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【マンガ原作】『ネオ・リバースエッジ』「最終話・行く先は…未知!」

※タイトル画面

東京・六本木、六本木ジンノタワー。『ネオ・ボーダー』最終話より、窓際に佇む蜂須賀!

タイトル
『ネオ・リバースエッジ』

『最終話・行く先は…未知!』

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新宿・歌舞伎町ー
一番街、細い路地。
ハードボイルドな中年男の鋭い眼。
その迫力に気圧される半グレ男。
半グレの声(こ…殺される)
走って逃げだす半グレ男。
半グレ男「…」
中年男、村木に。
中年男「走れ…!」
   「歌舞伎町タワーに車が停めてある…」
村木「は、はい…」
走り出す中年男、ついていく村木。

ーーーーー

東京・六本木ー
六本木ジンノタワー、応接室。
静かに語り出す神野。
神野「はじめて蜂須賀と出会ったのは…」
  「全共闘と言われた……」
回想カット。1968年10月21日新宿駅…新宿騒乱事件。
字幕(神野)⦅政治の季節……⦆
神野を見ている久保田&木村、所長。
三人「…」
神野「私は、搾取する側である…自らの血脈に反発し」
  「新宿でJAZZ喫茶をやっていた…」

※神野の回想
1968年頃の新宿…。


字幕⦅そこに、たびたび来ていたのが…蜂須賀だ⦆
JAZZ喫茶店内。デモ用のヘルメットをテーブルの下に置き、タバコを吸い静かに音楽に聞き入る学生活動家。
それをただ、上目使いで見ている長髪の若者(蜂須賀?)。
字幕(神野)⦅ヤツは…そんな時代の波に乗ることも出来ず
      ただ、居心地が悪そうに
      自分の居場所を探して
      野良犬のように彷徨っていた…⦆
コルトレーン、アイラ―、天井桟敷、状況劇場…のカット。
字幕(神野)⦅ジョン・コルトレーン
      アルバート・アイラー…
      フリーJAZZを教え
      天井桟敷や状況劇場、ATG映画…
      カウンターカルチャーを叩き込み
      大江健三郎を語り合った⦆
回想カット。『ボーダー』Vol・50「時計塔を撃て!!」より、神野からの金を受け取る蜂須賀。
字幕(神野)⦅私が何かと蜂須賀を気に掛けているのは
      決して弱みを握られていたわけではなく
      私が悪い影響を与え
      ヤツの人生を曲げてしまったのでは?
      …という私自身の引け目から、だ⦆
※回想終わる

久保田&木村に語り掛ける神野。
神野「おそらくだが…私同様」
  「ヤツも自分の家柄や血脈を憎んでいたのだろう」
  「とくに父親には、強く反発していたのか」
  「高校時代…ボクシングのスパーリングと称して」
  「親父をボコボコに殴った…なんて話を」
  「ヤツらしく、笑い話にしていたもんだ」
三人「…」
突然、笑い出す神野。
神野「くっくっくっ…」
三人「…?」
神野「いや…失礼した」
  「さんざん迷惑を掛けられ、迷惑も掛けたが…」
  「…今となっては、落語のようなエピソードばかりで」
  「思い出すと、つい笑ってしまう…」
  「そんな男だったろう?蜂須賀というヤツは…」
コクリと頷く、久保田&木村。
久保田&木村「…(二ヤリ)」
久保田「…最後に蜂須賀さんに会ったのは、いつですか?」
アゴに手を当て考え込む神野。
神野「う~ん…」
神野をじっと見据える所長の眼…。
所長「…」

