台湾加油:台北歴訪

2023.05.04-2023.05.07に台湾を訪問しました。
その間の3つの投稿を以下にまとめて記述します。

【台湾加油①】

日本にとりまして台湾は長年の友人として友好国。
その中で、台湾をめぐります日本から見た情勢は緊迫化、地政学的重要性が日に日に高まっております。
1つ目は台湾有事です。台湾有事は日本有事。
米国では、台湾有事は起こるか起こらないかではなく、”いつ起こるか”という認識です。日本でもこの認識がようやく浸透してきたと思います。

3つほど”いつ”の具体例です。
〈①2027年説〉2021年3月、フィリップ・デビッドソン米インド太平洋軍司令官(当時)が議会証言で示しました。
〈②2023年説〉2022年10月、マイク・ギルディ海軍作戦部長はシンクタンクでの講演で、「私の心の中では2022年も2023年も排除できない」と述べました。
〈③2025年説〉2023年2月1日付で、マイク・ミニハン米空軍航空機動軍司令官がスタッフ宛のメモで出しました。2024年に実施される米国大統領選挙と台湾総統選挙を根拠にしています。(日本での自民党総裁選挙も含めまして、来年2024年はとても重要な年です)
要するに、2027年までにいつ起きてもおかしくないということだと思います。

台湾有事シュミレーションというものがあります。以下にアメリカの有名シンクタンクのシュミレーションの結果を記します。(※シュミレーションの過程は長くなるので省略)
〈米国CSIS−2023年1月予測版〉
米軍が本格参戦し、日本も在日米軍基地の使用を認め、自衛隊も集団的自衛権で台湾防衛に参加する場合の平均
○日本
航空自衛隊機112機、艦船26隻喪失
○台湾
軍用機534機、艦船38隻喪失、死傷者3500人
○米国
軍用機最大372機、艦船22隻喪失、死傷者・行方不明者1万人
○中国
軍用機168機、艦船138隻喪失、死傷者1万4500人
日本の笹川平和財団が2023年1月下旬に出した予測被害も同じような想定となっております。

勝ち負けに関わらず、一度台湾有事が勃発すれば、こうした甚大な被害が発生することは間違いないため、台湾有事を絶対に起こさせない(現状維持を目指し、他国の台湾への意図を抑止する)、そのための我が国の防衛力抜本強化による抑止力の向上と強固で機能する日米同盟が引き続き必要だということです。

また、台湾有事が行われなくとも、他国が台湾の南に位置するバシー海峡を封鎖することが仮にあれば、我が国の物流の生命線であるシーレーンが途絶し、民間企業を巻き込んで深刻な問題が発生します。
こうした懸念への外交的対応策が安倍元首相が提唱された”自由で開かれたインド太平洋”構想です。

<1日目>
○桃源国際空港から台北駅

○花博会場
台湾では2010年から2011年に花博(台北国際花の博覧会)が開催されました。日本でも2027年に横浜市でAランクの花博が開催予定です!楽しみです。台湾の過去の取り組みも参考になると思います。

○台北101
高さは509mで台湾最高の高さで、101建てであることに由来します。高層の展望台以外にはショッピングモールやオフィスがあります。東芝(株)の世界最速エレベーターがございます。偶々夜景の時間になりましたが、台北市内が一望できます。

○饒河街観光夜市
日本関連のお店が多くあり、日本語を話す店員さんも多かったです。日本のアニメの商品もありました。

以上です。


【台湾加油②】

2回目は台湾の政治情勢についてです。
日本にとっても非常に重要な台湾総統選の行方。
2024年の台湾総統選は2+1の争いになると私は思います。

○頼清徳氏
蔡英文現総統が辞任し、2023年に民進党党首に。2020年から副総統を務める台独派の1人。2010年から2017年まで台南市長を務めるなど行政経験が豊富。

