと思う。

さて、芥川龍之介論ー芥川という人についてー、として述べて来たが、芥川の作品を全集で何度も繰り返し読んだが、そのことからは、知れない、芥川という人についての、関心が、自己内で高まっている。いくつもの、芥川龍之介論を読んで来たが、それでも足りないくらいの、関心である。やはり、日本の何処かにまだ眠っている、芥川の資料などが、一般公開される日を待つしかないのだろうか。しかし、芥川の牙城を崩したいとは思わない。これからも、芥川龍之介賞が、日本において、一番の最高権威ある賞であって貰いたい。それ故、芥川という人について、もっと知ることによって、その城を、更に強力なものにしておきたい、そう思うばかりである。

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