同人誌を受けとったのに送金しなかった話
だれもが人を傷つけること あると思います。そして救うこと あると思います。
2002年
2002年、女子高生だったシロウトの絵描きさん(仮にEさんとします)が、私が好きだった某テレビゲームのファンサイトで絵を披露してました。Eさんだけじゃなくいろんな人がそのサイトで絵を披露してましたが、Eさんは特に、才能豊かで楽しい絵を描いていました。
サイトで交流してる内に仲良くなり、携帯メールで少しだけやりとりするようになりましたが、彼女は家庭環境がよくないらしく、親との関係が上手くいっていないこと、そういうのがもとで援助交際してしまったことを私に告げてきました。
当時の私がそれにどう答えたのか覚えてませんが、携帯メールでやりとりしだしたばかりのタイミングで打ち明けられましたし、あんなに楽しい絵を描く人がこんなに重い話をしてくるとは思わず、私にはどうすればよいのか、私にはとても手に負えない話でしたし、次第にメールのやりとりはしなくなっていきました。
ただ、サイトで披露する絵は相変わらずユーモアのある楽しい絵ばかりで、それに対してコメントして交流する日々で、あの話は出まかせだったのかなと思うほどでしたが、いつしかお互い、その某テレビゲームのファンサイトにはじょじょに足を運ばなくなり疎遠となりました。
2004年
2年後の2004年、Eさんがどうしてるのかふと気になり、彼女のハンドルネームでググったところ、本人のつくった本人のサイトが見つかり、別のテレビゲームの同人絵を描いて活動してることを知りました。
なんと、今までに描いた同人作品を個人で郵送して販売してるとのことで、早速サイトに載ってたメアドから全作品の取り寄せを依頼しました。
メールの中で私はEさんの知ってる私のハンドルネーム「ゴル」は名乗りませんでした。本名だけを名乗りました。
ゴルのやつが今頃またやってきたよ気持ちわるっと思われるのを恐れたのと単にはずかしかったからです。
はずかしかったのは、メールの内容が、あなたがどれだけ素晴らしい絵を描くか絶賛するようなものを書いてしまったからでして、事実そう思ってたのですが、今更そんなこと書いて見られることにはずかしさしかなかったので、ゴルとは告げず本名で通しました。
後日、同人誌のはいった封書が送られてきました。
そして、送金しなかった
事前の取り決めで、送金を郵便の「普通為替」で行うことになってました。
まず郵便局で現金を小切手みたいな紙切れに替えて、その紙切れを相手に郵送して、届いた相手は郵便局で現金に戻すという仕組みでした。
私にはなじみのない送金方法でした。
送金してから本の中身をチェックしようと、まずはその日のうちに郵便局に行って1,290円分の紙切れ(普通為替証書)を発行してもらいました。
よし、あとはこの紙切れを郵送するだけだと、私は満足してしまい、なんと私は、そのまま放置して忘れてしまったのです……。
気付いた時には
気付いた時には月日が経ってました。紙切れの現金への交換期限(半年)も切れて、どんどん時が経っていきました。
最初は数日か数週間かしばらくして忘れてたことに気付いたのですが、その時点で悪魔がささやいたのです。このまま送金しなくてもいいんじゃないかと。
最悪でした。そして時間がさらに経つうちにますます送金しづらくなり、そのまま踏み倒してしまったのです。
私にとって人生最大級の後悔の一つとなりました。
悪魔
自分で自分を悪魔みたいなやつだと、今までの人生の節々で気持ちが落ち込んだ時に、特にこのことを思い出しました。繊細な人だと知ってたのに申し訳ないことしたと。謝罪の言葉を独り言で口にしたことが何度もあります。けど今更唐突に送金するのも変な話だと、罪は罪として受けとめて、とにかくEさんが気にしてないことを祈るしかない。幸せを祈るしかない。そう思って生きてきました。
未開封
送金してから本の中身をチェックしようとしてましたが、のちに生まれた罪悪感からずっと未開封のままにしてしまいました。なんと2020年の3月21日まで、16年間、未開封のままでした。罪悪感から中身を観るのが怖くなってしまったのです。
ただずっと捨てずに、手元に置いてました。
開封したのは、最近、死を意識したからです。私が死んでしまう前に身内が処分に困るアイテムを処分してしまおうと、今まで以上の断捨離を決意し、押入れにしまってた思い出の品をいじってる最中、この封書を見つけ、勢いでもって封を開けました。
一枚の手紙
中には複数の同人誌と一枚の手紙が入ってました。
手紙を要約すると、申し込みのメールに書かれてたことがとても嬉しかったこと、全作品の取り寄せに感激したこと、同人誌以外のオマケの本をつけたこと、「お代は気になさらなくて結構ですので、どうぞもらってください」と書かれてました。
感謝しかない。
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