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一人勝手に回顧シリーズ#ヴィム・ヴェンダース編(12)#ベルリン、天使の詩/天使の転生

【映画のプロット】
▶︎天使の世界
子どもの無邪気な思いを乗せた、詩が、文字で書き取られ、節を付けて読まれる。

空、ベルリン市街の俯瞰。
天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)は、高いところから、地上を見下ろす。天使の羽根が消える。
街行く人々を真上から捉える。女の子が、天を仰いでいる。バスに🚌乗った子どもも古い塔を見上げる。子どもには、天使が見えるようだ。
行き交う人々。詩が読まれる。

飛行機✈️の機内。ピーター・フォークは、窓から空を見ている。元天使らしい。
ダミエルが、通路に立っている。絵を描く少女と心で会話する。
ピーター・フォークは、元天使の本人役、舞台はベルリン、どう演じようか迷っている。

カメラは、空を舞い、祖母と孫の男が暮らす、アパートの一室へ。心のつぶやきが聞こえる。
引っ越して来たらしい女、死んだ母親の部屋を訪ねる男。母が死んでも、涙も出ない。女と別れた男。ロックにかぶれた孫を持つ祖父母。
子どもをうたった詩が読まれる。ダミエルは、子どもを見守る。TVゲームに興じる子どもたち。脚が悪い眼鏡の少女。
臨月の女。寄り添う夫。ダミエルは、妊婦のお腹に手を置く。
高速道路を走る車の中の男女、老婦人、大家族、それぞれの思い。
車の🚗シートにダミエルが座る。仲間のカシエル(オットー・ザンダー)がやって来て、近況を報告。一片の詩のような、目にした人間の営みを語る。報告を求められたダミエルは、いくつかの人間の営みを報告するが、"霊として存在するのでなく、人間になりたい"とこぼす。
二人が乗るオープンカーを見たカップルが、各々、意見を述べる。
ダミエルとカシエルは、図書館に入る。仲間の天使もちらほら見える。人々のつぶやきが聞こえる。ダミエルは、女性のペンケースから、ペンを取り出す。階段を上る老人は、詩をうたっている。
ダミエルは、地下鉄に乗る。人々の思い。ダミエルは、落ち込んだ壮年の男の隣に座る。男は、少し前向きになる。
排水溝から、磁石でコインを🪙釣り上げる子どもたち。遊び相手のいない子。ダミエルは、優しく見守る。
道路の向こうに、ゾウ🦣が歩く。サーカス小屋が建っている。
小屋の中では、マリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)が、空中ブランコの稽古中。経営者が現れて、サーカスの🎪解散を告げる。カネが続かないので、今夜の公演が最後。明日朝に解散すると。モノクロの画面に、一瞬、色が付く。
マリオンに寄り添って小屋を出るダミエルは、団員に"天使"と呼び掛けられ、はっと振り返る。マリオンは、車のボンネットに、腰を下ろす。アコーディオン弾きがやって来て、音楽を奏でるが、マリオンは、トレーラーに篭る。
マリオンは、レコードをかける。単調なリズムの楽曲が流れる。マリオンは、ベッドに寝そべり、ダミエルは、ベッドの🛌端に腰をかける。
壁に貼られた写真。どうやら故郷に、息子を残して来ているらしい。
マリオンは、コスチュームを脱ぐ。ダミエルは、裸の肩に手を伸ばす。また、画面に色が付く。マリオンは、ガウンを羽織る。