ーーーーー

新宿・歌舞伎町。
歌舞伎町タワー駐車場ー
停車している白いワゴン車。
村木と中年男が駆け込んでくる。
中年男、助手席のドアを開け。
中年男「乗れ…」
車内に飛び込む村木。
運転席に乗り込む中年男。
シートベルトをして発進。
歌舞伎町タワーを出るワゴン車。
中年男、運転しながら。
中年男「新宿駅は、つねに見張られている」
   「スルーするのが無難だろう…」
   「…事務所は、浅草だったな?」
村木「はい…」
村木、運転席の男をチラリと見る。
中年男の鋭い目付き。
中年男「…」
村木、あまりの迫力に話が続かない。
村木「…」
その時、後から声。
「とーちゃん…!」
振り返る村木。
村木「…!」
後部座席に赤ん坊を抱いた女性が。
女性「赤ちゃん寝てるから…ゆっくり、急いでね」
コクリと頷く中年男。
中年男「…」
中年男を見る村木。
村木「!?」
やはり声を掛けられず、仕方なく正面を向く。
村木「…」
新宿の街を行くワゴン車。

ーーーーー

東京・六本木ー
六本木ジンノタワー、応接室。
静かに口を開く神野。
神野「蜂須賀に最後に会ったのは…」
神野に注目する久保田&木村、所長。
三人「…」
神野「…あれは、いつだったろう」
  「キミたちのアパートに、まだ居た頃のはずだが」
  「ヤツが酷く落ち込んで、姿を現したことがある」
久保田「落ち込んでいた…!?」
木村「蜂須賀さんが…ですか?」
神野「うん…」
神野、親指を立てて。
神野「コレの…」
次に小指を立て。
神野「コレが、亡くなったと…だけ」
久保田「コレの…コレ?」
神野「私も…正確なことはわからないが」
  「おそらく父親の再婚相手なのか…」
  「ヤツにとって…母親にあたる方が亡くなったのではないだろうか」
三人「…」
神野「その後…」
  「ますます、過激に生きていく決意を固めた…と」


久保田「それは…いつ頃のことですか?」
神野「う~ん…」
  「湾岸戦争の発端…」
  「イラクがクウェートに侵攻した頃…だったか」
神野を見る久保田&木村、所長。
三人「…」

ーーーーー

東京・浅草、隅田川ー
吾妻橋あたり…。
停車するワゴン車。
中年男、村木に。
中年男「着いたぞ…降りろ」
シートベルトを外して、車を降りる村木。
村木「…!?」
中年男「武器は持っていなかった…」
   「威嚇…警告が目的だろう」
村木「あなたは…?」
中年男「Qに頼まれた…」
   「アンタをガードするようにと」
村木「…Q!?」
中年男「所長に、よろしく伝えてくれ…と」
村木「お、お名前は…?」
中年男「…」
村木「…」
中年男「…椿屋の……」
   「源…」
走り去るワゴン車…。

ーーーーー

東京・六本木ー
六本木ジンノタワー、応接室。
窓際で車椅子に乗り、外を見ている神野。
ビルを出る久保田&木村、所長の三人の後姿が見える。
神野、誰にともなくつぶやく。
神野「本当に…本当に、これでいいのか?」
  「彼らと、二度と会えないのかも知れないのだぞ…」

ビルの外。去って行く三人の後姿。
『ネオ・ボーダー』最終話より、ビルの窓際に佇む蜂須賀らしき男…。
突然立ち止まり、《ふっ》と振り返る久保田。
だが、そこには誰もいない。
木村「どうしました…久保田さん?」
久保田「誰かが、見ていたような気がした…」
所長、久保田&木村に。
所長「また、振り出しに戻りましたなあ…」
  「事務所に帰り、次の手を考えましょう」
歩き出す所長。
三人の後姿…。