○候友誼氏
国民党有力者の総統候補。2018年から新台市長を務める。警察庁長官、警察大学校学長を歴任。中国とは対話するべきと主張。

○何文哲氏
2014年から2022年まで台北市長を務める。台独派で、中国と有効、親米、日本寄りを主張。

争点は経済政策と外交政策となると思います。外交政策は言うまでもなく両岸関係です。経済政策では、新型コロナで台湾経済は打撃を被っており、台湾経済が今後上向いていくかが勝敗の鍵となると思います。(そういう意味では台湾への”日本人”観光客が増えれば、現政権=民進党有利になる可能性もあります。)

2023年2月の台湾民意基金会による世論調査では、
頼清徳氏:27.7%、候友誼氏:32.4%、何文哲氏:19.5%
と国民党の候友誼氏がリードしています。

また、民進党26.9%に対し国民党27.1%と政党支持率も僅かに国民党が上回っています。

しかし、台湾の将来像に関する調査では、「台湾独立」44.0%、「現状維持」24.0%、「中国との統一」12.3%、「不明」19.7%と、台湾独立と現状維持の世論が3分の2以上を占めています。
選挙戦では他国によるサイバー攻撃などの選挙介入が予想され、米国が警戒感を強めています。
今後の動きに注目です。

<2日目>
○中華民国総統府
下関条約翌年の1895年に日本主導で設置しました。※初代総督は樺山資紀。内部を見学しました。厳重なセキュリティ態勢で、帰るまでパスポートを預ける仕組みとなっております。(途中で帰らせない…)
日本語の音声ガイドがあり、歴代総統にまつわる説明や台湾総統府の歴史が学べました。台湾の子どもも多く訪れているのが印象的でした。

○中正紀念堂
「中正」とは中華民国初代総統であった「蒋介石」の本名(=蒋中正)を指し、1975年4月5日に亡くなった蒋介石に対する哀悼の意を込めて建てられたそうです。
広大な土地は、清朝、日本統治時代ともに軍が使用していた軍用地跡地で、敷地総面積は25万m²。
蒋介石の座像は帰ることの許されなかった故郷・中国を向いて座っています。自由の道を通って、内部見学。
蒋介石に関する歴史や油絵美術が見れました。

○国立故宮博物院
国立歴史博物館が残念ながら改修中で、こちらに伺いました。
フランスのルーブル、アメリカのメトロポリタン、ロシアのエルミタージュと並んで世界四大博物館の1つにも数えられ、70万点の収蔵品があります。中国の歴代のものが展示されており、中国芸術文化の集大成と言ってもいいと思います。
日本語の音声ガイドを借りてじっくり回りました。

○行天宮
三国志で有名な関羽が奉られている行天宮に伺いました。
関羽は現在商業の神として奉られています。
台湾のお参り方式が難しすぎました…

以上です。


【台湾加油③】

台湾旅行編第3回最終回は経済安全保障です。
3回目ということと、誤解があってはいけませんので少し本気を出して記述します。
経済安全保障とは何か。経済的活動と安全保障の取り組みを融合したものというような解説を見かけますが、私は“経済的”手段によって自国の安全保障を実現することだと考えております。
経済的に“”を付けたのは、経済安保分野では経済の営みはあくまでも自国の安全保障(企業や産業、社会)を守り抜くための大きな手段の一つと見た方が良いのではないかということです。
そうすると、経済的手段によって政治的目的を達成したり、他国に影響力を行使したりすることと定義される“エコノミック・ステイトクラフト(ES)”として我が国の経済安全保障政策、経済安全保障経営を考えていくべきです。

米中欧各国はこのESに国の存亡をかけて、先手先手で政策を打ち出しております。(関連する法律、ルール形成がとても多いので内容は省略)
こうした動きを受けまして、日本でも昨年2022年5月に経済安全保障推進法が成立しました。

しかし、具体的な政策の打ち出しは今後の政令や省令次第です。そうなると、日本の経済安全保障政策が米中欧各国の政策や取り組みの後追い、後続対応になりやすく、日本の産業界が今後ジリ貧に陥ってしまう可能性が高いと私は思います。

