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佐藤輝明の軌跡と未来

早いものでもう2021年も終わり。
何かやり残したことは無いかと考えてると、そういえば野球を振り返っていないなと思いました。
2021年といえば、やはり佐藤輝明の衝撃でしょう。
彗星の如く現れた怪物ルーキーが、プロという魑魅魍魎蔓延る世界で1年間どのような軌跡を辿ったか、どのような未来が彼に待ち受けているのか。データをもとに解説しようと思います。

1.佐藤輝明の年間成績と推移

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7月以降成績が悪化。怪我か各球団による研究か単純に不調なのかは不明。それでも、前半戦で20本塁打を記録するなど新人離れした成績を残した。前評判通りの怪物の片鱗は見せただろう。下記に良くも悪くも2021年に佐藤輝明が打ち立てた主な記録を記す。

・交流戦本塁打:6本 ※新人最多記録
・交流戦打点:12打点 ※新人最多タイ記録
・4番初試合で満塁本塁打 ※新人史上初
・1試合3本塁打:2021年5月28日、対埼玉西武ライオンズ※新人の達成は1958年の長嶋茂雄以来63年ぶり、球団の新人では初
・1試合5三振:2021年7月4日、対広島東洋カープ※史上19人目(セ・リーグ新人野手初)
・シーズン173三振※ワースト6位タイ、新人史上最多、球団史上最多
・新人シーズン24本塁打※左打者記録、球団記録
・59連続打席無安打※NPB野手記録(タイ記録)、セ・リーグ記録
・オールスターゲーム出場:1回※ファン投票では新人初となるセ・リーグ最多得票での選出

2.左右別成績比較とヒートマップから見る佐藤輝明

では細かく佐藤輝明を分析していこう。まずは左右でどのような攻められ方をしてどのような打球を打ったのか。

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左右投手別成績

対右投手 291打数.232 18本塁打 OPS.765
対左投手 154打席.247   6本塁打 OPS.722

特徴としては

・右投手に対しては全体的にヒットを打てている。
・左投手に対しては真ん中周辺以外をヒットにできていない。特にコーナーのヒット数は少ない。

やはり対左投手を苦にしているのは間違いないだろう。


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続いてホームランにしたコースを見ていこう。

対右では全体的にホームランにできている。一方で対左投手の投球に対しては真ん中から内角に寄っている。外角をホームランにしたことは一度もなかった。

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次は空振りしたコースを見ていこう。

・対右投手では低めとややインハイ。

・対左投手ではアウトローに空振りが集中している。

いずれにせよボール球に手を出して空振りしてしまうことが多いようだ。

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ゾーン別データと打球方向はどうか?

やはり内角を攻められているものの、真ん中から内角はよく仕留められている。全体的には低めの方が苦手なのか三振も多い。引っ張った打球が多いが、逆方向にもしっかりスタンドに打球を運んでいる。


3.PlateDisciplineと球種別スタッツ

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・対右投手ではストレートに対して弱く、変化球に対して強い。フォークに対して苦戦している一方で、カーブやチェンジアップに対して高いOPSを出している。全球種O-swing%NPB平均が30%程度であることを考慮するとストレートの平均O-swing%と比較すると相当低い可能性がある。

・対左投手では、ストレートが打てていて変化球に弱い。逃げていく球種に弱いかと思ったが意外とスライダーは打てている。スライダーの取捨選択は出来ているものの、バットに当たらないという感じか。O-swing%は低いので、真ん中付近に入ってきたものは打てているという感じだろうか。

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左投手のスライダーだけを抽出すると、甘いコースはバットに当たってるが、アウトローの投球に対してはほぼ当たっていないかファウルにすらなっていない。

全体的にやはりフォーク系の落ちる球種には弱い。前述のコース別成績も鑑みても、低めを見極めるのが課題だろう。

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変化球の芯の見極め力(忍耐力)=ゾーン内スイング率ーボール球スイング率はどうだろうか?ゾーン内外についてどれだけ適切に判別し取捨選択ができているかを測るために、ゾーン内外のスイング率の差を確認しよう。この値が大きいほど、見極めができていると言えるだろう。

・対右投手では変化球に対して見極められていない。一方で対左投手に足してはストレートを振り回す傾向にある。一番懸念されていたであろう対左投手のスライダーは意外と見極められているようだ。(打率がその割に低いが)


4.前半と後半成績比較

3/26~7/14    :   330打席83安打 .270 20HR OPS.850 

8/13~10/26   :   125打席18安打 .158 4HR     OPS.516 

後半戦は連続打席無安打記録タイを記録してしまう大失速となった。

しかし月別で見てもK%が劇的に大幅に増えているわけではない。ヒットが出ていないのは、フィールド上に飛んだ打球がヒットになっていないという可能性も考えられる。

後半の失速を調べるために前半と後半で相手チームからの投球内容が変わったのか調べてみよう。まずは球種ごとの投球割合が下図になる。

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・傾向として、後半戦はストレートが減り変化球の割合が増えた。

・対右では後半になってスライダーやカットボールなど食い込んでくる変化球で攻められることが増えた。

・対左ではチェンジアップやカーブなど緩い変化球の割合が増えた。この球種の打率は低かったので、研究されたせいと言えるかもしれない。

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前半後半それぞれのPlateDisciplineを見ると、後半戦になってContact%はやや悪化したが、O-swing%が改善した。
打率やOPSは下がったもののPlateDisciplineは改善していたので、本来ならばもう少し好成績を残していた可能性はある。


5.他球団のスラッガーと比較すると

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やはり他球団の選手の1軍1年目と比べると、スイング率は高くコンタクト率も悪い。その結果三振率が多くなっている。ゾーン内スイング率も高いので積極的にスイングすること自体が多いのだと思う。コンタクト率さえ改善すれば、来年以降の成績も担保できる気がする。
村上岡本はプロ入り2年目以降の成績なので、プロのボールに慣れるには時間がかかるだろうか?
それでも今年魅せた数々のホームランは多くのファンの心に残っただろう。やはり前半の勢いのままシーズンを走りぬいた成績を見てみたかった。


6.まとめ

・甲子園で猛威を振るう長打力はやはり魅力
・ベース板真ん中からインコースにかけてツボをもつ。低めを空振りすることが多く、右投手に対してはインハイのボール球を空振りすることも多い。
・右投手に対しては変化球に強く、左投手に対しては変化球に弱い
・落ちるボールはやはり弱点であり、今後の課題となるか
・他球団のスラッガー1年目に比べるとコンタクト能力が悪く三振率が高い。
・怪我の影響か?研究されたか?単純に佐藤輝明の不調と片付けられる話でもないかもしれない。一方でPlateDiscipilineは改善していた。来年はさらなる飛躍を期待したい。

7.参考文献

・wikipedia 佐藤輝明
・DELTA 1.02ESSENCE of BASEBALL
・SPAIA
・BB-Stat-St
・データで楽しむプロ野球
・nf3 –Baseball Date House
その他いくつかのデータはあおとらさん@bluetiger_bbにいただきました。ありがとうございました。

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