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一人勝手に回顧シリーズ#マーティン・スコセッシ編(11)#ギャング・オブ・ニューヨーク/ギャングの創成期

【映画のプロット】
▶︎ファイブ・ポインツ
ヴァロン(リーアム・ニーソン)が、髭を当たる。少年がやって来る。アムステルダムは、頬を切り、血の付いたカミソリを少年に渡す。
"いかん。拭くな。血は、そのままに。今に、分かる時が来る。"
"ぼんやりした記憶。記憶以外は、夢で見た事だ。"
"大天使聖ミカエルの守りを。我々の盾となり、悪魔の誘惑と邪計から、我らを守りたまえ。息子よ。これは、誰だ?"
"聖ミカエル。聖ミカエル。"
“何をした?"
"悪魔を天国から、追っ払った。"
" Good boy. "
アムステルダムは、蝋燭の火を吹き消す。
親子は、十字架を掲げ、夜の町を歩く。次第に、人々が、親子に付き従う。
"聖霊の鋼を汝の背骨に。聖霊の愛を汝の胸に。"
子供が歩み寄る。
"待てよ。"
"ジョニー。"
"また戦い?"
"ネイティブズ対デッド・ラビッツ。"
"君は?"
"決まってら。デッド・ラビッツ派だ。"
閉ざされたレンガ造りの門の前に至る。
"やあ、モンク。"
"我々の加勢に?金次第だよ。ヴァロン。"
門の入り口に立つ男たちが、答える。
"刻み目ごとに、10ドル。"
"10ドル?"
"約束する。"
"刻み目ごとに?"
"新しいnotch だぞ。"
"加勢しよう。"
門番が、扉を蹴り破る。うっすら雪が積もった街並みが開ける。
"オールド・ブリュワリー"
ヴァロンたちが、出て来る。広場のはじに並ぶ。反対側から、ザ・ブッチャー(ダニエル・デイ・ルイス)に先導され、ネイティブズが、彙集する。
"やあ、priest. 無愛想なアマと薄汚い野郎どもが、法王の兵隊か?"
"お前が、言ったとおりにしたんだ、ビル。『これは、勇士の闘いで、腐った男に用はない』と。"
"『オコネル・ガーズ』だ。"
"『プラッグ・アグリーズ』"
"『シャツ・テイルズ』"
"『チチェスターズ』''
"『フォーティ・シーブス』"
ヴァロンの援軍が、集結する。
"よし。挑戦を受けろ。"
ザ・ブッチャーは、両手に、なたと剣を持つ。
"闘いの定めに則り、我ら双方は、この場で、ファイブ・ポインツの支配権争いに、今日こそ、決着を付ける。この国で、生まれ育った我々『ネイティブズ』対この国を汚す移民どもだ。"
手勢は、雄叫びを上げる。
"よし、自称『ネイティブズ』ども。兎に角、挑戦を受けよう。これ以上、私の仲間を痛め付ける事は、許さん。覚悟するがいい。我々を打つ者の手を、切り落としてやる。"
ヴァロンの軍勢が、鬨の声を上げる。
"イエス・キリストが、我らの手となり、カトリック教徒を討つ。"
"真の神の裁きを受けろ。"
乱闘が始まる。ザ・ブッチャーは、躊躇いなく、刃物を振るう。飛びかかり、耳を食いちぎる者。血が、雪を染める。地面に倒れる者、両軍とも、多数。ザ・ブッチャーが、神父に迫る。
" Priest. "
ザ・ブッチャーの剣が、神父の腹を突き刺す。剣を抜き、今度は、横腹を刺す。
息子が見ている。神父は、事切れ、息子が駆け寄る。
角笛が、吹き鳴らされる。ザ・ブッチャーが叫ぶ。
" Look me. 俺のナイフの餌食だ。"
倒れた神父を、見せ付ける。
"父さん。立って。"
"どこだ?触らせてくれ。My son. 何事からも目をそらすな。"
ザ・ブッチャーが、神父の頭に手を置く。
"じき最期が来る。"
"殺せ。"  
とどめが刺される。
"三途の川で、必要だろう。" 
ナイフを持たせる。
"削ぎたい耳と鼻は、削げ。Don't touch him. No one touch him. このまま、あの世に送る。名誉の死だ。"
"約束の金は、貰うぜ。"
遺体に手を掛ける。
アムステルダムが、遮る。
" No. "
"我慢しろ。約束は約束だ。"
"気の毒にな。"
"この子をどうする?"
ザ・ブッチャーが問う。
" Look at me. 役人に引き渡し、教育を受けさせろ。"
"親父に、別れを言いな。"
アムステルダムは、ナイフを取り、振り回す。走って逃げる。
"待て。"
"逃すな。"
"こっちへ来い。"
アムステルダムは、地下の通路を走って逃げ、地下の貯蔵庫に、ナイフを隠す。
"来い。ヘルゲート行きだ。"
"逃すな。"
"ヴァロン神父は、名誉の死を遂げたが、『デッド・ラビッツ』は、消滅し、この町から追放する。"
ザ・ブッチャーが、宣言する。
"今後は、その名をも、口にしてはならん。"
ヴァロンの死体は、荷車に載せられ、運ばれる。
NY市1846年 