ーーーーー

隅田川を水上バスが行く。
浅草・大川端探偵社ー
事務所内。
応接室に所長、村木、久保田&木村が揃う。
村木、所長に。
所長「ほお…そんなことが」
  「だが、上田が裏切るとは思えねえ…」
  「…尾関ってヤツの仕業か」
村木「Qが…よろしく伝えてくれと、その方が」
所長「…」
村木「どなたです?Qというのは…」
所長「オレの…コネクションの一人だ……」
所長、背を向け隅田川を見て。
所長の声(Q…)
スマホを見ている久保田。
久保田「神野さん…ウソを言ったのかなあ」
   「調べたら、イラクのクウェート侵攻は1990年夏…」
   「その頃には、とっくにセンパイは姿を消していた」
   「月光荘を出てからも、神野さんとは繋がっていたんだ……」
木村「私も、そう思いました…」
  「あの時…"気に掛けていた"という過去形ではなく」
  「"気に掛けている"と、現在進行形で話してました」
所長、振り向き。
所長「う~む、私も違和感を覚えましたが」
  「あのクラスにもなると、表情からは読み取れませんでしたな」
その時!久保田のスマホに着信が。
久保田「じ、神野さんだ!?」
久保田、スマホを操作。《ピッ》
久保田「もしもし…久保田です!」

東京・六本木ー
六本木ジンノタワー。
神野、窓際で車椅子に乗り外を見ながら、電話の子機を持っている。
神野「久保田クン…」
  「すぐに成田に向かいたまえ…」

久保田「?」

神野「すまん…久保田クン」
  「私はウソを言っていた…」

久保田「…」

神野「蜂須賀は…ここに居た」
  「成田15:30発ウランバートル直行便…」
  「まだ間に合うはずだ…すぐに成田空港に行くんだ」
  「おそらくこれが、蜂須賀の…"最後の旅"……」

久保田「わ、わかりました…ありがとうございます!」
久保田、スマホを切り慌てて。
久保田「お、おい木村!」
   「すぐに成田に行こう!!」
   「セ、センパイが…そこに!?」

六本木ジンノタワーー
外を見る神野に、字幕かぶせて。
字幕⦅愛しの"ボーダー"たちよ⦆
  ⦅俺のぶんまで
   自由を探す旅を
   続けたまえ……⦆
※『ボーダー』Vol・10「箱根路(復路)」オマージュ。

ーーーーー

成田空港駅ー
ホーム。成田エクスプレスから降りて来る蜂須賀らしき男…以下"旅人"と表わす。
成田国際空港ー
ロビーを歩く旅人。
国際線到着ロビー。
柱の物陰に日焼けした二人の男…。
濃い眉毛に鋭い目…権藤右近!
そして、坊主頭の牛山の…ハードコアコンビ!!
右近「おい牛山…最後の試練だ」
  「税関さえ通り抜ければ」
  「もう一度日本で暮らせる…!」
牛山、嬉しそうに。
牛山「えええ…」
右近「いいか…」
  「オレたちはもう、日本人じゃねえ…」
  「ウー・コン・ゴンドと、ウー・シイ・ヤマこと」
  「…ウー・ブラザーズだ!!」
牛山「えええ!」
右近「本番前に、リハーサルをやる…」
  「オレは係官だ…名前を聞くから」
  「ウー・シイ・ヤマと答えるんだぞ」
敬礼する牛山。
牛山「ハ、ハイ…う、右近さん!」
右近「What’s your name…お前の名前は?」
牛山「えええ…う、牛山!」
右近「違うだろ…やり直しだ!!」
  「What’s your name…名前は?」
牛山「う、牛山!」
右近「だから、ウー・シイ・ヤマ…だろ!?」
牛山の頭を《ポカリ》と叩く右近。
牛山、頭を押さえて。
牛山「う、うひ~っ!?」
その様子を遠巻きに見ている旅人…。
旅人「…?」

ーーーーー

千葉県内ー
田園の中の高速道路を突っ走るタクシー。
車内。後部座席に久保田と木村。
木村「ま、間に合いますかね…久保田さん」
久保田「ギリギリだな」
木村「蜂須賀さん…どこに行くと思います?」
久保田「さあ…思い当たる場所はあるけど」
木村「…私もです」
久保田「せーの…で、言ってみようか」
二人「…せーの!」
久保田と木村、向かい合い。
二人「砂漠…!」

