日々反省~追憶と悔悟

「このサルは自分が環世界を作り上げることのできる存在であることにやがて気づくことになる。この生物はその役割が、実際役割であること、他の生物には他の役割があり、異なった種類の環世界を持つこと、世界は環世界とは別物であること、死んでしまえばその生物が持っていた環世界はなくなってしまうが、世界はそのまま続いていくことに気づいた。要するにこの生き物は世界から自分の実存を分離して認識することを可能とした。

もしまったく無防備であったならきっと発狂していただろうが、幸いなことにこの実存という恐ろしい発見をする前に、他のよく似た生き物と共感できるという才能を発達させることにより、この生き物は自分を保護することに成功した。この共感する能力のため、この生き物は他に全く前例のない類の結びつきを互いに創り出すことを可能にした。すなわちお互いの環世界を共有することにより双方向の絆を創るとするのがそれである。私的な経験を公共財産に変え、主観を客観に置き換えることを可能とした・・・簡単にいうとこの生き物は音声言語を発明したのである。

(ジェスパー・ホフマイヤー『生命記号論』,pp.64-65)






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