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【観劇メモ】雪組公演 『炎のボレロ』『Music Revolution!-New Spirit-』ライブ配信 & 彩風咲奈さんのこと


1.雪組梅田芸術劇場メインホール公演『炎のボレロ』『Music Revolution! -New Spirit-』ライブ配信

【配信観劇日】2020年9月2日(水) 16:30配信開始

※わたしは致命的に遅れてやってきた(←往年のファンである知人の愛あるつっこみのお言葉)宝塚歌劇のファンです。知らないことがたくさんあります。ツイートやブログで惜しみなくご自分のみたことや感じたことを通して多くのことをおしえてくださった方々に感謝しています。それでも知らないことがたくさんありすぎて、とても追いつけません。すべてを学んですべてを理解してから書く、ということにしてしまったら、望海さんの退団にはとうてい間に合いません。それくらい宝塚歌劇は奥深い世界です。無知を承知の上で、いま思ったことや感じたことを書こうと思っています。だからきっととんちんかんなことを書いていると思います。あとで読み返してきっと恥ずかしくなって消したくなると思うのですが、いまはどうしようもないので、そのまま書きます。

本当は劇場での観劇が一番です。
けれど、コロナというやむをえない状況から生まれた様々な変化のなかで、こんなふうに配信を観られることだけは嬉しい変化だと思います。
日程があわずチケットを買えなくて、外出先だったのでどうしようかと思いましたが、やっぱり見届けたくて配信を申し込むことにしました。出先の移動で途中ぬけたりもしましたが、最後まで観ることができました。タブレットの小さな画面でも熱気がつたわったきました。配信は初めてでしたが、思い切って観てよかったです。
やっぱり配信だと細かく観られないし、移動していると落ち着かなくて集中できないところはあります。それでも「この時」を共にすごせたということが大事だと思いました。

以下、観た直後に書いたツイートをまとめておきます。

彩風咲奈さんは気品ある美しさと人柄の温かさと優しい誠実さと穏やかな知性、鋭い眼光に垣間見える洞察の深さ、決して踏み外さない懐の広さと余裕を感じさせる色気があの長身に柔らかく包み込まれていて素敵でした。舞台でお芝居ができる喜びが伝わってきて咲ちゃん良かったねと何度も目が潤みました。

柴田先生の『炎のボレロ』は初めて見る作品でした。いつどこのなにが伏線になっているかわからないし、『アルジェの男』『哀しみのコルドバ』の怒涛の展開にびっくりした記憶があるので、身構えながら最後までどきどきはらはらしながら観ました。物語の世界にひきこむ作品の力強さを改めて感じました。

潤花さんは華があってかわいらしくて芯の強さを感じさせて素敵でした。彩風咲奈さん演じるアルベルトと潤花さん演じるカテリーナがいったん別れる場面では、互いに相手を想う情愛の深さが深く切なくしかも気品高く伝わってきて、もう一度観たい名場面です。素敵なおふたりの姿を観られてよかったです。

朝美絢さんが口をゆがめながらニヒルな表情で話しつつ、それでいて決してなげやりではなく自分ができることを命がけで探している心の誠実さと、潔癖な正義感とユーモアも感じさせる、奥行きある存在感が魅力的でした。彩みちるさんもしなやかな一途さで、お互いを必要としている関係性がすてきでした。

『Music Revolution! -New Spirit-』は基本の型を受け継ぎつつ、彩風咲奈さんたちの個性にあわせてさらにかっこよく変化させたところと、望海さんと真彩ちゃんにしか作れない場面には手を触れずに思い出を大事に保存してくれたところとがバランス良く、愛情あふれる作品になっていてうれしかったです。

宝塚歌劇団の本質なのか、中村一徳先生の作品が特にそうなのか、生徒ひとりひとりの美の個性に加えて、歩んできた芸の道や、仲間と培った関係性を「物語」として取りこんで作品に仕上げるので、現在の姿を通して過去を観て、未来に輝く姿も想起させて、三つの時間性を同時体験できる感動があるのです。

