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【マンガ原作】『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第1話「開かずの金庫」前編

第1話「開かずの金庫」

登場人物

所長…川向探偵社・所長

村木…川向探偵社・調査員

メグミ…川向探偵社・バイト受付嬢兼事務員

依頼者…高級住宅街・山手に住む70代の老婦人。和服を着用

松三…原作:ひじかた憂峰/作画:松森正『湯けむりスナイパー』より、第一話のみのゲスト出演。この話では、かつて“錠前破りの松”と呼ばれた男の役柄。トレンチタウンの住人

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海ー
カモメが飛び交う。
横浜ベイブリッジの下を通過する客船。
元町・ショッピングストリートー
左右に洒落た店が立ち並ぶ。
中村川ー
川に架かる橋…。

※見開き画面。
橋の上に立つ着物姿の老婦人…。
川の向こう側…ヨコハマトレンチタウン!
川岸に古びた雑居ビル…《川向(かわむかい)探偵社》の看板。

タイトル、字幕かぶせて。
タイトル『ヨコハマ・トレンチタウンロック』   
    『第1話「開かずの金庫」』

字幕⦅ハマのディープゾーン“トレンチタウン”に、レゲエ・ビートが鳴り響く…!!⦆

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中村川ー
橋を渡る婦人。
橋を境に光景が一変!
トレンチタウンー
猥雑とした街の雰囲気のカット…。
大量のごみの山。
私設公営競技場外売場(いわゆるノミ屋)。
路上に座り込み酒盛りをしている住人たち。
臆することなく毅然としたまま、その中を通り過ぎる婦人。
住人が薄笑いを浮かべ、舐めまわすような視線を送る。

中村川、川の向こうに元町。
川向探偵社・事務所内ー
川が見える窓を背に、所長席で新聞を読む所長。
受付。メイクを直すメグミ。
応接セットのソファーで鼾をかく村木…川向探偵社の面々。
入口ドアの擦りガラスに人影。
《ガチャリ》と開くと、婦人が立っている。
飛び起きる村木、入口を見る三人。

「開かずの金庫…?」
《キョトン》とする村木。
応接セットに所長と村木、依頼者の婦人が向き合う。
婦人の横顔に、年季の入った大型の金庫がオーバーラップして。
婦人「主人があちらに行った6年前から…」
所長「奥さん…失礼ながら、それは我々の仕事ではありませんぞ」
村木「たとえば…鍵の何ちゃらとか、便利屋さんに依頼されては?」
  「よろしければ当社でご紹介いたしますが…」
婦人「…では、このような依頼ではいかがでしょうか」
  「どんな鍵でも開けることが出来る…」
  「天才鍵師を探して欲しい」
所長「天才鍵師…」
村木「…」
婦人の回想カット。金庫を前にお手上げの鍵屋。
婦人「考えうる手はすべて尽くしたのです…それでも」

夜。照明に照らされる横浜スタジアム。
川向探偵社・事務所ー
婦人の姿はすでになく、応接セットに所長と村木。
所長「天才鍵師か…」
村木「…心当たりは?」
所長「そんなもん…」
  「ある…に決まってるだろうが」
村木「コネクション…ですか」
所長の横顔を見つめる村木。
村木の声(所長のコネクション…)
    (政財界からウラ社会、芸能界に至るまで)
    (あらゆる人物に繋がる闇のネットワーク……)
所長「いや…使うまでもねえ」
村木「…」
所長「この街にいらあな…」
  「伝説の錠前破り…“錠前破りの松”って男がな」
村木「“錠前破りの松”…?」

朝。ゴミ置き場に大量のゴミ。カラスが荒らし、ネズミが這い回る。
トレンチタウン・メインストリートー
住人の行列、ハローワーク…職安前。
所長と村木が現れる。
横浜ベイスターズの帽子を被った住人に声を掛ける所長。
所長「よお父っつぁん…景気はどうでえ」
住人「おおアンタか…円安で入ってくる船はサッパリ、仕事は中4日ってところだ」
所長「そおかい…まあ父っつぁんがいれば、ベイスターズの優勝は決まりだろうがな」
住人「あたりめえだろ…オレの采配は間違いねえんだ」
所長「さすがハマのウラ番長だな」
住人「な、なにい~!?誰がウラ番長だとお…GMと言いやがれ!」
笑い合う所長と住人(以降GM)。「わはは!」
微笑の村木。
村木「…」
所長「ところで、松三さんはどうしてる」
GM「松三?たまに見掛けるが、なにせあの通りの変わりモンだ…相変わらず口は利かねえがな」
所長「ヤサはどこだ」
GM「第3カモメ荘…」

トレンチタウン・第3カモメ荘ー
左右にドアがズラリと並んでいる廊下。
部屋の前に所長と村木。所長、ドアをノック。
所長「松三さん…オレだ」
無反応の部屋。
所長、再びノック。
所長「松三さん!」
《ガチャリ》とドアが開く。
のっそり顔を出す松三(※原作:ひじかた憂峰/作画:松森正『湯けむりスナイパー』よりゲスト出演)、長髪、ヒゲ面。
松三「…」
松三の風貌に、思わず息を呑み後ずさる村木。
村木「…!?」
所長「ま、松三さん…仕事を頼みてえ」
松三、無言でドアを閉めようとする。
松三「…」
所長、ドアを抑えて。
所長「いや…な、なにもヤマを踏んでくれってわけじゃねえ、真っ当な仕事だ」
松三「…」
所長「開かずの金庫を開けてもらいてえんだ」
松三「あ、開かずの…金庫?」
所長、《コクリ》と頷いて。
所長「松三さんにしか出来ねえ仕事だ」
松三「…」

トレンチタウン・公園ー
《カポッ》と日本酒ワンカップのフタを開ける松三、《ゴクリ》と呑んで。
松三「ったく、最近はタタキ(※強盗)にせえウかんむり(※窃盗)にせえ、荒っぽくていけねえ」
松三を間に、所長と村木が並ぶ。
松三「…しかも年寄りだの弱え人間ばかり狙いやがる」
  「あんなもん、仕事とはいえねえ…鬼畜の所業ってもんでえ」
村木「…」
松三「オレっちも盗人にはちげえねえが、盗人にも五分の魂…」
  「己の腕一本と…意地と心意気でやるのが、仕事ってもんよ」
所長「う~む…」
松三「で、その開かずの金庫ってえのは…?」
所長「やってくれるのか!?」
松三、所長を《ギロリ》と睨んで。
松三「オレっち以外…誰が開けられる」

※ラストコマ
顔を見合わせる、所長と村木。《二ヤリ》。

『ヨコハマ・トレンチタウンロック』第1話「開かずの金庫」前編END
後編につづく

つづきはXで毎日更新中。後編完結後noteで公開https://twitter.com/ukon_gondo

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