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ナウシカの話をさせてください

アニメ版ナウシカだけを観て考えたことをまとめておきたい。他人とナウシカの感想を話したことがない純度100%の個人の感想を残しておきたい…漫画原作を読む前に…!

頭に「感想:」と付けているブロックは本当にただの感想なので読まなくていいです…。

蟲との対話

対話能力

腐海で王蟲の抜け殻を見つける。目の殻をくり抜いて胞子が止むのを待つ。何かに気づいた様子で立ち上がる。このとき視聴者には一切の情報を与えず、ナウシカだけが何かに気づいている。

感想:原作ではテレパシーのような声が聞こえるのだが、アニメではあくまでナウシカにしか聞こえない表現をとってくれた。ありがたい、ナウシカに人智を超えた能力がある「かも?」と視聴者には匂わせ程度に収めてくれて助かる。

蟲藪を腐海のある酸の海の対岸へ誘導すると王蟲が迎えに来ている。飛行中に蟲藪が他の蟲を呼ぶような素振りはなかった。

お迎え王蟲はナウシカの気配に当てられてやって来たのではないか。実は原作のあのシーンでは王蟲が喋っている(!?)。しかし我々視聴者にはあくまで「王蟲が何か言いたげだ…」としか思わせない。

感想:マジで助かる。すべてを神視点から見せてもらってる視聴者さえナウシカの領域には到達できない一般人であることを突きつけてくるの。めっちゃナウシカが神に愛された子みたいな描き方するじゃん…。(この解釈はのちほど覆るのですが…)

王蟲と他の蟲の違い

王蟲が近くにいればすぐ気づけるのに、ラステルと巨神兵を乗せた大型船に取り着いていた蟲藪には視認するまで気づかなかった。

他の蟲より王蟲の気配の方がナウシカの意識に近いのか、王蟲は他の蟲たちとは何か違うのかも知れない。

アスベルのガンシップがトルメキアのバカガラスを沈める。バージのワイヤーを直しに腐海の深部へ不時着。水底から王蟲が上がってくる前に気づく。その描写のあと水中の王蟲が水面に顔を出す。

王蟲の何を感じ取ったんだ…?

ブリッグから発艦後ガンシップと合流。コルベットと戦闘後ガンシップで雲の上を爆速で駆ける。核戦争後1000年なので人工衛星は落ちてるしそもそも電子機器は生きていないのでGPSは使えない。
目を閉じ神経を集中させ何かが「近い」ことを悟る。

風の谷が「近い」のでなく何か大きなエネルギーを感じ取ったと思われる。

王蟲の幼生がペジテのポットに釣られている。その構図とSEが、幼少期のナウシカが王蟲の幼生を父親に取られるシーンに似ている。(個人の感想)そんなんナウシカもミト爺も嫌な思い出やんなあ。

あのシーンでミト爺がナウシカより強く激昂したのは、蟲を痛めつけることの恐ろしさをよく知っているからだと思われる。蟲も生き物なので大切に扱わなきゃいけないよ〜ということじゃないはず。

感想:とはいえジルや城おじたちが、ナウシカが匿っていた王蟲の幼生を確実に殺したとは言い切れないと私は考えている。蟲を殺すことの恐ろしさを谷の人たちはわかっているはず。成虫に見つからないよう苦しまないよう殺してくれたか、森に帰したかじゃないかと思う。
王蟲の触手で補完された際(触手ぐるぐる巻きを補完って呼んでます)「あのとき助けていただいた王蟲です〜!」て言うてるようにも見えたから…(個人の感想)
もし補完してきた個体がナウシカに匿われた個体じゃなくても王蟲同士の触手補完で記憶の並列化してるだろうから、助けてもらったこと自体は王蟲群が覚えてると思う。王蟲ってタチコマみたいなもんちゃうかな〜とも思ってる。

軍人として

クシャナを生かした理由

バカガラス四隻大破、ガンシップで脱出。このとき格納庫を見下ろして不敵に笑うクシャナに「来い!」と命令する。これは提案でなく命令だった。

第四皇女であるクシャナはトルメキア本国の権力争いにおいて疎まれていたのであわよくば辺境で戦死してくれればと思われていただろうことはナウシカもわかっていたと思う。しかし風の谷の指導者としては彼女を生きて帰さないとトルメキアからの報復もありうることを危惧して、彼女には生きていてもらう必要があった。自分たちだけ生きて帰ったら余計に報復の口実を与えてしまいかねない。

感想:ペジテのちいちゃいガンシップ一隻に大型船全艦撃墜され司令官戦死なのに風の谷のガンシップだけ帰還という屈辱的な報告より、風の谷による司令官謀殺という報告を本国に上げる方が、トルメキアが諸外国に舐められなくていい。そもそもクシャナ亡きあとクロトワが本国にどう報告するか、風の谷をどう牛耳るかわかんないもんなあ。こわ。

バージを救出する理由

バージを救出しにガンシップで腐海へ降りる。バージの搭乗員は亡くなっても惜しくないというナウシカの人選であったが、それでもマスクを外してまで命を賭して救出しに行った。

なぜか?「誰も死なせたくない」というのはもちろんナウシカの本心だと思うが、バージの右翼からメーヴェを取り出した時に鳥肌が立った。「この子はどこまで行っても軍人なんだ…」と思って泣いちゃった。

というのも、核戦争から1000年後のあの世界ではエンジンを作る技術が失われているので飛行機の希少価値は非常に高い。そしてバージにはエンジンが積まれていないがメーヴェにはエンジンが積まれている。メーヴェを失うわけにいかなかったというのが理由として大きいのだということに気付かされて泣いちゃった。