跨線橋のたもとで、車とバイク🏍の巻き込み事故。バイク🏍の男は、鼻から血を🩸流し、欄干に身を預け、足を投げ出し、しゃがみ込んでいる。ダミエルが近づき、両手を頭に置いて、詩をそらんじる。バイク🏍の男が、後を引き継ぐ。ダミエルは、橋を渡る。
ダミエルは、女神像の肩に休んでいる。
地球儀が、たくさん並ぶ中、老人は、星の運航模型を眺める。図書館に座り、写真集をめくる。老人は、詩を歌い続ける。
ベルリンの壁沿いの空き地を、老人とカシエルが歩く。第二次大戦の死体が並べられた街の風景が、差し込まれる。老人は、空き地の椅子に腰掛ける。
老人は、オールゴールを買い、和む。
カシエルは、上から地上を見る。
鉄道のガード下、ヒッチハイクする若い女は、誰も止まらず、イライラする。
カシエルは、車に乗り込む。誰もが、壁を作り、その中に篭るといった趣旨の詩が読まれる。車は、映画のロケ場所に止まる。ピーター・フォークが、少年としゃべっている。ドイツ🇩🇪兵将校と、ユダヤ人。
ピーター・フォークは、被っている帽子が、気に入らない。
屋内には、兵営所のセットが組まれ、二段ベッドが置かれる。ピーター・フォークは、衣装と、帽子をとっかえひっかえする。ようやく一つを選ぶ。ピーター・フォークは、エキストラのユダヤの老婦人の顔をスケッチする。
カシエルは、一部始終を見ている。ダミエルも来ている。
一階の天井は一部、撃ち抜かれ、カメラは、二階から狙う。ピーター・フォークが、雑誌の取材が入ったと告げる。
ダミエルは、カシエルに、"見せたいものがある"と誘う。
子どもたちは、行儀良く座っている。サーカスが始まる。子どもたちは、大喜び。猫に扮した女が、ロープを頼りに、空中で舞う。風船が、運び込まれ、子どもたちが殺到する。子どもの頃をうたった詩が読まれる。
湖の底から伸びる一本の木。
この世と人類の始まりが、うたわれる。
ダミエルは、詩を朗誦しながら、カシエルに、人間になる覚悟を語る。
"壁"に向かって歩く二人は、"壁"の前で消える。
映画の撮影現場で、ピーター・フォークは、俳優をスケッチする。
"少しは、いい役者になれただろうか?"

