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【マンガ原作】『ネオ・リバースエッジ』「第五話・夜の盗賊団(前篇)」

※タイトル画面

浜辺に佇む…久保田・木村、そして蜂須賀!
(ボーダーVol70『嵐まで』より)

タイトル
『ネオ・リバースエッジ』

『第五話・夜の盗賊団(前篇)』

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南房総・レストラン「月光」ー
睨みあう久保田と村木。
久保田「…」
村木「…」
久保田、スマホを手にして。
久保田「村木さん…」
   「木村に電話して、いいかな?」
村木「…どうぞ」
久保田のスマホ…呼び出し音のあとに声。
(ハイ…)
久保田「木村?オレ…」

岩手・木村農園ー
農作業着でスマホを手にする木村。
木村の後ろにはやはり農作業着のナミ子。
木村「あ…クボタさん、どうしました?」

レストラン「月光」ー
久保田「今、探偵さんが来てるんだけどさ」

木村農園ー
木村「はい…」

レストラン「月光」ー
久保田「“あの事”…話そうと思ってるんだ」
久保田を見る村木。
村木の声(あの事?)
久保田「この探偵さんたちなら…大丈夫な気がする」
   「センパイと同じで、正直〈ストレート〉で不器用だから」

木村農園ー
木村「久保田さんにお任せです」

レストラン「月光」ー
久保田「あと…前から言っていたあの計画」 
   「実行する時だと思わないか?」

木村農園ー
木村「私も…そろそろだと思ってました」

レストラン「月光」ー
久保田「木村…こっちに来いよ」

木村農園ー
木村「善は急げ…と言いますからね」
  「わかりました…仕事を片付けたら出ます」
  「日の出の頃には着くでしょう」

レストラン「月光」ー
久保田「了解!」
   「気を付けてな」
久保田、スマホを切り村木に。
久保田「つうことで、村木さん…」
   「話の続きは木村が来てからな」
   「せっかくだから…今日はここに泊まればいいよ」
   「明日の朝、魚を釣りに行こうぜ!」
村木「はあ…つ、釣りですか」
久保田「釣りたての魚と木村農園の産直野菜で、最高の朝食をごちそうするから!!」

ーーーーー

夕暮れ。隅田川…。
浅草・隅田公園ー
所長、スマホを片手に。
所長「おお、そうかい…」
  「依頼者が、そう言ってるんじゃ仕方あんめえ」
  「今夜はそこで、のんびりして来い」
  「…だが、決して仕事を忘れるんじゃねえぞ」
所長、(ピッ)とスマホを操作。
隣に座る土岐に。
所長「ウチの若い衆〈し〉…村木ってんだが」
  「この稼業〈しのぎ〉の、酸いも甘いも知り尽くしてるおめえさんに」
  「もう一皮剝いてもらいてえんだ…」
土岐「…」
所長「土岐ちゃんよお…」
  「…オレもおめえさんもこの先、そう長くはあるめえ」
  「もしかしたら、最後の大仕事になるかもしれねえ…」
  「この仕事、手伝う気はねえか…?」

ーーーーー

夜。海、月…。
レストラン「月光」ー
店内。満員の客。
厨房。エプロン姿でフライパンを振る久保田。
カウンター席の隅で、居心地悪そうにビールを開ける村木。
テーブル席。厨房の久保田にビールの空き瓶を掲げる客。
愛想笑いの久保田、手が離せない…。
立ち上がる村木。
上着を脱ぎYシャツ姿になり、冷蔵庫からビールを出し客の元に持って行く。
厨房に入る村木。
久保田と会話を交わす。
親指を立てる久保田。
エプロン姿の村木…。

