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観光業的うまい話のウラ側

訪日客に占める中国の存在感が低下している。新型コロナウイルス禍前は月100万人を超えていたが、8月に訪日した中国人客は36万人と低調だった。国慶節の大型連休では増加が見込まれるが、コロナ禍前の水準に戻るかは不透明だ。

産経新聞

右傾メディアの産経新聞にして、中国人観光客への依存をヨシとするかの書き振り。威勢が良いのは政治欄だけで、それ以外は他紙と大差ないとの指摘がありますが、独裁国家の観光客を当て込むのは危険すぎます。もっとも、JTBの方が中国大陸からの観光客には膨大な伸びしろがあると主張する現場に居合わせたことがありますが、独裁(権威主義)国家のリスクを甘く見過ぎです。どう見ても分が悪いウクライナ事変をクレムリンが止められない事態を見ればよく分かることです。最高権力者の顔色(機嫌)こそが全てなので、ロシア軍内部で理知的と評された幹部が、対ウクライナ作戦の打ち切りを提言したらあっさり職を追われたという一事だけでも、大概のところは了解できるでしょう。韓国の場合、中共政府の不興を買ってロッテ系の免税店があっさり国外退去になったことがありました。

海外渡航の自由がない国では、海外旅行客の動きは政権の判断でどうにでもなります。つまり、政情次第でいつキャンセルされても不思議ではありません。また、再開の見通しを日本外務省に聞いても無駄です。中国で拘留された邦人の開放も容易に実現できないのに、中共政府が出した渡航制限の指示を撤回させる能力はないと見た方が確かです。

現行の政治体制が変わらない限り、カントリーリスクは解消されません。国際親善が尊いとしても、独裁(権威主義)国家の民を太客とする戦略は危険極まりないのです。特に、日本の同盟国であるアメリカ合衆国は中華人民共和国と対立の最中にあります。反米感情を根拠に同盟国である日本への渡航制限を打ち出しても不思議な話ではないでしょう。

つまり、いつでも「不透明」な訳なので、産経新聞の総括は見立てとして深みはありません。「観光業は短期的な視野で行き当たりばったり、統計データは眺めても、顧客心理の分析理論や国際市場のしっかりした調査技法はない。産業として成熟していない。」とは、旅行業界で長年仕事をされてきた方から10年くらい前に聞かされた話です。

その後、業界は発展したのか?
今でも、中国人観光客の増加と爆買い復活に未練を抱いている様子からは、あまり変化はなさそうです。国民の自由を尊重しない国は、いつでも海外旅行客を制限できるので、意図的に特定国に観光客を大量に送り込み、依存度を高めた段階で、送客を減らされたくなければ言うことを聞け、と交渉材料に使います。

価値観の違う国家との関係は慎重に考えなければならない・・・中国共産党の教えてくれたことを今後に生かすことが日本観光の未来のためにとても大事であると思う次第です。


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