マガジン

  • 【プロレス小説】『その男、藤原につき』

    その男に、華やかな光は似合わなかった。"上"で試合をしたのは数えるほどだ。誰にも注目されていない影…"前座"こそが、自分の居場所だと思っていた…。   オレは…ここで死ぬのか   それでもいい…   猪木のためなら…死ねる!  その男…藤原につき

  • 令和地獄ブラザーズ

    権藤左近の兄・右近は、事件に巻き込まれ自爆テロにより死亡…と、されていた。 だが…右近とその友人・牛山は、とある南の島で生存していた!!

  • ヨコハマ・トレンチタウンロック

    みなと街ヨコハマ。ショッピングストリート・元町の川の向こう側…ハマのディープゾーン"トレンチタウン"の古びた雑居ビル『川向(かわむかい)探偵社』。川を渡ってやって来る依頼者の奇妙な依頼の数々…。

  • ネオ・リバースエッジ

    浅草あたり、隅田川沿いの古びた探偵社…。 「昭和の終わりころ、たった一度だけ東京ドームで『Live!』を行った幻のアーティストの消息を知りたい」との依頼。 そのアーティストの名は・・・アンチェイン蜂須賀!!

最近の記事

『その男、藤原につき』④

 維新軍に完膚なきまでに叩きのめされ、5分余りでタカダの試合は終わった。  無理もない…フジナミがパートナーとはいえデビューして2年の若手と、今をときめく維新軍では体も技も違う。それでも見せ場を作り十分健闘した。ヤマザキとクロネコに肩を担がれタカダが戻ってきた。 「よく、やった…」  そう声を掛けると、タカダが申し訳なさそうに俯いた。   大丈夫だ…お前は   メインイベンターになるべき人間だ   いつまでも前座で燻っている   オレとは違う…  タッグパートナーのキ

    • 【プロレス・今日の出来事】11月3日

      『1986年の猪木VS武藤』 1986年11月3日 新日・後楽園ホール 「猪木・ケビンVS木村・武藤」 この日の猪木もまた、狂気じみていた。そして、怒っていた…。 当初発表されたカードは「武藤VSケビン、藤波・木村VS前田・藤原のIWGPタッグ戦」であった。ところが、10・9ニールセン戦の後遺症から前田が欠場。IWGPタッグ戦が消滅し、藤波VS木村戦が突如浮上、さらに藤波も欠場となったことで、今後ライバルになりそうな予感がするケビン武藤、そして猪木武藤の初対決など見所はあ

      • 【プロレス小説】『その男、藤原につき』③

         1983年、9月。  組み立てられたばかりのリングの上では、道場と同じようにグラウンド中心のスパーリングが繰り広げられていた。TV局のスタッフが中継の準備をする体育館に、時折うめき声とギブアップの意志を示すタップの乾いた音だけが響く。  TV中継があろうがなかろうが、それがいつもの光景だった。それは客入りが始まってからもしばらく続いた。入って来たばかりのお客さんがリングを囲む。通常のプロレスとは違う"極め合い"に、誰もが固唾を呑み静かに見守っている。若手のタカダの腕を極める

        • 令和地獄ブラザーズ・外伝~右近と牛山の日常

          右近「おい左近    早くことわざを言え」 左近「兄貴    今日もこのネタか    急がば回れ…」 右近「…リングで側転」 左近「ビガロか!    火中の栗をひろう…」 右近「…炎のコスチュームを着る」 左近「だからビガロ!    生き馬の目を抜く…」 右近「…ビガロの目を抜く、猪木」 左近「ビガロ!    はしにも棒にもかからぬ…」 右近「…ハシミコフにはかなわぬ」 左近「ビガロだよ!    寝耳に水…」 右近「…寝耳に水車落とし」 左近「だから、そ

        『その男、藤原につき』④

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        • 【プロレス小説】『その男、藤原につき』
          4本
        • 令和地獄ブラザーズ
          21本
        • ヨコハマ・トレンチタウンロック
          15本
        • ネオ・リバースエッジ
          9本

