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「本に埋もれて死にたい」と言った後輩に憧れる理由

読書録:「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(三宅香帆)

今週、会社の転勤で3年目の後輩が隣の席にやってきた。スタッフのお姉さんに「京都出身沖縄顔の鈴鹿央士」と命名されていた。聞けば、修士卒の文化人類学を研究して、未だに働きながら学会発表しているという。すごすぎる。

仕事の話の流れで、図書館の話になった。
マスメディアで働く身としては、ネタ探しのために、図書館がものすごく重要。新聞、郷土資料含め、あらゆる分野を網羅でき、「先行研究」が大量に眠っている。ふだん働いている大分市は、かなり図書館が充実している。会社から、わずか自転車10分圏内に、県立図書館と、市立図書館が2こあって、転勤3回目にして一番会社から図書館が近く+多い。さらには、自宅から図書館も徒歩5分で人生で一番近くて、乱舞した。
「大分の文化レベル高いよね」という話になったついでに、彼の好きそうなおもしろい書店やブックカフェを何軒か紹介したら、「もう行きましたよ~」と言う。購入したての、分厚いおもしろそうな紀行ものと、私は手が伸ばせない障害者運動の歴史を綴った本を何冊も出してきた。「よく本読むんやね~」と言ったら、「僕、本に埋もれて死ねたら本望です」と言い切った。おもしろい子が来たわ。そんなこと言い切れる人に憧れる。

ちょうど今、毎朝の通勤電車で「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読んでいる。毎年年間100冊読みたいと新年の抱負を記すも、今年もあと4ヶ月でおよそ20冊ぐらい。まさに「本が読めてない」。

本書の概要としてはこんな感じ。

【人類の永遠の悩みに挑む!】
「大人になってから、読書を楽しめなくなった」「仕事に追われて、趣味が楽しめない」「疲れていると、スマホを見て時間をつぶしてしまう」……そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないか。「仕事と趣味が両立できない」という苦しみは、いかにして生まれたのか。自らも兼業での執筆活動をおこなってきた著者が、労働と読書の歴史をひもとき、日本人の「仕事と読書」のあり方の変遷を辿る。そこから明らかになる、日本の労働の問題点とは?すべての本好き・趣味人に向けた渾身の作。

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本の内容を簡単に要約すると、こんな感じ。
読書=自分から遠く離れた文脈(ノイズ)にふれる行為であるが、
情報化社会…より効率的に必要とする情報を入手すること◎
+自己決定・自己責任の社会で「仕事で自己実現すること」ことが視
⇒ノイズを含む読書に裂く時間も体力も気力もなくなっている

「情報」と「読書」の違いは、ノイズが記されているかの違い。

SNSやYoutubeでの情報や、「情報社会の中で識者と言われる人たち」の言っていることがなんだかうさんくさくて、浅そうで、好きになりきれない理由が少し言語化されたような気がした。

今週、会社の別の後輩とこんな話しをした。
Youtubeとかで知れる「情報」は、自分が知らないことがたくさんある一方で、自分がどういう方法で、どういう分野が好きで、どういう情報を得て、その先にどう物事を思考したいのか、好みが違うにすぎないということ。

最後に、本書では、「本を読むためには、『全身全霊で働けない奴なんてダメだ』と言うような社会から脱却したい」というメッセージが込められていた。「全身全霊で働けない奴なんてダメだ」ってほんと思っているし、ほんと本は読めないんだよな苦笑。難しい。

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