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キム・ベルナールさん   ヴェルビエ音楽祭にてゴーティエ・カピュソン氏とDUOデビュー!

ヴェルビエ音楽祭2022
Gautier Capuçon & Kim Bernard

〜始めに〜
スターチェリストであるゴーティエ・カピュソン氏がヴェルビエ音楽祭に若きピアニストのキム・ベルナールさんを連れてきてデュオを組みデビューさせた。

ENCORE前に聴衆へキムさんの事を紹介するスピーチをしている時、ゴーティエが本当に嬉しそうに話しており、その時の最も愛情深い表情を見ていると、配信で画面越しに見ている私の目もついつい細まりこちらの表情も崩れている事に気づく。
彼はとても優美で品があり、優しい青年で財団の人達や古くからのゴーティエのファンの人達等、皆にとても愛されていることが良くわかる。

ゴーティエがキムを愛おしく紹介する様子を見るのは今回が初めてではないのですが、毎回こちらの目尻もさがりっぱなし。


❖〜ここからはふり返り〜❖
マエストロ・ゴーティエは7/4から3週間に渡りフランス国内15箇所の美しい観光地、古城等で先に厳選された若い音楽家達と共に無料の演奏会を行うツアーの中心にいて(途中7/14、パリでのフランス革命記念日、バスティーユ記念日の音楽祭でもエッフェル塔の前で演奏)
音楽祭も残すところ4日間という大詰めの最終日程でキムと共にヴェルビエ入りした。

仲間内では最後に到着した大物スターとの写真を仲の良いArtistが次々とSNSにアップ。
リハーサルやインタビューもアップされて、待ってたこちらもようやくヴェルビエ音楽祭本番という気分になりました。

財団の人やいつも彼らの近くにいる人達、ゴーティエのMasterClassの生徒さん等もヴェルビエに到着した様子がSNSから流れてきて、場が整った様子がこちら日本から見ていてもわかった。

まずは7/29日に腕を痛めたエフゲニー・キーシンの変わりにユジャ、カヴァコス、ゴーティエによるSUPERTRIOが迫力満点のShostakovichとTchaikovskyのピアノトリオを演奏。
普段全く別々に違う活動をしている三人が、急遽この難解なトリオを演奏することになっても、まるで三人が日々一緒にいるかのような一体感のある演奏が配信でも伝わり、今や他を寄せ付けない高みに登った彼らには驚くばかりであった。
また一つ新たな語り草、これ以上無いような凄いShostakovichとTchaikovskyを聴いてしまったな、と脳内にインプット👍

さて7/30、午前11時からヴェルビエ教会にてゴーティエとキムはBrahmsの1番のCello SonataとGriegのCello Sonataを演奏しました。
正しく大一番であります。
曲の解釈等は二人で相談してるのでしょうけど、BrahmsのチェロSonataの冒頭部分、低いE音から始まるその1小節目のメロディと彼の楽器1701年製マッテオ・ゴフリラーの渋い美音、ユジャ・ワンとのCDでも何度も聴いたことのあるその冒頭部分だが、今回も同じように深く語りかけるように始まった。

一楽章

4分の4拍子の2拍目と4拍目に相づちを打つようにピアノが鳴る、しばらく同じスタイルが続くがキムのピアノにゴーティエが気分良く乗って安心して奏でており、上々のスタート👍
キムはというと、スターチェリストを涼し気な表情でリード、鍵盤の上に指を滑らせます。
エルベ川を彷彿させるような緩い流れに品のある二人の息のピッタリと合った一楽章に聞き惚れているうちにすぐにメヌエットである二楽章になりました。

二楽章

二楽章は可愛らしい曲調です。
軽やかな三拍子のリズムにピアノがリードする場面が散りばめられており、二人共程よいテンポに乗って弾いていたし年齢差とか経験値の差を全く感じる事がない、長年DUOを組んできた演奏家の音楽という感じが見て取れました。とにかくキムのピアノの軽やかさ優美さは持って生まれたものなのか、天からの授かりものとは彼の事を言うのでしょうか。

三楽章

三楽章は難易度が高いです。主題はバッハのフーガの技法から、コントラプンクトゥスⅩⅢを引用しており、テンポも速いですし腕の見せ所が沢山あります。そういう難解な解釈もきちんと仕上げてきており、ペダルの使い方や音量の調整も完璧なので若いのに本当に素晴らしいと思いました。
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後半休憩は取らず、すぐにGriegのCello Sonataの演奏へ。
Griegの3歳年上の兄ヨーンのために作曲したといわれていますが、極めて美しいですがとても難しいです。

第1楽章から疾走感溢れる流れでピアノコンチェルトを彷彿させる終わり方、さらにペール・ギュントの内容も取り入れられてるように私には感じる物凄くカッコいいのが、この曲の特徴です。
1楽章だけでもとてもかっこいいのでつい拍手したくなるような終わり方ですが、そこはヴェルビエのお客様は流石の聴衆ばかり。静かに2楽章のピアノの始まりを聴いてくれています。

第2楽章は『十字軍の兵士シグール』作品22の中の「忠誠行進曲」から流用しています。
聴いていただければおわかりになると思いますが、冒頭のピアノが奏でる主題の美しさと言ったら、形容し難いほどです。
三楽章はチェロの独奏からはじまり、テンポが速く独特のメロディー、また協奏曲か交響曲を思わせる終盤に会場全体が大変惹き込まれた様子であった。

この日の演奏は後に語り継がれるであろう美しさの極み、そしてパーフェクトな演奏であったと思います。

ENCOREはサン・サーンスの白鳥とPiazzollaのOblivion。
ほぼ自分の手元を見ず、指先をコントロールしながら弾くキムとゴーティエの甘い音色にうっとり。

素敵な素敵なストーリー、この先何度もあるでしょう数々の演奏会、2022年のヴェルビエ音楽祭もそのひとつとして、私を含む二人を取り巻く関係者達の素晴らしい想い出になりました。

当日の演奏会の様子はこちらからどうぞ。リメイク済のため残念ながらスピーチは入っておりません。
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