16年後。
"この施設で、少年だったお前は、成人した。世俗の想いを捨て去れ。"
アムステルダム(レオナルド・ディカプリオ)は、膝まづき、教えを聞く。
"道徳に背く汚れた行い、passion、revenge。主は、お前を許された。お前も、許しの心を持て。"
バイブルを渡される。
"今、この国は内戦で、引き裂かれておる。"
" Thank you very much. "
アムステルダムは、施設を出る。
"戦争が終われば、この国を戦火の渦に巻き込んだ奴隷制度は、永遠に、地球上から、消え去るだろう。"
ヘルゲート少年院。ブラックウェル島・NY
アムステルダムは、聖書を川に捨てる。
"奴隷制度の廃止"の文字の明かり。
"南北戦争勃発2年目。通りを行進するアイルランド軍団。この街の住民は、雑多だった。ギャングのリーダー、Rich&Poor。"
"リンカーンを倒せ。"
"白人が、奴隷にされる。"
"『街』と言うよりは、『溶鉱炉』だった。やがて、『都会』が鋳造される溶鉱炉。"
"行けよ。肌の黒い仲間のために死ぬがいいさ。"
"リンカーンを当選させたとは。"
"連邦政府から脱退を。"
"白人と黒人が、平等だと?"
"笑える。"
" Nigger は、アフリカに帰れ。"
"人々の怒りを買ったのは、連邦が設けた徴兵制度だった。"
"黒人は、この街から出て行け。"
ザ・ブッチャーの投げたナイフが、リンカーンの絵の額に刺さる。
 