広大な空き地。図書館に現れた老人は、太古に思いを寄せる。空を舞うムクドリの群れ。
ビルの屋上に腰掛ける若い男。こっちに戻って来いと、皆んなが声を掛けるが、飛び降りる。カシエルは、悲鳴を上げる。
一瞬、色が付く。
ピーター・フォークは、自身のインタビュー番組を見る。
高架を走る列車🚃。女神像。 
カシエルは、女神の肩から、飛び降りる。ベルリンところどころ。夫婦喧嘩。ママを呼ぶ子ども。大戦で、空襲を浴び、崩れ行くベルリン。
マリオンのトレーラー。不安と恐怖。
会場に置かれた箱に女を入れて、フタを開けると、マリオンに早変わり。マリオンは、ロープをつかんで、ブランコに曲芸乗り。
サーカス団の打ち上げ。小屋で、酒を酌み交わす。マリオンは、団員と、歌を歌う。
▶︎人間への転生
閉館後の図書館。カシエルは、館内を歩く。掃除婦。一角に、天使が溜まる。
ライブハウスで、マリオンは、音楽に合わせて体をくねらせる。ダミエルは、人混みをかき分け、マリオンに近づく。上に上げたマリオンの手を取る。
カシエルは、ギターの🎸後ろに立っている。
コインランドリーで、仕上がりを待つ主婦は、家事を抱えている。
トレーラーのベッド🛌で休むマリオンは、夢にダミエルが現れる。子どもの頃の詩が読まれ、"行かないで"と、マリオンは、つぶやく。二人の腕が結び合わされる。
カシエルは、バスに乗り、物思いにふける。
ピーター・フォークは、散歩する。破壊された駅を眺める。通り過ぎた若者たちが、"コロンボ?"と、口々に言う。
カシエルが乗るバスの🚍二階には、誰もいない。
ピーター・フォークは、屋台に立ち寄っている。ダミエルが、近づき、ピーターは、"見えないが、いるんだろ"と言う。早く、人間界に来るように誘う。店主は、怪訝な顔をする。
ピーターが、虚空に差し出した手を、ダミエルが握る。
ダミエルとカシエルは、戸外で会う。ダミエルは、"瀬に降りる"ことにしたと語る。そして、人間になったその日に、起こることに、思いをはせる。ダミエルに色が付く。カシエルは、ダミエルの足跡が刻まれているのに気付く。
"壁"のそば。ダミエルは、地面に突っ伏している。空から、よろいの胴が降ってきて、頭に当たる。子どもたちが、"酔っ払い"を見ている。
ダミエルは、起き、よろいを抱えて、歩き出す。頭に手を当てると、べったり血が🩸付く。しかし、ダミエルは、人間を実感する。通りすがりの男に、血🩸を見せ、"これは赤いか?"と聞く。転がった丸太の色、"壁"に描かれた絵の色を尋ねる。ダミエルが、"コーヒーを飲めば"と言うと、男は、金を恵んでくれる。
ダミエルは、屋台でコーヒーを飲み、古道具屋で、よろいを売り、服と帽子を買う。
▶︎マリオン
サーカスの🎪小屋が畳まれる。
ダミエルは、ロケ場所に行き、金網越しにピーター・フォークを呼ぶ。ピーターは、もっと背が高いと思っていたと言い、金がいるだろうと聞く。ダミエルは、よろいを200ドルで売って、金はあると答える。ピーターは、"安く売ったな。20年前のニューヨーク🗽で、500ドルで売られていた"と言う。ダミエルは、ピーターが、元天使だと悟る。ダミエルは、恋人に会いに行くと言う。
"もっと話したいんだ"とすがるダミエルに、ピーターは、"自分で探すんだ。面白いぞ"とエールを送る。
遠くで、子どもたちが"コロンボ、コロンボ"とはやす。
サーカス団は、散り散りになった。昨日の舞台の中心に、マリオンは、カバンを置き、その上に腰掛け、物思いにふける。
ダミエルは、サーカス🎪の小屋跡に向かう。マリオンは、もういない。
その場に座るダミエルに、子ども二人連れが、どうしたのかと聞く。ダミエルは、"何かがない"病気だと答える。
モノクロに戻り、カシエルが、マリオンは、まだこの町にいる。今夜、何かが起こると、ダミエルを励ます。
夜の町を、マリオンが歩く。ダミエルもさまよう。店先のTV📺に、ピーター・フォークが映る。
マリオンが佇む屋台に、ピーター・フォークがやって来る。マリオンは、"刑事さん"と話しかけ、"何か探しているのか"と問われる。男を探しているが、何も手がかりがない。マリオンは、立ち去る。
カシエルがやって来る。ピーター・フォークは、"見えないが、いるんだろ"。"話したいことが、一杯ある"と言って、手を差し出すが、カシエルは、動かない。
マリオンとダミエルは、夜の町を歩く。ダミエルは、"ニック・ケイブ"のポスターを見て、ライブを聴きに、地下に降りる。会場には、マリオンが来ている。
隣のバーで、ダミエルが安らぐ。すると、マリオンがやって来て、ダミエルのそばに立つ。
ダミエルは、自分の飲み物を、マリオンに差し出す。マリオンは、今まで、ずっと一人だったが、本当に愛すべき対象に出会った。今宵、新月の夜に、私は決心したと、語る。
ダミエルが、ロープを引っ張り、マリオンが、宙吊りとなる。
図書館にいた老人は、自らを"語り部"と称し、傘を差して歩く。"乗船完了"
"to be continued"

"安二郎、フランソワ、アンドレイに捧ぐ"
【感想】
天使が、人間に憧れる。その天使を、ブルーノ・ガンツが好演した。
天使に近しい場所は、図書館、事故現場、自殺の現場、屋台、飛行機の機内、車のシート、サーカス小屋、ニック・ケイブのステージは、ちょっと違うか。
思えば、サーカスは、人々の天に上りたい欲望が詰まっているように、思える。

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