見出し画像

あの日を覚えている

あめが降っていた
左手には黒い傘のような
何かを持っていた

目の前にはくろい花が倒れていた
たくさん たくさん 倒れていた

ぼやっとしながら
それらを眺めていた

するとその黒い花の中から一つが跳ねるように起き上がって
私を指差した

私は怖くなって逃げた
たくさん 逃げた

雨が降っていた

目の前にまた 花が倒れていた
白く透き通ったそれは
溶けるように消えていく最中だった

私は全てを捨てて消えゆく花へと走った
黒い傘のような何かも
黒い花への恐怖心も

全てを捨てた

消えかかっていた白い花は
ゆっくりと
私を指差した

真っ黒な口で私を呪いながら
白い花は消え去った

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?