"アイルランド勢力の侵略"
"若者は、入隊を。3食付き。"
"混乱の最中に、アイルランド移民が、大飢饉を逃れて、船で新大陸に押し寄せ、温かい歓迎を受けた。"
"アイルランドへ帰れ。"
物を投げつけられる。
"船から降りるな。"
"ヘルゲートから、船でたった2時間。俺まで、移民扱い。言葉のなまりの違いなんか、ネイティブズには分からない。"
"タマニー党は、君らの味方だよ。"
"アメリカへようこそ。旅は終わりだ。"
"タマニー党へ投票を。"
"ここは、俺たちの国だ。"
タマニー・ホール
"民主党員のための政治団体"
"ウィリアム・トゥイードを、市民は愛し、憎んだ。盗みを志す我々も、彼には脱帽した。"
"カッティング君、諸君。ようこそ。"
"トゥイードさん。"
"ちょっと。そこの君。鳥が目を回す。"
"だから?"
" Irishman だもんでね。"
"ファイブ・ポインツ"
" Murder's Alley "
"レンガつぶて屋敷"
"地獄の入口"
"この哀れな子を見てください。"
篤志家が、演説する。
"この子の住まいは、後ろの建物。神も見捨てた悪と貧困の巣です。"
"改革論者が、毎年、やって来たが、その甲斐もなく、ここは、毎年、悪化の一途をたどった。"
"追い出すのか?"
"牧師様のお言葉だ。"
"汚れた深みに落ちた彼らにも、輝かしい甦りが訪れる。"
アムステルダムは、地下へと降りる。
"私は、毎日、波止場に出向き、移民たちにスープを配っている。Politycal base 作りだ。"
ザ・ブッチャーが答える。
"俺も、毎日、行っているよ。"
"割れた敷石を投げ、奴らを罵るためだろ?"
"銃がありゃ、上陸する前に、奴らを撃ち殺しているよ。"
アムステルダムは、父と暮らした地下へ、更に階段を降りる。壁の鏡を見る。
"マルベリー・ストリート。ワース。クロス。オレンジ。リトル・ウォーター。ファイブ・ポインツの5本の指。その5本の指を握ると、拳になる。いざとなりゃ、あんたを叩きのめす。"
"そういう話じゃない。市民としての義務の話だ。住民への義務、学校、病院、下水の整備、道路建設、修理に清掃、酒場の免許。"
アムステルダムは、地下の貯蔵庫を開け、布に包まれたナイフを取り出す。
"大天使聖ミカエルよ。闘いの場で、我らを守り、悪魔の誘惑と邪計から、守りたまえ。"
トゥイードとザ・ブッチャー。
"権力と金が手に入る街で、君と組み、市民に理解させるんだ。『何事も、タマニー・ファミリーに任せるのが一番』とね。君と私の組織が、手を組めばいいのだ。"
"手洗い真似を?"
"目的を遂げるためだ。"
"サツを使えばいいのだ。"
"警察?警察は使えん。法の体面を保たねば。裏で破るのは、勝手だ。"
アムステルダムは、メダルも取り出す。
"なすべき事に、お力を。"
" Who are you? "
ナイフを手にしようとして、機先を制せられる。
"やめろ。"
"名を名乗れ。何をしに来た?"
"ここが、好きなのさ。"
"ジミー。ポケットを探れ。"
"喧嘩する気はない。"
"だろうな。"
"勝てる訳がねえ。"
アムステルダムに殴りかかり、殴り倒される。もう1人の男も、壁に押しつけられ、ナイフを突きつけられる。
" Don't kill me. それは?"
"喧嘩は嫌だ。"
"なぜ?いい腕前だぜ。"
のされた男も、立ち上がり、笑っている。アムステルダムは、その場を去る。

アムステルダムは、町で、襲いかかった男に、声を掛けられる。
"神父の息子だな。"
"俺について来るな。Do you understand? "
"忘れたのか?助けようとしただろ?"
" What? "
"あの時、ネイティブズの奴らから。"
"あの時の?"
"てっきり殺されたものと。"
"ぶち込まれていた。"
"今まで?"
"脱走を試みる度に、刑期が伸びた。"
"ここで、何してんだ?"
"懐かしくてね。"
"バワリー・ボーイズだ。"
"ファイブ・ポインツのパラダイス・スクエア。夜は、賑やかだぜ。"
"幾つ組が?"
"河を縄張りにしている『デイブレイク・ボーイズ』、船乗りをさらう『フロッグ・ホローズ』。『シャツ・テイルズ』は、気障な服装で、酔っ払いの財布を狙う。ヘル・キャット・マギーは、自分の酒場の酒を、自分で飲んで、一文なし。『プラッグ・アグリーズ』は、田舎言葉で、何を言ってんのか、分からない。誰とでも寝て、相手を殺す『ナイト・ウォーカーズ』。奴らと話すのは、『プラッグ・アグリーズ』だけ。"ブロードウェイ・ツィスターズ』。ただの酔っ払いだ。俺が、昔、入っていた『リトル・フォーティ・シーブス』。ボスは、肺病病みのゴキブリ・ベンで、人に、血痰を掛ける。
"英国野郎は、欲の深い盗っ人だ。"
"『ブルー・アメリカンズ』は、ああやって、英国人を罵るだけ。"
"『デッド・ラビッツ』に並ぶ組は?"
"その名を口にするな。あの日、お前の親。言うな。"
"ネイティブズは、今も、あの日を祝うって聞いたぜ。That's true? "
"本当だよ。盛大にね。ブッチャーが、客を選ぶ。"
かつて神父側に付いた男が、アムステルダムを見ている。
ジョニーに、女がぶつかる。
"気をつけてよ。ジョニー。"
"そんなに驚いた?"
"口も聞けないの?"
"頭で、考えているから。"
ジェニー(キャメロン・ディアス)は、笑う。
" Gentlemen. "
"神のお恵みとご加護を。"
ジェニーは、女友達と連れ立って、去る。
"凄腕の女スリ師ジェニーだ。"
"あの気取り方は何だ?俺なら、ポケットを調べるね。時計をすってたぜ。"
"すらせたんだよ。いつも、わざとすらせている。"
" All right. "

