見出し画像

映画『花束みたいな恋をした』

配給がリトルモアと聞き、アンテナが反応したのと、ここ数年仕事が忙しすぎて映画を欲していたこともあり観に行きました。気にせず書くため、ネタバレしていることもあるでしょう。これから観る方はご注意くださいませ。

恋愛映画が苦手な私

学生時代、邦画をレンタルしたり映画館で観たりと、邦画に浸かっていました。しかし薄ピンクできらきらしたパッケージの(DVDをレンタルしていたので…時代…)恋愛映画は選んでいませんでいた。ちょっとシュールだったり日常を淡々と描いたような映画を好んでみていました。しかし『花束みたいな恋をした』はタイトルにも恋の文字が入っているようにおそらく恋愛映画。でもなんだかアンテナが反応するんだ…!と思い映画館へ行きました。

出てくる言葉やカルチャーが刺さる

映画中前半に出てくる菅田将暉さん演じる麦くんと有村架純さん演じる絹ちゃんの好きなカルチャーが私も好きなものが多くて、刺さります。しかも学生時代に付き合っていた人が私と音楽、文学、映画、服、趣味が共通していたことも思い出され、「うわー!!!!」と古傷をえぐられます。そうそう、好きなものが似ているけど少しずつ違うから好きなものの範囲が広がっていったんだよな…(古傷痛む)。

菅田さんと有村さんの演技

全体的に文学的な話し方が好きです。ずっとこういう話し方なのかな?と思いつつ観ていました。そして出会った頃のぎこちない話し方、たどたどしくお互いを探る…ような距離感など、あるある、わかるよ…と思いました。でも2人は(脚本であることは百も承知ですが)、きちんと思いを言葉にして伝えているので良い関係性だなと感じました。時間の経過とともに変わる話し方や表情、身体的な距離、そして徐々に離れる精神的な距離の取り方を演技で表現していて、さすがだなぁの一言です。

菅田さんの、意識高い系の本コーナーに行っちゃうとか、パズドラしかできない精神状態とか、逆切れのように結婚しよ?!?!って何回も言っちゃうとか、自分は体験していないけど、社会に出てすぐの必死な(異常な)精神状態の感じはなんだかすごく共感できる。いきなり荒波にぽんと放り込まれて受け止めて消化しきれないのだよね、きっと。それまで親しんでいたカルチャーも楽しめないほどに摩耗している精神状態なんだよね…わかるわかるー!って思いながら観ていました。なんか、結婚したらそれがゴールで幸せを受け取れるんじゃないかって勘違いしてしまうくらい心が追い詰められているというか…。菅田さんの半ば逆切れプロポーズのときの目とか、正気じゃない目が、演技うまいなぁさすがだなぁと。そして聞けば聞くほど冷めた顔つきになる有村さんの表情の演技もさすがです、ほんと。

そして人生は続いていく

恋をして、その人と一生一緒に暮らしていく人生もあれば、別の道を選んでいく人生もある。私も古傷というくらいなので、別の道を選びました。ただその恋が終わったからといって、物語(人生)は終了、ではないのですね。その人の人生はまだまだ続いていく。麦くんのイヤフォンだって、絹ちゃんからのプレゼントだったし、好きな作家が作品を書いたら購入して楽しむだろうし。

『花束みたいな恋をした』の「花束」って、どんな花束なんだろうと思いを馳せます。個人的にですが、ゴージャスな花束ではなく、小さめの花が多めでグリーンも入っているような、家のインテリアに馴染むような花束なんじゃないかなぁと思いました。かつての自分がそうだったように、人との出会いで自分の人生の彩り(花)が広がった。その人との別れで一気に私の世界は無彩色になったような気持ちになったけれど、それでも自分が好きになった世界は存在していて、また私の世界に色彩を与えてくれた。そして好きなものたちが支えになり、新たな人生の歩みを進めてくれました。

最初はデートムービーだったらどうしよう…などなど思いつつ観に行った映画でしたが、ふり返ってみれば現在30代の自分の、20代前半くらいの恋愛を成仏してくれる映画でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?