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【ファーニホウ】今日行ったコンサートの感想:令和04年(2022年)05月24日(火)【アンサンブル・モデルン】

ブライアン・ファーニホウ <Brian Ferneyhough> (1943 -)

想像の牢獄 第1番 <Carceri d’Invenzione I> (1982)
イカロスの墜落 <La Chute d’Icare> (1987~88)
コントラコールピ <Contraccolpi> (2014~15) 日本初演
クロノス・アイオン <Chronos-Aion> (2008) 日本初演

 オール・ファーニホウ・プログラムを、アンサンブル・モデルンの演奏で。最高の拷問。新しい複雑性を喰らえ。全てに言えるのは、騒音の洪水がとても恰好良いということ。ザワザワガチャガチャした音響に身を委ねるしかない。とても心地良い。一番前の席で聴いていたので、奏者の動きが良く見えた。打楽器は見えなかったけどね。室内楽なので全てがソロ楽器と言え、特殊奏法も含めた超絶技巧が求められる。コントラバスも高音を弾くぞ! 微分音がガンガン出て来ますが、ハーモニーを聴く曲ではないので、耳に不快ということはなかった。訳の分からない拍子を振る指揮者が大変そう。カチカチではなく、とても流動的な振り方をしていました。私が現代音楽を誉めるときに使う言葉、スペクタクル、スリリング、エキサイティング、全てがそこにあった。ハッピー・ハロウィン!!!
 解説はこちら。https://twitter.com/operacity_hall/status/1528692232483635208

 『想像の牢獄 第1番』はピラネージの銅版画から。発想記号が <brilliant and vulgar>「華やかに、そして下品に」で、もう惹き込まれる。最初からクライマックス。いきなりフラッターツンゲのピッコロの高音とトロンボーンの低音で始まる。トムトムが雷鳴のよう。解説に譜例が載ってるんですが、3/12拍子とか4/10拍子とか出て来るんですけど、は? 12分音符? 10分音符とは……? 「機械のように正確に」というわけではなく、軟体的・流動的である為にそういう書き方をしている(らしい)。オーボエ、ホルン、トランペットが譜面台にトライアングルを吊るしてそれも担当していました。最後の方は音響が減衰して行って終わりました。
Jurjen Hempelらの演奏 https://youtu.be/iRBanx1X_T4

 『イカロスの墜落』は伝ブリューゲルの絵画から。CDもいろいろ出てるし、ファーニホウの中ではメジャー曲。クラリネット・ソロが高音から低音まで縦横無尽に飛び回る。そんな細かい音の動きでそんな音域跳躍してたら死んじゃうよ。それでも吹き切る奏者が凄い。フルート奏者が、普通のフルート、ピッコロ・フルート、アルト・フルート、バス・フルートを持ち替えて吹く。低音はやはり聞こえませんね。最後に突然猛烈なボンゴがポコスコ現れて、独奏クラリネットがふわっと昇って行って終わってしまう。
Madison Greenstoneらの演奏 https://youtu.be/Q3qd0hA7vMA

 『コントラコールピ』はイタリア語で「反動」という意味だそうです。絃楽四部が、第2ヴァイオリンが無くコントラバスがあるという編成。それに木管五重奏。打楽器、ピアノ。金管楽器がホルンしかいないけど、大変力強く存在感があった。やったー! オーボエの倍音だー! やはり現代フルートは尺八のようにムラ息で吹くと恰好良いと思う。フルートはこの曲も各種持ち替え。吹き口を舌で打っていました。ヴァイオリンはG線でギーギーやってくれると粗野で良いですね。ノン・ヴィブラートを要求されますが、緊張で手が震えちゃうと思うよ。ラチェットがガリガリやってましたが、あれは楽音を鳴らす楽器なんですかね? ピアノのセリーのきらめきが本当に美しい。力強い塊になるとそれもまた恰好良い。ピアノ奏者がグランドピアノの胴体を叩く。外枠や譜面台をコツコツ、鍵盤の下をアッパー。グランドピアノの隣に持ち替えでYAMAHAのキーボードが置いてあって、微分音で調律されているらしいが、よく分かんなかったな。スチールドラムも楽器の持つ背景が強過ぎて、え? 何? 南国? ってなってしまった。無調のカリブ海。ファーニホウとしては「エイリアン的」な音響を狙って使ったって解説に書いてあったよ。カウベルと乳首ゴングもそうなんですかね。小さなガムランのような打楽器。最後は木管楽器の一体感のあるハーモニーで終わった。そんな終わり方するんだ。
初演団体Talea Ensembleの演奏 https://youtu.be/AjlRZoQ8dBw

 『クロノス・アイオン』は時の神クロノスと永遠の擬人化アイオンが連なったタイトル。どういうこと? 時間芸術である以上、時間というものを突き詰めて考えることになるのだろうけど、ファーニホウの考えは難しくて何言ってるか分からないです。君は無調のハープを聞いたことがあるか。ハープは途中、調絃に用いる金具を使って絃をピヨンピヨンしていました。鮮烈なトム・ソロがありました。いや、打楽器奏者2人でしたが。ソリだね。ピアノは内部に手を突っ込み、絃の残響を消して低音をボツッと鳴らす。シロフォンをグリッサンドするとどうしてもハ長調のスケールが鳴ってしまって、それが大変コミカルに響くんだけど、本当にそれで良いんですか? クラリネットとファゴット(コントラファゴット持ち替え)がいながら、バス・クラリネットがいて、それが更にコントラバス・クラリネットに持ち替えをする。時たま訪れる全休止の緊張感。最後の終止は、全休止か? まだ続くのか? 終わるのか? といった読み合いの末、指揮者が緊張を解き、あ、終わったんだ、と分かり、万雷の拍手。30分聴き切ったぞ!
Ensemble Lineaの演奏 https://youtu.be/3hAWN4HF3SQ https://youtu.be/qVplHKrzFwY

 メロディというものがひとつもありませんでした。素晴らしい。