見出し画像

UN JARDIN APRES LA MOUSSON

画像1

エルメス 、モンスーンの庭
直訳すれば「モンスーンの後の庭」。


きゅうりである。瓜系である。
控えめに言ってメロンあるいはすいかである。
最終的にはセロリのにおいすら感じる。
…青くさい。
それのみならず胡椒、唐辛子、生姜、コリアンダー、カルダモン、シナモン、ナツメグ、クローブ??
スパイシーである。

世の香り好きな人達のことは唸らせたらしいが、まったくもって万人向きではない。
こう言ったらまるで通好みの香水のように聞こえるが、口の悪い人はひと言「カレーのにおいじゃん。」と言い放つと思う。
「『ナイルの庭』で儲けたエルメスがこのトワレで大ゴケした。」とひそやかに噂されるのがうなづける。

瓜系だから水分を感じさせるにおいなのはもちろんだが、みずみずしいのと同時にドライな印象でもあるのだ。
瓜系のにおいは大の苦手だが、このぴりっとしたドライさが他の瓜系フレグランスとはまったく異なる印象を私に与える。
複雑さが心地よい。

調香師のジャン・クロード・エレナは南インドのケララの風景をイメージしたと言う。
香辛料のにおいで暑い夏の吹き付ける熱風と熱く乾燥した大地を、瓜のにおいで南インドのすばらしく美しい海と南国特有の激しく叩く雨、その雨が降り止んだ後の強い日差しが落とす濃い影と鮮やかで湿った大地を現そうとしたのではないかと思う。
まさに「モンスーンの後の庭」だ。

女性が好みそうな甘さやかわいらしさが微塵もない。
ユニセックスに使えはするけどどっしりとしたスーツが似合うような恰幅の良い大人の男性からこんなにおいがしてきたら、私だったらいろいろ考えてしまう。
だからこのにおいに対する私の印象は
「頭の良い男の子みたいなにおいだな。」
である。

湿っているけどじめじめしていなくて、乾燥してるけどひりひりするほどではない。
アンバランスを逆手にとったどちらにも傾き過ぎない絶妙なバランス。
雨に冷やされた熱い土の上をひんやりと吹き抜ける涼風のようなにおい。
暑い夏に「纏う」のが正道だろう。
だが、私は夜眠る前に自分の体に吹きつけることにした。
こんなふうに複雑な印象の男の子が好きだから。
一筋縄ではいかない男の子と眠るのだ。
…これは私のにおいではない。

メモ
トップノート:瓜すぎる瓜からのスパイス香
ミドルノート:水気を切ったあっさりしたメロン
ラストノート:ほのかににおうくだもの香
持続時間は3〜4時間。庭シリーズの中では長い方かも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?