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今更ながら歌劇「46番目の密室」の感想書く

ようやく情緒が落ち着いたので(?)、本格ミステリー歌劇「46番目の密室」の感想書きます。あまりにも素晴らしすぎて、しばらく「ああヒムラヒデオ」が鳴き声になっていました。(いきなり何を言ってるんだ)
18日の昼公演は現地で観劇しまして、千秋楽を配信で拝見、そのあとアーカイブを2回くらい観ました。計4回観たことになるのですが、一言で感想を言うなら、あまりにも素晴らしい! ずっと胸のドキドキがおさまりませんでした。私は舞台やミュージカルに関する知識は全くなく、これから書く感想も全て原作勢としての感想なのですが、原作勢としてはとても満足度が高かったです。
*もう配信アーカイブの公開期間も終わってしまっているので、全力でネタバレしています。

18日の昼公演

 私の席は、正面最前エリア。まさかこんなにステージに近いとは思わず、そこから大興奮でした。前すぎて首が痛くなる……ということもなく、本当にいい席でした。
 「この席で良かった」と心から思ったのは、後述しますがラストのシーンですね。後ろの方の方がどれだけ見えていたのかは定かではないのですが、配信では見えなかったところがありまして。前の方ゆえにはっきり見えたのは本当に嬉しかったです。(とにかく大好きなシーンなので後で詳しく語ります)

 まず、私はミュージカルを生で見たのは初めてだったので、会場に響き渡る歌声がとても新鮮でした。去年初めて舞台を生で見まして、その時舞台ならではの声量やカメラワークのない臨場感にとてもハマったのですが、歌もすごいですね。皆さんとても上手いし、高音綺麗だし。映像ではなく、実際に現地で観る・聞く楽しさを味わうことができました。

各所で感じる原作リスペクト

 今回のミュージカル化で嬉しかったことの一つ。さまざまなところで原作リスペクトを感じ、『46番目の密室』という作品そのものをとても大切にされていると感じました。何より驚いたのが、原作の言葉がそのまま使われていた点です。直前に原作を読み直していたからこそ気付いたと思うのですが、出だしからいきなり原作そのままの言葉。登場人物のセリフもそのままで、脚本として多少のアレンジが加わっているといえど、有栖川先生の言葉を大切にされている感じが伝わってきて、原作ファンとしてとても嬉しかったです。

ああ火村英生

 おそらく舞台に関する感想の大部分がこれです。公演後友人にクソ長感想LINEを送りつけるほど興奮しました。(文字数数えたら5000字超えてました)
 公演は、アリスがワープロを打っているシーンから始まります。ちなみに私は初めてワープロを見ました。パソコンとは違って結構重そうですね。過去の火事のシーンが描かれ、そこからパーティーのシーンに移るために登場人物一人一人にスポットライトが当たります。一人だけ二階にいる火村先生には最後にライトが当たるのですが、その姿を見た私の感想が、

「ひ、火村先生がいる!!!!!!!!!!」

でした。正直会場じゃなかったら叫んでいたと思います。にやけるのを我慢するのが大変でしたし、実際かなりニヤニヤしている不審者だったと思います。
 ボサボサの髪にだらしなく垂らしたネクタイ、黒シャツ黒パンツにマジで目立つ白ジャケット……。すらっとした立ち姿も含めまさに火村英生でした。ちなみに髪型についてなんですが、ポスターなどの写真を撮ったときと変更があったそうです。ポスターなどでは真ん中分けだったのですが、本番では前髪ありのパーマっぽい感じになっていました。この変更によってより火村先生っぽさが加わったと思います。本当に素晴らしい変更……!

 パーティー中の火村先生も、まさしく火村英生そのものでした。和気あいあいと進むパーティー中、火村先生はほとんどその輪に加わることなく端っこの方で退屈そうにしていました。その孤独感と興味のなさが原作通りのクールな火村先生って感じでした。パーティーの参加者はみんなそれぞれ顔見知りでしたから、他の人と面識のない火村先生は当然よそよそしさがありますよね。原作ではみんなが仲良く談笑している中、火村先生がどんな様子だったのかと言う描写はなかったと思うのですが、実際にはこんな感じだったんだろうなというのを観ることができて微笑ましさを感じました。カメラワークのない舞台だからこそですね。
 パーティー中はだいたい蚊帳の外にいた火村先生ですが、親友であるアリスと話している時はリラックスした表情で……二人の仲の良さをまじまじと見せつけられましたよ。