        記事

          令和地獄ブラザーズ・外伝~右近と牛山の日常

          右近「おい左近    オレはことわざをプロレスにすることが出来るぞ」 左近「兄貴言っていることが良くわからないな」 右近「何でもいいからことわざを言ってみろ」 左近「蛙の子は蛙…」 右近「百田の子は百田」 左近「当り前だろ!    馬の耳に念仏…」 右近「馬場の手に念仏」 左近「拝み渡りに付き合うからだ    新崎人生の写経が手についたんだろ!    危ない橋を渡る…」 右近「危ない橋本に亘を紹介してもらう」 左近「コイケエイコか!    壁に耳あり障子に目あり…」 右

          令和地獄ブラザーズ・外伝~右近と牛山の日常

          【プロレス小説】『その男、藤原につき』②

           「あいつ…やっちゃってくれないか」  同じ頃に"会社"に入った同期で、友人でもあるレフリーのタカハシがそう声を掛けてきたのは、そんないやな空気の中で始まったシリーズが、しばらく経った頃だった。 「使えないくせに、エース外国人みたいな顔してやがる」  このシリーズには、ディック・マードック、バッドニュース・アレンなどおなじみの常連以外、これといった目玉となる外国人レスラーはいなかった。未知の強豪として呼んだ"ヘラクレス・ローンホーク"という黒人レスラーをエース格にしよう

          【プロレス小説】『その男、藤原につき』②

          【プロレス・オレが創ったホントっぽいウソエピソード】①

          『猪木VSスピンクス』1986・10・9 猪木に首を絞められたスピンクスは思わず鼻水を垂らしてしまう。レフリーのガッツ石松は自らの手でそれを拭き取った。その日本人の優しさに感動したスピンクスは、のちにFMWのオファーも受けたといわれている 『新日対Uインター』1995・10・9 興行的に大成功に終わった打ち上げの席上、試合に負けたこともあり、かなり悪酔いした高田が安生に絡み、やがて殴り合いにまで発展する。それを止めたのはマサ斎藤と若き日の桜庭。マサが「アイツは将来大物になる

          【プロレス・オレが創ったホントっぽいウソエピソード】①

          【プロレス小説】『その男、藤原につき』①

           パキスタン・カラチ。  12月といえども気温は30℃近くなる。じわりと滲む汗は、その暑さからではなかった。リング上では、師と慕う"あの人"と"英雄"といわれる地元レスラーとの死闘が繰り広げられていた。  グラウンドの攻防になる。"あの人"が腕を取り、リストロックが極まる。"英雄"が、苦悶の表情を浮かべる。だが"英雄"は、そのプライドのためか決してタップしようとしない。"あの人"の眼が妖しく光り、狂気が宿る。何かを叫んでいる、折るぞ…と聞こえた。"あの人"の顔が一瞬のうちに、

          【プロレス小説】『その男、藤原につき』①

          【プロレス・今日の出来事】10月11日

          1997年10月11日 KRS・東京ドーム「PRIDE.1」 『高田延彦VSヒクソン・グレイシー』 もちろん、高田が7月に手術を受けたというニュースでは心配したし、最近の柔術大会での活躍は喜ばしく、凄いこと…だと思っているのを前提に。  あの日、プロレスは死んだ…  確実に、死んだのだ…… この時の高田は、試合前からヒクソンとグレイシー柔術の幻想に呑まれていた気がする。たしかに、それほどヒクソンの殺気はドームに充満するほど凄まじいものであったが、あの時…マルコ・ファスか

          【プロレス・今日の出来事】10月11日

          【プロレス・今日の出来事】10月9日

          1986年10月9日 新日・両国 INOKI闘魂LIVE・PART1 『前田VSニールセン』 『猪木VSスピンクス』 プロレス観戦前日に興奮して寝付けなかった経験は、後にも先にもこの時一度限りである。総合格闘技などという言葉すらなかったあの当時、"異種格闘技戦"にはそれほどの浪漫があったのだ。 当然、プロレス対ボクシング…猪木VSスピンクス戦に期待して寝付けなかったわけではあるが、セミの前田VSニールセンが完全にメインを"喰って"しまった。裏側がどうであれ、オレはいまだに

