Untitled

わたしは、雨に打たれていたかったのです。
もっと前から、花や木々や石ころと同じように、この皮膚は、雨粒を受けるべきでした。
冷えてしまうよ、と、幾度もやわらかいタオルで包まれ、傘をいただいたけれど
ずっとずっと、わたしのたましいには静かな灯があって、冷たい雨の中でこそ、それは熱く鮮やかに燃えるのだとわかっていました。


曇り硝子に描いた人間の顔が、涙を流しました。そうして気が付きました。今まで、忘れてしまっていました。

雨のない日でさえ、海のなかの魚たちはきらきら、その銀色を深めているでしょうに、わたしといえば、しょっちゅう屋根の下でお留守番をしていたのです。
なんだか水のようになれる気がして、走り出しました。足がもつれて、血の味がしてきたら、わたしは、わたしにある光を見ることができるでしょうか。

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