夜空に花火が上がる。落ちた花火が、建物に引火する。
"火事は、皆の楽しみだった。火事場で何か盗み、サツが、出動すれば、最高。市警察は、中央警察と争い、中央警察は、街の組と闘った。"
"街の火消しに負けるな。"
"火消し組は、37あって、仲が悪かった。"
"トゥイード。火消し組が出て来たよ。形なしだね。"
"皆、準備はいいか?ホースを引っ張り出せ。"
"ブラック・ジョークの奴らだ。やっつけろ。"
乱闘が始まる。
"いいぞ。かかって行け。"
"ブツを頂こうぜ。"
"バウリーに逃げ帰れ。"
"泥棒を捕まえろ。
火事場から、略奪する人々。
"困った時には、タマニーに相談を。"
"相談?早く、うちに水を。"
"行こう。"
ジョニーが、アムステルダムを略奪に誘う。
"腹減ってんだろ?"
アムステルダムは、ジョニーに続いて、燃える建物の中へ入る。
"何でもいい。盗って逃げろ。"
"灰になるのを、見てんのか?"
"ここは、俺のアメリカス消防隊の管轄地区だ。お前は、バウリー地区だ。"
ジョニーとアムステルダムは、室内を物色する。
"これだけの大火を、これだけの人数で抑える?無理だね。"
"そう思うか?"
消防車に乗ったブッチャーが現れる。アムステルダムは、窓越しに見る。 
"ブラック・ジョークの奴らを叩き潰せ。敷石を血で染めろ。思う存分、やれ。"
"ビル・ザ・ブッチャーを通せ。" 
"ぐずぐずするな。やれ。"
ジョニーとアムステルダム。  
"中の物は、皆、焼けちまっているぜ。"
"そこはいい。隣に移れ。"
"急げ。盗むなら、早くしろ。"
"手を出すな。俺の家だぞ。" 
ジョニーが、落ちて来た梁で、行手を遮られる。
"ジョニー。"
"助けてくれ。"
アムステルダムは、貴金属を拾い、一旦、外に出る。
"助けて。"
アムステルダムは、布を被って戻り、ジョニーを救う。
" Com'on ジョニー。Get up. "
"捨てとけ。"
ジョニーは、オルゴール付きの小箱を持ち出す。布で火をよけ、外に出る。
ブッチャーが、2人を見る。

"奴の名は、アムステルダム。"
2人は、略奪品を持ち込む。
"鼻は?"
"無事だよ。"
こないだのした黒人が笑う。
"手ぶらで戻った奴は、出て行け。"
"これだけ?"
"ああ。"
"盗品は集めて売っ払い、ネイティブズに上納した後の金を、皆で分ける。平等に分配するんだ。文句あるか?ヘルゲート。"
"文句?文句が聞きたきゃ言うぜ。"
"この野郎。"
男は、つかみかかろうとするが、周りに制止される。
警官のハッピー・ジャックが入って来る
"俺と話をつける方が、先だ。分け前を貰おう。" 
アムステルダムは、かつて、父に従った男と気付く。
"いい稼ぎじゃないか。『この国は先がない』って言う奴に、俺は、こう言う。『ファイブ・ポインツの若者は、よく働いている』とね。いいね。こいつは、女房が喜ぶ。"
"頼むよ。ハッピー・ジャック。ブッチャーへの上納金がなくなる。"
ハッピー・ジャックは、男の胸を叩く。オルゴール付きの小箱を、投げ付け、手に取る。
"つまらん曲だ。"
いくつか、品物を見定める。
"  Thank you boys. トラブルを起こすなよ。"

