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映画の心

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Amazon Prime Videoで見れる文芸映画を中心に映画が訴えていることを映画の評論ではなく、作品論として独自の視点で捉え、思ったこと、感じたことを綴っています。取り上げ…
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#女性

『晩菊』(原作:林芙美子 1954年6月22日公開)を観て

この映画は、女性にとってはある意味痛快なお話だと思う。確かに女性に人気があった作家ということは感じれた。男をコケにして、ドライな女心を描いていて、娯楽小説という表現は失礼かも知れないが、当時、気軽に読めて、楽しめるものだったに違いないと思った。 派手な起承転結がないのがこの映画の特徴でもあり、どこから観始めて、何処でやめても良いという日常をあらわしている。登場人物は、おきん(元芸者で今は不動産と金貸しで生計を立てている)、おとみとたまえ(おきんと一緒にやっていた元芸者で、お

『絶唱』(原作:大江賢次 主演:舟木一夫 和泉雅子 1966年9月17日公開)個人の感想です

『絶唱』、観終わって、そこから絶唱について調べ始めた。いつものことであるが、私は、予備知識なしで映画を観ることにしている。このタイトルがなんとも絶妙というか、本来の意味以外に漢字から受け取る印象も含めて、この物語を語っている。絶唱とは、1 非常にすぐれた詩や歌、2 感情をこめ、夢中になって歌うこと、と書かれている、確かにこの映画は、この二つの意味を持つ内容となっている。一方でこの意味を知らないと、漢字が持つイメージとして『唱が絶える』と言う風にも解釈出来る。そういう観点では、

『あいつと私』(原作:石坂洋次郎 主演:石原裕次郎 1961年9月10日公開)個人の感想です

吉永小百合が写真に写っていたので、観てみるか、という程度で観始めた映画であったが、コミカルな中にもこの時代の変化をてんこ盛りにしたとても面白い映画だった。リリカルとかニヒリスティックと評されていたけど、そんな感じではなく、十分に世相を反映していて、とても面白かった。ちなみに吉永小百合は、主演女優芦川いずみ(藤竜也の妻)の妹役にすぎなかった。ドテッ! 時代は、1960年、戦後15年、安保闘争の時代、まさに学生運動の始まりのころである。登場人物の年代も恐らく明治、昭和一桁、戦中

『乳母車』(原作:石坂洋次郎 主演:石原裕次郎 芦川いづみ 1956年11月14日公開)個人の感想です

石坂洋次郎作品『陽の当たる坂道』に続いて3本目の『乳母車』を観てみた。私は、映画を観るとき、予め調べはしない、あらすじが分かったり、専門家の評論でバイアスをさけるためだ。今回も、どんなメッセージを届けようとしているのか、そして自分はどのように解釈して結論付けるのか楽しむことにした。 文学とはは、その当時の文学者が前衛的な感性を持って社会にメッセージを投げ込み、そのメッセージが庶民の心に刺さり、そして社会に影響を与えていくということだろうと理解している(様々な考え方はあると思