ーーーーー

成田国際空港ー
国際線到着ロビー。
税関検査に並ぶ、牛山と右近。
極度に緊張している牛山…息遣いが荒く、汗をかいている。
牛山の順番、係官がパスポートを確認する。
係官「May I ask your name?」
牛山「えええ…」
  「ウ…ウ…ウ…」
冷や汗の右近。
右近の声(ガ、ガンバレ…)
牛山「ウ、ウー・シイ・ヤマ…」
《ホッ》とする右近。
右近の声(よし…いいぞ、牛山)
次に右近。
係官「May I ask your name?」
右近、平然と。
右近「…権藤右近!」
係官、右近の顔を見て。
係官「はあ…!?」
右近、牛山の腕を掴み。
右近「ま、まずい牛山…逃げるぞ!」
牛山「えええ…!?」
税関を強行突破する右近と牛山。
ロビーの中を全力疾走。
追いかける数人の係官。
その時…故意か偶然か?係官を遮るように旅人が通る。
旅人に激突して転ぶ係官。
旅人も転倒し、後の係官たちも巻き込まれ次々と転倒。
走り去る右近と牛山。
その後姿を見る旅人。
一瞬、振り返る右近。
右近と旅人の視線が交錯する。
《二ヤリ》と笑う旅人。

タクシー降車場。
停車するタクシーから慌てて降りる久保田&木村。
木村「ダ、ダメです…久保田さん!」
  「15:30になってしまいました…あっ!?」
久保田「…!?」
滑走路。今にも飛び立たんとする航空機。
機首を上げ、離陸。
空に飛び立つ航空機に、かつての蜂須賀の姿がオーバーラップ、字幕かぶせて。
字幕『一番美しい日本語を知ってるか…?』
  『……サヨナラ』
※『ボーダー』Vol・18「金閣炎上」オマージュ。

成田空港場外。
金網を背に、《ハアハア》と息を切らす右近と牛山(『ハード・コア平成地獄ブラザーズ』より)…。
二人の頭上を飛んで行く航空機。
右近「………」
牛山「えっえっえっ…」

浅草・大川端探偵社ー
事務所、隅田川を臨む窓から、空を見上げる所長と村木(『リバースエッジ大川端探偵社』より)。

押上・東京スカイツリーー
展望デッキ。源と赤ん坊を抱いたトモヨ(『湯けむりスナイパー』より)が空を見上げる。

六本木・ジンノタワーー
応接室の窓際に、神野ととめ子(『迷走王ボーダー』より)が、車椅子姿で並び空を見上げている。

府中・東京競馬場ー
競馬新聞を手に、電光掲示板の向こうの空を見上げる土岐(『ハード&ルーズ』より)。

岩手・木村農園ー
野菜の収穫中、作業着姿のナミ子と明美(『迷走王ボーダー』より)が空を見上げている…。

あるいは…読者それぞれの思い入れある、狩撫作品のキャラクターたちが……。

空を見上げる久保田と木村の後姿…。
字幕《仏は常にいませども
   現〈うつつ〉ならぬぞあわれなる
   人の音せぬ暁に
   ほのかに夢に見え給〈たま〉ふ
   (『梁塵秘抄』より)》

ーーーーー

中央アジア…?
砂漠を行く、外国の旅芸人一座。
現地語で何かを話し、指を差す。
その先には、駱駝に乗った旅人…。
※『ボーダー』Vol・1「社会復帰〈前篇〉」、1ページ目イントロシーンをそのままで。

※ラストコマ
砂漠の中に消えてゆく旅人…蜂須賀の後姿。風が吹き抜ける。《ビュ~ゥウウ》
字幕(※狩撫麻礼氏直筆の文字で…)
『さよなら また逢いましょう  狩撫麻礼』

『ネオ・リバースエッジ』END

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