 パーティーは終わり、いよいよ目玉である事件が起こるのですが、そこでも火村ポイントが! まず事件の伏線として白のイタズラ事件が起こります。そのシーンはフーコ先生の可愛らしい演技や時限爆弾騒動時の杉井さんの動きなど大好きポイントが多いのですが、火村先生に限っていうなら、時限爆弾だ!ってみんなが慌てるなか火村先生がそれをひったくって冷静に対処してくれるところが「火村英生〜〜〜!!!!」って感じでした。(情緒を取り戻したとはいえまだ語彙は混乱しています)。その後の「爆弾解除の特技を披露するとは思わなかったぜ」的なセリフも、実際に聞くといいですね。それから18日の公演では、アリスが原作のように時限爆弾が入ったぬいぐるみをお手玉してました。よき。
 事件の時も異常事態に遭遇しても冷静な火村先生。慌てるアリスや他の人との対比が綺麗でしたね。黒手袋を嵌めるシーンは実際見るととても素晴らしいことしてますねあれ。

 そこからは警察に協力して捜査を始めるのですが、『46番目の密室』でめちゃくちゃ好きなシーン、アリスが屋根から落ちかけるところもしっかり描かれてました。アリスを本気で心配する火村先生。このシーンを生で見ることができて本当に幸せです。

煙草と書いてキャメルと読む

 原作では火村先生はかなりのヘビースモーカーなのですが、舞台でもしっかり吸ってましたよキャメル! 最初に吸ったのはアリスと推理の照らし合わせをするシーンなのですが、アリスが推理を披露している最中に煙草に火をつけていました。(確かちょうどアリスによるエア光司君の歌シーン)。アリスが考えてしまった愚劣な推理を聞きたくないというような、暗に否定するような印象を受けました。アリスに背を向けていたことも、そんな心情の表現の一つだったのですかね。

ラストシーンにおける私の解釈

 今回の舞台において、私が一番好きなシーンです。
 石町から犯行の全てを打ち明けられ、彼に後光が差すシーン。薄い幕が降りてステージを二分しました。幕の外側にいるアリスと彩子さん。そして幕の内側にいる石町と火村先生。しばらく彩子さんの歌が響いていたのですが、この時すでに奥にいる石町の姿は見えず、幕の内側にはアリスが隣に行くまで、火村先生がただ一人タバコを吸いながら佇んでいました。
 このシーン、火村先生が「向こう側」いる(そしてそれをアリスが連れ戻す、阻止する)というふうに解釈している方が多いようです。もちろんそう解釈するのが自然ですし綺麗なんですが、私は少し違う解釈をしました。

それが、火村英生の孤独です。

 原作で、火村先生は「犯罪だけが友」と言ったことがありました。(確かあったはずですどの作品かは覚えてないんですけど)。助手であり14年来の親友であるアリスや、下宿の大家である婆ちゃん、愛猫や警察関係者など、たとえ天涯孤独であっても周りには火村先生を理解しそばにいてくれる人々がいるにも関わらず、火村先生からはどこか「孤独感」を感じる。自分が抱える闇をアリスに対しても話そうとしない。どこかで壁を作っている。それが、私が原作を読んで形成した火村英生像でした。

 ステージは暗く、奥にいる石町は闇の中。アリスは彩子さんと共に幕の外側に立っていて、降りしきる雪の中、火村先生だけが幕の内側にいる状態でした。アリスがそばに行こうとしても、そこには幕がある。決してそばには行けないのです。そんな状況の中、火村先生は煙草の煙を吐きながらもう見えなくなった石町の姿を見つめていました。その背中にどうしても、私は火村英生の「孤独」を感じてしまったのです。そう考えると、パーティーでの蚊帳の外はある種の伏線だったのかもしれません。

関係者の皆様に最大限の賞賛・感謝を!

 さて、ここまで長々と感想(特に火村先生についてですが)を書いてきましたが、ここまで感動できたのは全て俳優さんや脚本、演出などこの舞台に携わられた皆様のおかげです。特に私がここまで火村先生に狂えたのも、俳優さんの役作りや演技があってこそ。舞台やミュージカルについて全く知識がなかった私ですが、臨場感やそれぞれの公演の些細な違いなど、「舞台は生物」というのを実感することができました。
 改めて、とても素晴らしい舞台でした。シリーズ化したら絶対また見に行きたいです。(本当にシリーズ化期待してます)

最後に、ここまで読んでくださった読者の皆様にも最大限の感謝を込めて。ありがとうございました!

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