石油王って誰のこと? 〜石油開発業界のプレーヤー達〜

前回の記事では石油開発とはどういう仕事かをお伝えしました。
今回は石油開発業界はどういった会社や組織で成り立っているかを説明し、世に言う「石油王」の正体を明かにしていきます。

石油開発業界を構成する会社や組織は以下があります。
・各国の政府組織
・国営石油会社
・独立系石油会社
・サービスカンパニー
・コンサルティングファーム


以下で一つずつ見ていきます。

・各国の政府組織
日本で言うところの資源エネルギー庁で、各国にそれぞれの呼称で存在します。その国の石油の採掘に関する様々な規則を定めています。
地下に眠る石油や天然ガスは一部の例外を除き、基本的にその国の資産になります。産油国ではその国の資源を開発するには国内の人員では足りない為、多くの場合国外の会社に開発させ、政府組織がそれを見張るという方式が取られます。

・国営石油会社
政府系の石油会社です。石油開発に関する技術力を持っており、政府の右腕となって実作業に当たります。有名なのはサウジアラビアのサウジアラムコ、日本では政府の影響力はそれほど強くないものの、INPEXやJAPEXがこれに当たります。

・独立系石油会社
政府の資本とは無関係の、独立した石油会社。アメリカのExxon Mobilが世界的に有名です。日本ではJX石油開発や三井石油開発がこれに当たります。独立系会社同士は一見ライバル関係のように見えますが、事業のリスクが非常に大きい為、リスク分散の目的で多くの場合恊働で事業をします。

・サービスカンパニー
国営石油会社や独立系石油会社は、実は井戸を掘削する為の設備や、生産の為の設備を自前で持ってはいません。外部のサービス企業の資材や技術を借りる事で初めて井戸の掘削や生産活動を行います。石油会社の仕事はより本質的な、どこに井戸を掘るかやどのような生産計画を立てるか、という部分になります。

・コンサルティングファーム
石油会社が高度な分析や重要な計画を立てる際に、代わりに作業を行なったり、アドバイスや人材派遣を行います。世界的に有名なのはフランスのSchulumbergerという会社。 またフリーランスの個人コンサルも存在し、不安定な雇用形態ではありますが年収が一億円を超える事は珍しくありません。

以上、石油業界のプレーヤー達を紹介しましたが、石油王はいましたでしょうか? 「石油王」というと、アラブの白装束に身を包み、油田を所有し財を成した人というイメージが一般にあると思いますが、結論から申し上げてそのような人は存在しません。 確かにアラブの国の人は一般人でもお金持ちですが(特にUAE人)それは石油で潤った政府から富の分配を受けているからであり、個人で油田を所有してはいません。油田は中東では国の物であるので、そういう意味では王族達は石油王のイメージに最も近いですが、それでも個人で油田を所有してはいません。 
なぜこの様な事実と異なるイメージが日本で一人歩きしているのかは、未だによく分かりません。


逆にアメリカでは地下資源はその土地を持つ個人の所有物になるので、例えば地下にシェールオイルが眠っていた事が判明し石油会社に土地を売却する事で財を成した人は大勢居るはずです。その意味ではアメリカにこそ石油王はいる(白装束では無いにせよ)と思います。





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