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向かう先に何も無いことが分かっていたとしても進む必要があるのだろうか。
そんな馬鹿げた事を考えてしまうのは体調が悪いからなのか。

夢を見た。
仰向けで大の字になって地面に寝ている。
両手両足首を縄で縛られていて身動きが取れない。
顔に布を巻かれていて視界も遮られている。

足音が聞こえる。
誰かが太ももの辺りを手で押さえ、その後に金属音が聞こえてきた。
太い杭を打ちつけるような音。
左右の太ももが終わると腹、胸、腕、手のひらと移動していった。

不意に顔に巻かれた布を外される。
しばらくの間、眩しくて目を開けられない。
徐々に目が慣れてきた頃には近くに誰もいなかった。
いつの間にか縄も解かれている。

立ち上がって自分の身体を眺めてみる。
杭など何処にも無い。
杭を打たれたように感じた場所に穴が空いているだけだった。

痛みは無い。
目の前で手のひらを広げると向こうが見えた。

通りを歩いている人に
ここは何処かと尋ねてみたけれど、誰も皆答えようとしない。

何も聞こえていないかのように
何も見えてないかのように皆通り過ぎていった。

誰にも何処にも自分の声は届かないと知ったら
なぜだかとても愉快な気分になってきた。

全身穴だらけの醜い男が呆けた顔で笑っている。

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