ーーーーー

夜。隅田川。
ライトアップされた吾妻橋…。
向かい合う土岐と所長。
土岐「オレは…」
  「もう一度あんなLiveが見たくて」
  「用もないのに…まだ、生きている……」
所長「ん…?」
土岐「アンチェイン蜂須賀の消息は、大いに興味はあるが…」
所長「…」
土岐「この…探偵という仕事を」
  「“義理人情”と“心意気”だけでやってきたオレのやり方は」
  「…もはや、通用しない世の中になったんですよ」
所長「…!?」
土岐「アンチェイン蜂須賀が見つかったら、教えてください…」
  「…サインをもらいたい」
所長に背を向け歩き出す土岐。吾妻橋を渡る。
所長、土岐の背中に。
所長「土岐ちゃーん!」
  「長生きしろよ~ッ」
土岐、一瞬立ち止まり、振り向くことなく片手を上げて。
土岐「野村さんも…」
吾妻橋をバックに苦笑する所長。
所長の声(…だから、それは禁句だぜ)
※このシーン
『ハード&ルーズ』FILE11「蜜の味」オマージュ…。

ーーーーー

レストラン「月光」ー
閉店後のテラス席。
月に照らされ、缶ビールで乾杯する久保田と村木。
久保田「サンキューな、村木さん…助かったよ」
村木「いえ…」
  「なぜ…ワンオペでやられてるんです?」
  「アルバイトでも雇えばいいのに」
久保田「う~ん…毎日忙しいわけじゃないし」
   「もともと趣味で始めたようなもんだから」
   「一人でやってた方が気楽なんだ」
村木「…」
久保田「いざとなったら、村木さんみたいに」
   「お客さんが助けてくれるしさ」
村木「なぜ、この場所なんです…?」
久保田、遠い目をして浜辺を見て。
久保田「昔…昔この場所に、鯨のモニュメントがあったんだよな…」
久保田、口を塞いで。
久保田「おっと…続きは木村が来てからね」
苦笑する村木。(ふ…)
村木「蜂須賀氏は、どのような人物だったのです…?」
久保田「難解だったけど、ホントはただのアホで…」
   「…子供みたいに単純〈シンプル〉なヒト!」
村木「もし…一言で表わすとしたなら?」
久保田「う〜ん…」
回想カット。砂漠の中を行く蜂須賀…鋭い目付き。
風…。(ビュウウウ)
字幕・久保田の声《“異邦人”…かな》

海。夜明け前の薄明…。
テラス席。爆睡する久保田と村木。テーブルにはビールの空き缶が多数。
「プゥ〜~ッ!」
店の前。クラクションを鳴らす2tトラック。
運転席にはトラック野郎…木村。
テラス席。寝ぼけ眼の久保田&村木。
久保田「ん…んん〜」
村木「…」
久保田、飛び起きて。
久保田「あ…木村だ!」

店裏口。停車するトラック。
久保田が駆け寄る。
久保田「木村、お疲れ~!」
その後ろから、村木が眠そうに歩いて来る。
村木「…」
荷台から段ボール箱を出す木村。
木村「お待たせしました、久保田さん」
  「木村農園自慢の産直野菜をお届けに来ました」
久保田「いつも悪いな…」
   「この産直野菜が、ウチの店のウリでもあるからな」
照れる木村。
木村「へへへ…そう言って頂けると、私も作り甲斐があります」
久保田「よし!」
   「それじゃあ…“荷物”を積んで」
   「早速、海に出ようか…」
村木(“荷物”…!?)
久保田「村木さん…海に出るけど着替えなくていいの?」
村木「わ、私はいつも、この格好なので…」
久保田「じゃ、荷物を積むまで少し待っててよ」
村木「はい…」
店内に入って行く久保田&木村。
立ち尽くす村木。
村木「…」
久保田と木村が、二人掛かりで“荷物”を持って出て来る。
“荷物”…それは全長2mほどの大きなタヌキの置物…。
ぽか~んとする村木。
村木「…?」
トラックの荷台にタヌキを積み込む二人。
二人「せーの!」
荷台にはもう一つ、同じ大きさの布袋様の置物がベルトで固定されている。
荷台に乗る二人。
タヌキをベルトで固定する。
それを見ている村木。
村木「…」
久保田と木村、荷台から降りて。
久保田「準備OK…出発しようぜ!」
発進するトラック。
ハンドルを握る木村、真ん中に久保田、助手席の村木。
夜明け前…。月明かりの下、海辺のワインディングロードを行く2tトラック。
※ラストコマ
久保田・木村を窺う村木。
村木「………」



「第五話・夜の盗賊団(前篇)」END

「第六話・夜の盗賊団(後篇)」につづく

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