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わずか数軒連なっているだけの飲み屋街にある、カウンター席しかない狭いスナック。そのさら…
四畳半の狭い部屋。割れんばかりの蝉の声。古いエアコンは役立たずで、ガタガタ震える扇風機…
かつてその町では、顔を黒塗りにした黒ピエロが流行っていた。ブームの火付け役は誰か、きっ…
時々、日付が変わった頃にベランダへ出る。まるでタバコを吸うように、懐かしい夜気で肺を満…
「はい、小林です」 「もしもし? オレだけど」 「どちら様?」 「オレだよ、オレ。声忘れ…
夕暮れ時にベランダへ出ると、秋の気配さえ感じ取れる風が頬を撫でた。 しばらく漫然とし…
亡くなった友人の夢を見た。目覚めは悲しいというより寂しい。それだけの時間が過ぎている。 起きたらコップ一杯の水を10分かけてゆっくり飲むのが私の習慣で、その間に次々と亡くした友人たちの顔が連なる。 みんながもうこの世界のどこにもいないなんて。それなのに私はこうして朝を迎えて、世界は事も無げに動いている。不思議だ。 まるで銀河鉄道の夜。世界という列車に乗って私は進む。一人また一人と友人たちは途中下車して、思い出すのはホームに残る彼らの姿。これが人生というものか。
居酒屋に二〇年ぶりの旧友といる。彼の姿は最後に会った時から変わっていない。座敷で、テー…