地方の夜明けは・・・未明ぜよ?
Web上で盛り上がりを見せている土佐市の地域おこし協力隊追い出し騒動。
地域おこし協力隊で土佐にやって来た方が、桂浜の近くにある市の観光系施設「南風(まぜ)」にカフェを出店。経営が安定しつつある頃から、その施設の指定管理者であるNPOの理事長が、素人感覚全開で経営方針に口を出す、女性スタッフを触るなど、ハラスメント行為を繰り返すので、市役所に相談したものの鼻であしらわれたという話。その後、NPO理事長名で「退去せよ」の書面が持ち込まれて弁護士を巻き込む騒動になっていると伝わります。現時点で事実関係に不祥な点は多々ありますが、地域振興の仕事に関わってきた経験から感じたことは、「土佐市役所さん仕事してた?」です。
NPOの理事長が痴漢級のセクハラ爺さんなのか、市役所の職員がSNSを馬鹿にしたのかは、脇に置いて、怒りの訴えをしているカフェ店主が地域おこし協力隊として移り住んできた方であることから、私の脳裏には「土佐市は何してるの?」という疑問が湧き上がりました。
つまり、市役所が総務省に申請して、国税の補助が付く協力隊員を招聘している以上、このカフェ店主の活動は「市の施策」の一環です。市長にとって政治的に大切なNPO理事長様のご機嫌を損ねることがどうしても許されないならば、桂浜観光の魅力を支えているカフェ機能をどこかに移設する必要があります。もしも移設をしないならば、市政上このカフェに所期の意義は無くなったと宣言して、短期で失敗した原因究明と責任関係を明確にし、土佐市議会と高知県、総務省に説明する義務があります。活動経費に公金を投じている事業なのですから説明責任があるのは当然です。
土佐市は、桂浜観光に訪れた人々の満足度を高めることが地域おこしに必要との問題意識を持ったから、総務省の制度を利用して人材を招きカフェ出店を推進した訳で、市の指定管理者とのトラブルは単なる民間人同士の揉め事ではありません。市政遂行上の支障事案なのです。市の担当課には、カフェ店主がSNSで怒りを拡散するような(状況が悪化したら皆が損をする)事態を回避する義務があります。しかし伝わる話では、やらなかった・出来なかった以前に、そうした認識さえもなかったように感じられます。
報道されて拡散されている市の反論のキレが悪い。「事実とは異なる点もあり・・・」そんな名誉棄損行為の真偽は法廷闘争でやってください。こういう流れで騒がれたら、世間の目は行政と地元有力者に批判的になります。名勝・桂浜のある新居地区の観光集客機能を維持することが公益なのですから、事態の早期収拾に向けて何をするのか?まず、争点のカフェの営業継続は保証するのか、公益を守る姿勢をしっかり示すべき場面です。
さらに、「誹謗・中傷も多くあり業務に支障が・・・」それは気の毒と一応申し上げますが、全部が誹謗・中傷でないならば、傾聴すべき意見もあるということになります。そうした良い指摘は、例示して事態解決に活かしていく程度のことは言えないのでしょうか。被害者ぶって逃げてしまおうという嫌な感じさえします。公金を入れたカフェなのですから、現在の市政上の位置づけを明言して、ハラスメント疑惑は法律問題として切り分けて整理するべきでしょう。
この一連の動きを見て邪推してしまうのは、地域おこし協力隊の活用について、市長自身はさして真剣に考えておらず、上手くいけば手柄にして、ダメであっても政府の制度を利用して努力していると保身的なアピールができればそれでよし、といった腹だったのではないか?ということです。市役所に「カフェ事業絶対成功」との気迫が漲っていれば、有力者とて安易なちょっかいは躊躇ったことでしょうし、カフェ閉店の事態に至れば、公金が無駄になり、地元の従業員が失業するということを心配して「営業継続の死守」を毅然と訴えそうですが、逃げ腰コメントを見る限り、そもそもの覚悟はいかばかりであったのか?と感じざるを得ません。
地域振興の成功事例と言われる現場に立ち会わせて戴いた経験からも、行政側がこのようなグニャリとした態度では、億万に一つ神風が吹いてもその恩恵を地元に留めることは難しいでしょう。土佐市の夜明けは遠そうです。
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