ひとりひとりが大切にされていると感じられる喜びがすなわち観劇の喜びになる、そんな稀有な体験ができるのが宝塚だと思います。「世界にひとつしかない劇団です」と七海ひろきさんが言っていたのもそのとおりだと思いました。ひとりのひとのこれまでとこれからを全力で大切に見守るすてきな劇団です。

配信で観ているとあっという間でもう一度観たい気持ちになりました。しばらく観ることができなかったのですが、配信ふくめてスカイステージの番組も久しぶりに観ることができて、とても楽しかったです。
ありがとうございました。

2.彩風咲奈さんのこと


雪組の次期トップスター就任、心からお祝い申し上げます。

彩風咲奈さんのことをわたしが初めて認識したのは、『ドン・ジュアン』のドン・カルロでした。望海風斗さん演じるドン・ジュアンと、互いに殺すか殺されるかのような激しさでぶつかりあっている姿に圧倒されました。

ドン・ジュアンだけだと世界が破滅しかけます。
といってもわたしは望海さんの役に没入して狂気すれすれの情念の深さと、舞台人としてどう魅せてどう振る舞うべきかを心得ている冷静さの絶妙なバランス感覚に魅入られているのですが、そんな狂気すれすれの世界を支えているのが彩風咲奈さんでした。
彩みちるさん演じるマリアはピュアで美しくて一途で、あの地獄のような世界に咲く気高い白い花です。
望海風斗さんの演じるドン・ジュアンは、黒に近い深紅の薔薇がおびただしく咲き乱れて朽ちて散る輪廻転生を自分の魂の内部で永遠に繰り返しているような、喜びと悲しみと苦しみと怒りの感情がめまぐるしく起伏する激しさがあります。魂は救われたいと願っているのにすくわれない業の深さを感じます。
それに対して、彩風咲奈さんのたたずまいは、その激しいドン・ジュアンの情念もなにもかもうけいれる堅牢な石造りの建物のようでした。ドン・ジュアンが蹴っ飛ばしても殴りつけてもびくとも倒れない信念のつよさを感じました。ふたりの価値観はかみあわないし、互いにみているものはずれているけれど、おたがいの存在がおたがいの不足を補っている、相互補完的な関係だと感じました。なのにこの2人が罵り合っているのがやるせなくてせつなくて、そこがこの作品の心にささるところです。好きだなあ、「悪の華」。『ドン・ジュアン』は傑作だと思います。

『ファントム』のジェラルド・キャリエール役も好きです。彩風咲奈さんがキャリエールで本当によかった。この優しさがエリックを救ってくれるし、観てるひとの心も救ってくれていると思いました。これを書くと長いのでまたいつか。

スカイステージや舞台、対談記事などで垣間見える、望海さんと彩風さんのやりとりも好きなのです。望海さんは彩風さんを信頼してリラックスしているのびのびといられるように感じます。また、舞台で望海さんがご挨拶なさるときに、かたわらで彩風さんがいつでもフォローできるように待機していたり笑っていたりするのをみるのも好きなのです。つかず離れずのほどよい距離感は信頼と尊敬の証で、すてきな関係だと思います。

わたしは『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』で望海さんに恋に落ちたファンです。好きになった直後に退団を知るということになり、があああんときました。望海さんと真彩希帆さんの退団がとても悲しいのです。

ですが、彩風咲奈さんが雪組のトップを継いでくれることはとても嬉しいのです。いろんな作品をみるたびに彩風さんのことが好きになりました。『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』という大作でのヌードルスとマックスの関係性が好きだったのと、この休演につぐ休演のつらい期間中、ほんとうに彩風咲奈さんがいてくれてよかったと思うことが多々あったからだと思います。あの安定感あるほほえみで、なにもかも支えてくれて包み込んでくれている、そんな気がするのです。

『おっさんずラブ』がお好きなところも、同じくこの作品に心打たれた民のひとりとして親近感がわきます。あのドラマの愛あふれる世界を愛する方ならば、きっとトップに就任されてからは、いろんな枠も壁もこえて、自由にのびのびとお芝居の世界を広げてくださるだろうと楽しみにしています。

これからも応援していきたいと思います。




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