見出し画像

10/27日記(前編) 意識五秒前仮説

平素よりお世話になっております。EPP御一行と申します。私を管理する脳髄は、いつかいなくなってしまう「わたし」の意識は、あいも変わらず沈黙です。死がやってこようがやって来なかろうが毎日、毎日毎日!起きていても寝るときも無理やり無に落とされる。
断続的な意識の中で、今の私は何人目?もうわかりません。おい、それが成長だというのなら、死んでしまった私はどこへ回帰するんだよ。不感症で過去を思い返すのも怖い。
おい、じゃあ今の私は、どうすればいいんだよ?あの脳裏で今も燃え盛るこの怒りが、声が、黒が、僕は、今から。どうすればいいんだよ?と、主観で私から見えるのは画面と両手だけです。勝手に書き込んでいます。


ここ数日は鬱が続いている。凪いでいるいつものプラマイ0と違って負の値の伝達-発火後の不感が波のように来て、脳が浮いて、揺れている。沈んでいく。物理的にそういう感覚がある。不応期で忘れても、ぐいぐいと肉体の重さに引き戻される。頭が重い。全く働かない。いつも茫然自失の空の境界(自分の部屋のこと)を一歩越えた時から演技しているので、こんなに空の下、外界で顔も取り繕えずぼんやりしたことは珍しい。食欲もない。水を飲むことすら拒否して今日は高いカネを払ってキャンセル料100%のカウンセリングにもゆけず。自分が助かる振る舞いすらできずこの時間だ。

それでも他人を社会の一員であることを裏切らないためなら他人と食事もできるし、責務も負おう。逃げられなくてそうするしかないのだから。時間旅行者たる私含む他者の笑顔のために最適化された振る舞いもしよう。ゆらゆら頭を揺らしながら風呂に入れる。入れないこともあるが。これは逃げなのかなあ。何もできない時は、何も感じない。

流石に二週間上司と話していないのは致命的だったので昨日今日は一つだけ、連絡することをしたこと以外はずっと横たわっていた。連絡したのも自分しかいない真っ暗な部屋ではできなかった。鬱から脱却したい、自己実現のためとかでなく、彼女や共同研究グループに申し訳ない、という一点しか見つけられないので、どうやら情けないとお前はいうだろう。

他者の目、自分の目は、暴力的だ。外界の無数の動機付け、それぞれの違う面にカットされ、よすがに括り付けられ、一点、極点がぴきり、と脳、心臓だったかな?それともあそこが「わたし」の意識か、覚えていないが、そこを犯した。もうボロ雑巾である。この状態がつづくと「やばい」のだが、もう自分の生きる意味になってしまっていた、他者の悲しみ、憎しみ、愛、支配、それらが混在した暴力!

研究者が夢だった過去の私という他者。未来から今の私を思い返す私という他者。彼女が成仏できない。殺された彼女が浮かばれない。

そんな外界のよすがすら今は無理やり思い出してもどうでもいい気がする。死にたいのかもわからない。ほんの一瞬の主観を呼び起こせないのだから毎秒死んでいる。もしくは、世界が五秒前に生まれている。もしくは、死に、無に落ちることにあこがれ、忘我に逃げている。


火曜は月曜早朝にメンタルがぶっ壊れた余韻が強すぎて上野を歩き回って徹夜してそのまま授業に出て、人から勧められたオスカーの「サロメ」と、「肉と我」という題名の本を借りて研究室にはいけなくて敗走。でも怖くて、夜が。夕方に数時間目を瞑って、また茫然自失のまま徹夜した。


昨日は発起して深夜1時に不忍池のブランコでハイボールを飲みながら、喧騒を聴きながら連絡のメールを打った。薬を飲むのを忘れていて、というか夜が怖くて、インターネットか情報量の麻酔か布団で宇宙がぐるぐるりに逃げて、今日受診のはずが一週間分くらい残ってしまっている。昨日はデエビゴ2錠で無理やり寝た。悪夢。
以前不忍池を徘徊するのをたまにやるということを書いた。
他人の中に我が肉体を投げ出してこそ、「私でない」で空間を押し退ける「私」の肉体の実在を(意識はともかく)確かめることができる。

今日は週末や来るべき予定を整理しに外に出て、囚われたダンゴムシのように角を曲がるか曲がらないかの量子的徘徊をした。肉体の感じが欲しくて、シーシャ屋さんに来てコーヒーやら酒やらCBDオイルやら、それと外に出た時初めて自覚する現実世界からの遅れによる冷や汗の焦燥感を煽った。
3人組の大学生の談笑の正面でメールを返信し、週末の予定を組み立て、日記を書いている。他者の中に自分を呼び起こしてこうやるべきを読む時以外には昨日今日は布団でずっと眠っている。起きていたくないとは思わないが、おそれる間も無く意識が勝手に落ちてしまう。1日が3時間である。

他者の目に倫理に使い捨てられてボロ雑巾になりたくない、それは今特に強くある。でもさびしい。というか夜の一人が怖い。なんのメリットも与えることができないのにあさましい。誰か、誰か助けてほしい。手を握って欲しい。一方自分一人では誰に連絡することすらもできない。



「ラヴクラフト全集」の中の短編「壁の中の鼠」を月曜の徹夜の時に歩くのも嫌で読んだ。最初は「私」の呪われた家系のルーツやら生い立ちやらで固有名詞がガンガン出てきて、よく言えば背景の導入を飾りながら丁寧に、批評家が言えば長すぎてダラダラと。最後までこういう感じかあ、宇宙的恐怖は、破滅はいつ現れるかなと玉ねぎの皮を剥く快感を思って身構えたが、中編はラヴクラフトっぽくないというか、事故物件の深夜ざわめく鼠の大群の音の恐怖、いわゆるホラーが描かれる。これも読了から振り返ればしっかりと物語の筋であって感心したのだが、ネタバレは語り得ぬことなので、沈黙。終盤に暴かれた地下室を潜っていくが、ここの文章は小気味よく、終盤一気に畳み掛けるラヴクラフトっぽい。一つの邸宅跡の地下室から、実に唐突にニャルラトホテプや大いなる呪文が出てきて笑ってしまった。

どうやら本作はラヴクラフトの初期作であったようだ。猫と夢というのも、大いなる母もそう言えば後作品にも関連が出てくる。最初から彼の頭の宇宙の中には、外宇宙から飛来した邪神が既に巣食って蠢いていたらしい。

「私」の悪夢と恐怖体験のリンクと、狂気這い寄る一人称描写はさすがである。

いあ!いあ!ラヴクラフトの宇宙から飛来して、私の頭の、肉体ですら、宇宙の中には、くるくると姿を変え嘲笑するトリックスターであるニャルラトホテップや笛吹に慰められ夢を見る白痴のアザトースが、破滅をもたらす存在が、ドロップキックしているのかもしれない。意識を脳内の海の底でどっしりととぐろを巻くクトゥルフに奪われている。
ニャルのようにAPP18になれば、本当に文句はないのだが。努力、未来、a beautiful star というし、まずは天井を、眠る肉塊を超えて、日に当たって活動する肉塊になるところからかな。
今お茶を飲んだら米津のPVみたいにガバガバこぼした。

後編では発売記念に超てんちゃんとあめちゃんと「私」について書こうと思う。(今書いている)

ぐるぐる回って、私を探しているの。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?