          【プロレス・今日の出来事】10月9日

          マンガ原作『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第3話「幻のメダリスト」⑧最終話

          あらすじ みなと街ヨコハマ。ショッピングストリート・元町の川の向こう側…ハマのディープゾーン"トレンチタウン"の古びた雑居ビル『川向(かわむかい)探偵社』。川を渡りやって来る依頼者の奇妙な依頼の数々…。“ヨコハマ・トレンチタウン”に、レゲエ・ビートが鳴り響く…!! 事務所に現れた旧知のTVマンから、"幻のメダリスト"を探してほしい…との依頼。湯けむりただよう秘境の温泉宿に向かう所長と村木。"幻のメダリスト"の告白。そして謎の男・GMの正体は?第3話「幻のメダリスト」完結編

          マンガ原作『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第3話「幻のメダリスト」⑧最終話

          【プロレス夢物語】『1990年のBI砲』

           1990年、プロレス界は激動の時代を迎えていた。  2月 新日本プロレス・東京ドーム大会に全日本参加  4月 WWF・全日・新日三団体合同興行「日米レスリングサミット」開催  5月 新団体SWS設立、全日新日から多数の選手が移籍  前年、坂口征二が新日本プロレスの社長に就任…さらに新団体SWSという、"共通の敵"が現れたことで、全日本プロレスと新日本プロレスの"壁"が崩れたのである。  そして…四天王、三銃士という新世代が台頭し、新しい風が吹き始めていた…。  その夏

          【プロレス夢物語】『1990年のBI砲』

          マンガ原作『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第3話「幻のメダリスト」⑦

          あらすじ みなと街ヨコハマ。ショッピングストリート・元町の川の向こう側…ハマのディープゾーン"トレンチタウン"の古びた雑居ビル『川向(かわむかい)探偵社』。川を渡りやって来る依頼者の奇妙な依頼の数々…。“ヨコハマ・トレンチタウン”に、レゲエ・ビートが鳴り響く…!! 事務所に現れた旧知のTVマンから、"幻のメダリスト"を探してほしい…との依頼。湯けむりただよう秘境の温泉宿でひっそりと暮らしていた、"幻のメダリスト"が語る…誤審の真相とは。 ー 登場人物 所長…川向探偵

          マンガ原作『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第3話「幻のメダリスト」⑦

          マンガ原作『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第3話「幻のメダリスト」⑥

          あらすじ みなと街ヨコハマ。ショッピングストリート・元町の川の向こう側…ハマのディープゾーン"トレンチタウン"の古びた雑居ビル『川向(かわむかい)探偵社』。川を渡りやって来る依頼者の奇妙な依頼の数々…。“ヨコハマ・トレンチタウン”に、レゲエ・ビートが鳴り響く…!! 事務所に現れた旧知のTVマンから、"幻のメダリスト"を探してほしい…との依頼。調査は難航、謎の男…GMからの情報により、湯けむりただよう秘境の温泉宿へと向かう所長と村木。 ー 登場人物 所長…川向探偵社・

          マンガ原作『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第3話「幻のメダリスト」⑥

          【プロレス・今日の出来事】9月21日

          1984年(昭和59年)9月21日 『維新軍新日離脱』 この日はこれに尽きる…。 その日の朝…オレは義父が競輪目的で取っていたスポーツ新聞で『維新軍5人新日離脱』という、小さな囲み記事を見る。5人の名は記されてなかったので、当時唯一、朝刊スポーツ紙でプロレス記事があったデイリーを改めて買った…。 そのことから最初に見たのは、当時プロレスは扱ってなかったがニッカンではないかと推測。 それでも5人が誰かはわからず、夕方の東スポで長州ら維新軍主力5人であることを知った…。 記憶

          【プロレス・今日の出来事】9月21日

          【プロレス・今日の出来事】9月18日「その男…藤原につき」

          1983年(昭和58年)9月18日 新日本・小田原自工駐車場特設リング 『星野・藤原VSローンホーク・寺西』  その男に、華やかな光は似合わなかった。"上"で試合をしたのは数えるほどだ。誰にも注目されていない影…"前座"こそが、自分の居場所だと思っていた。 …と、書いてやめた。これはまた、別作品にして公開しよう…。 この試合については少し前にXでポストしたが、Xでもnoteでも、最近になり新たにプロレスファンの方をフォローしたりフォローしていただいので、改めて書いてみる。

          【プロレス・今日の出来事】9月18日「その男…藤原につき」