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ハラハラドキドキなツーリズム

沈没したタイタニック号を見に行くというアドベンチャーな企画で悲惨な事故が発生してしまったとの報道が駆け巡っております。落命されたとあればご冥福を祈るのみです。
刺激が欲しいというのは人間の本性に属するもので、今回は深海観光の最中に起きた悲劇でしたが、宇宙旅行でも、冬山登山でも、生命を実感する瞬間を体験したいとか、死と隣り合わせの刺激的な時間を求めるといった、一般的な生活をしている人々から見れば無茶で危険な試みでも、当事者にとっては心ときめく挑戦なのでしょう。

高所恐怖症の身としては、5階のベランダから身を乗り出すだけでもドキドキできるので、自分は何て安上がりなのだろうか、と思ってしまいます。

ドキドキハラハラが大好きな人は大勢いるので、ホラー映画やバイオレンス映画、お化け屋敷(スリラーハウス)、本格戦闘ゲーム(サバイバルゲームやシューティングゲーム)が産業となっています。廃墟マニアや心霊スポット巡りファンも一定数いるようで専門雑誌の類がビジネスになっています。

そうなってくると、観光のジャンルとして「ハラハラドキドキ」は見逃せない要素になってきます。しかし、生命身体に危険のあるアクティビティは、スポーツとして確立した領域が許されているくらいで、夜のワインディングロードでスピード無制限の競争をするといった単純に危険な行動は社会的に非難されてしまいます。シーズンオフの有料道路でこういう大会ができれば需要はありそうですが、死者・重傷者当たり前といった企画では行政が了解しません。崩落しそうな古いトンネルでのホラー映画上映会というのも、恐さマックスで心底からキャアキャア騒いでいただけそうですが、これも不許可でしょう。
VRであれば、「心臓の弱い方はご遠慮ください」と断り書きを入れて免責されそうなので、どぎついコンテンツが楽しめますが、程度の差はあれ冒険感覚を味わおうとする向きには、視覚だけでは寂しいことでしょう。

怪談の重要な舞台としては「廃校」があります。
閉鎖したての安全性が担保できる学校施設で本格的なホラーハウスを作る。
コンセプトは、スリラー文化祭の開催です。
体育館では、怪談名人による講座を開催。スタッフは劇団員のバイトで全員特殊メイク、好き勝手に寸劇をしてもらいます。トイレでは花子さんのゲリラ的コンサート、花子さん伝説にちなんだオリジナル曲を歌ってもらいます。また、閻魔チャレンジとかあって、まず千円を差し出し、心理学者が考えた噓を言いたくなる質問に対してウソ発見器が反応しなければ天国行きでリラクゼーションサロンのサービス券贈呈、反応したら閻魔の表示が憤怒の形相となり無慈悲に千円没収+いつの間にか膨らんでいた風船が頭の後ろで破裂または電撃。窓がところどころプロジェクターになっていてよく言われる白い影が通り過ぎたり青い顔が一瞬のぞく、トリックアートの技法で不気味な穴がそこらじゅうにあって覗かれている感じがする、校庭のビオトープでは臨死体験で見たとされる三途の川を忠実再現・・・等々

この系統の有名人に総合プロデュースしてもらって注目度を高め、出し物を季節ごとに入れ替えればリピーターも確保できるのではないでしょうか。
以前、某市役所では、寄付された大量のひな人形を廃校において通年公開するとか言っていました。薄暗い校舎に居並ぶひな人形は想像するだけで結構ホラーチックです。ライティングを凝らせば、結構な恐怖体験が味わえるのではないでしょうか。どうも実現しなかったようで残念です。


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