そこで大切なことは、米中欧がどのようなESを打ち出しているのか、そもそも我が国の経済/産業の成長のために解決すべき課題(ES以外から生じる問題も含む)は何かという理解を前提に、

ES/経済安全保障すなわち”安全保障”の観点から民間企業を巻き込んで日本の経済/産業”構造”を“デザイン”(ここでは改革ではなく、デザイン)し直すことではないでしょうか。

その際には、政府が基本方針としている「戦略的自律性(※国民生活や社会に必要不可欠な基盤を他国に依存することなく強靭化すること)」と「戦略的不可欠性(※国際社会の中で日本の存在が不可欠である分野を拡大すること)」は今後も重要なキーワードになると思います。

今回はこの辺にしておきます。

3日目です。

〇TSMC本社/工場
今回の旅のメインは経営コンサルタントとしては当然?、TSMCです。
TSMCはご存知の通り、世界最大手の半導体受託生産企業(ファウンドリ)です。
TSMCが他社に比べ傑出しているのは、製造工程だけでなく微細化加工技術だと思います。
既に2nmの微細化が進んでおり、2020年時点で世界のファウンドリの71%、製造後工程の54%を台湾が占めております。
半導体は産業のコメと言われ、車や家電、スマートフォン、防衛装備に至るまで、ありとあらゆる工業製品に必要不可欠です。
従って、半導体は世界各国の地政学的対立の中心となっており、TSMCの半導体が世界の産業全体の帰趨を握っていると言っても良いと思います。

1980年代までは世界トップシェアを誇っていた日本の半導体。
当時は米国のESに負けてしまう形で凋落してしまったのではないかと私は考えます。悔しくも、中国はそうした日本の過去を反面教師にして半導体分野で米国に現在対峙しています。

しかし、日本も黙ってはおりません。
先月4月24日には菅義偉前総理が、熊本県に誘致なされたTSMC工場の建設現場を視察なされました。
今後を見据え、産業界としても絶対に失敗できない国策だと思います。
また、米国は日本に先駆けてアリゾナ州へのTSMC誘致に成功し、欧州も関心を非常に強くしております。

台北市から新幹線とバスでTSMCが集積する新竹市へ。
TSMCのファウンドリが立ち並ぶ工場群の面積の3分の1ほどを外からですが見学しました。
博物館は残念ながら休館日でしたが、良い時間だったと思います。

<コラム>
①で記述しました台湾有事がもし仮に起こったら台湾西海岸に立地するTSMCの工場はどうなるのでしょうか…。TSMCがもし仮に他国の手に渡ると西側諸国はとても困りますので、もう本当に予想ですが…、米国は先にTSMCを空爆する可能性もあると思います。このように台湾有事については様々なことを想定をしておかなければなりません。

〇国軍示範公墓
台北市郊外に第4代台湾総統の李登輝元総統の墓地がございます。親日家で、「台湾民主化の父」と称される御方です。
昨年2022年12月11日には萩生田光一政調会長が墓前にお参りなされました。
私のリサーチ不足で、国軍示範墓地が数か所あることを知らず、李登輝元総統がいらっしゃらない、他の国軍示範墓地に到着してしまいました。今から向かえば開館時間に間に合わない…李登輝元総統には本当に申し訳ない思いです…「また台湾来てね」という元総統からのメッセージだと受け取らせていただきました。(次行く時は絶対に間違えません)

〇龍山寺
李登輝総統にお会いできず、意気消沈して到着しました。
台北で最も歴史のあるお寺で、多くの方が訪れていました。
気持ちを切り替えるためにも…、現地の方と一緒に声を出して約10分間お参りさせていただきました。

〇台湾花博会場
初日には中は殆ど見れなかったので、再度伺いました。
台北駅から電車で10分の距離にあるという立地条件ですが、10年以上たった今でも老若男女問わず多くの方で賑わっており、美術展示も開かれていました。

総じて意義ある台湾旅行になったのではないかと思います。
ありがとうございました。

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