人間として

殺戮

風の谷で燃え尽きたトルメキアの大型船の乗組員を弔う最中、コルベットが城に着艦、父親を殺される。図らずも昨夜ユパ様を交えて団欒していた寝室で遺体を辱められている現場を目撃し激昂、大婆様と父親の遺体の前で次々と殺戮を行う。

ここまで谷の人々と和気藹々と暮らす彼女を見てきた視聴者にいきなりこれ。トルメキア勢はきっと谷の誰も見たことがないだろう軍人としてのナウシカが第一印象に刻まれるはず。本当は心優しいみんなの姫様なのに…

感想:話ずれるが…このシーンでナウシカとクロトワが刃を交える。クロトワは部下が次々殺されていくのを見て、この女を殺すことより身を守る方が先決と思い、切っ先を向けていたのを刀身が直角に交わるようにして鍔迫り合いに持ち込もうとした…ように見えた。結局刃が砕かれ頭打って気絶。このときも本当に気絶したとは思えない。あの場面においてナウシカは敵を確実に殺すことより、目の前の人間すべてを行動不能に持ち込むことに集中していたように思うので、それこそ狸寝入りで機を伺ってたと思う。

クロトワはそう言う男なんですよ!!!(何?)
クロトワについても色々言いたいことあるんで後日記事にするかも…限界オタクの解釈語りでしかないが…

死を悼む余裕もない

武器を取り上げ戦車の上で腐海を焼き払う演説を行うクシャナ。大婆様により父ジルの死を谷の全員が知るところとなる。谷のみんなも怒ってくれているが風の谷では戦士を育てる余裕などないので、皆殺しになるのが関の山。父亡き後の政治指導も教育されていたナウシカが事態を収める他ない。

谷の人々にとって、殺されたジルの実娘であるナウシカがこれ以上楯突かないで欲しいと懇願する様子はもう耐えられないだろ。そんな彼女がトルメキアに従うと言ったら、どんなに心の整理ができていなくともそれに倣う他なすすべない。私も泣いちゃったもん。ひでー話だよ。

ナウシカは神なのか?

ペジテの残党狩りに連行され、父を殺したクシャナを(政治的理由とは言え)救い、自分まで殺そうとしたアスベルを救いに命を賭し、谷が全滅させられると知りながら手も足も出ず、コルベットに襲われるブリッグに戻ることもできず、ポットの乗組員に対話を求めるも機関銃を向けられ、王蟲の幼生を酸の海に入れまいと足を犠牲にし…最期は…マジ耐えらんねえよ。(もちろんこの道中でいいこともたくさんあった。腐海の生まれた理由を知り、ペジテの女性たちに助けてもらって、王蟲の幼生とも仲直りできたし)

ただ私がここで言いたいのは!ここまでひどい仕打ちに遭ってなお一人の女の子として生きることが叶わなくても、迫り来る王蟲の大群を前にしてなお対話の姿勢でいたことがいかに異常であるかということ。異常なんですよ…人間なのに…

ナウシカ自身は決して利他的サイコパスでも、心を殺した為政者になったわけでもない。心優しい女の子がなぜあんな肝が据わったどころでない真似ができるのかと言うと彼女が神に近い存在だから…と思うじゃん!?

原作では特に不思議な力を持つ少女として描かれているので神に愛された子なのかな〜?神の奇跡なのかな〜?と思ってしまう。けど、あくまで彼女は一人の人間なんですよね…。

どちらかと言うと神の力的なものは王蟲に感じる。無駄にでかい図体、謎触手による補完、傷の治癒。チートじゃん。そんな王蟲がナウシカを選んだのだと私は思ってこの二十何年間ナウシカを観ている。

神に近い人間が、あわや神になる!?というところで人間の座に引き留めてくれる存在(アスベル、ユパ様、谷の人々、クシャナ殿下…)がいるという「あくまで人間の物語」である姿が私には退廃的で美しく見えた。

いっそ神になって王蟲を制御してなんでも思い通りにしちゃえば…!?というところを、一人の女の子になれなくても、戦争が絶えない世界でも、神話の金色の草原から人間界へ帰って行くナウシカが好きだ。人々に温かく迎え入れられて帰っていくラストが一番美しいと思う。

結論

ナウシカがどれだけ神(王蟲)に愛されても人間として人間のそばで生きていたい女性であるという様。
人間からすれば神に近い存在として人としての幸せを得られず、神からすれば人間に堕ちたとも言える、その危ういバランスで保たれている彼女という存在の儚さが美しいと感じる。

この独自の解釈が崩れるのが怖くて、原作を読む前に今まで築いてきた観点・解釈をメモとして残しておきたかった。ナウシカについてはエヴァ同様まだまだいろんなこと考えてるのでまた記事として残したい。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

自分語り(読まなくていいです…)

物心つく前から人生で初めて「観た」アニメがナウシカだった。言語を理解するより前からずっと観ている。と言うか父親の趣味で録画ビデオをめっちゃ観せられてた。いつCMが入るかまで覚えてるからその記憶だけはマジで邪魔。

一年に何度か見直しながら大人になって、今ではアニメ監督沼にハマり、BDで何度も見返している。旧作エヴァとローテしながら二ヶ月に一回くらい観てる。本当は月一で見たい。整うので。

そうして漫画版にもいよいよ触れねば…と原作を購入したものの、アニメ版だけを観て作ってきた自分のナウシカ像はもはや人生の軸になっているので、思ったこと・感じたことをとにかく書き残しておきたかったんだよな。漫画原作を読む前に…とはいえ漫画第一巻だけ読んじゃったんだけどねえ。