"ネイティブズは、父の殺された日を、毎年、祝った。場所は、モット・ストリートの『チャイニーズ・パゴダ』。中国人も、ネイティブズを嫌っていた。
アムステルダムは、パゴダに赴き、招待状を示す。
"ドラムが鳴り、ブッチャーが炎の酒を飲む。王を殺す時、暗闇では刺さない。"
中国人が、火のついたグラスを掲げる。
"全宮廷が見守る中で、殺すのだ。"

"悪魔のサーカス"
"マッチあるか?"
街の酒場。音楽が鳴り、人でごった返す。
♪チャザム・ストリートであった娘
 ブリーカー・ストリートはどっちかしら?
 ハメを外そうぜ 俺たちは船乗り
 ニューヨークの娘と ポルカを踊ろう
 ハメを外そうぜ 俺たちは船乗り
 ニューヨークの娘と ポルカを踊ろう
 ブリーカー・ストリートの44番地
 玄関に出て来たのは お袋と姉貴
マギーが、カウンターに、肉片を置く。
"マギー。こりゃ右耳か?"
バーテンは、耳を液体漬けの耳が入ったガラス瓶に放り込む。
"早く酒を注ぎなよ。"
"勝手に飲め。"
"乾杯。"
"2分で締め切るぞ。"
"聞いてくれ。いよいよスタート。殺したネズミの記録は、3分間で25匹。このチャンピオン犬は、何匹殺るか。"
"50匹。"
袋のネズミが、砂地の上に撒かれる。小型犬が、ネズミを追い回す。男たちは、砂場を覗き込み、熱狂する。
ジョニーが、スキンヘッドに呼び止められる。
"どこへ行く?上納金を。俺が、ビルに渡しておく。"
"自分で渡す。"
スキンヘッドは、ジョニーの腕をつかむ。
"歯をへし折られたいか。"
"ジョニー。"
ブッチャーが呼ぶ。
"よく来た。"
アムステルダムが、様子を伺う。
"仲間からです。"
カードをしているブッチャーに、硬貨を差し出す。
"奴は友達か?出身は?"
"この街の奴では。"
" You. "
アムステルダムに呼び掛ける。手招きする。
アムステルダムは、寄って行く。
"そこまでだ。"
ブッチャーの後ろの壁に、簡素な肖像画"追悼 ヴァロン神父 1846年"
"人の目を見ん奴は、信用できん。"
"カードをしている時のあんたはヤバいから。" 
スキンヘッドの男が、かつてデッド・ラビッツの町にいた職人だと知れる。
"紳士のゲームだぞ。紳士の賭け金を。"
若い男のベットを突き返す。
"デカい賭けだぜ。"
"ケチな賭けだ。"
ブッチャーは、いきなり隣の男の手を、ナイフで刺す。
"そんな声を立てるな。"
"火事場も恐れぬ盗っ人か。"
"水の上も平気か?寄れ。噛みつかんよ。"
ジョニーに指示する。
"ポルトガル船が、港で、3週間の検疫を受けている。デイブレイク・ボーイズが行く前にやれ。"
"任せてください。"
" You. What is your name? "
"アムステルダム。"
"アムステルダム?俺は、『ニューヨーク』だ。次からは、手ぶらで来るな。金を払って、俺の前に出ろ。こいつも連れて行け。また命を救ってくれるぞ。"

"見つかったら、ヤバいぞ。"
"声を出すな。すぐ片付くよ。"
アムステルダムたちは、小舟で漕ぎ出でる。
"夜の波止場は、嫌いだ。最近は、死んだ兵隊も上げられている。"
"多くの母親は、戦死の報を聞くだけです。うちも、長男を失ったが、結局、遺体は戻らなかった。" 
"悲惨だった。"
"戦争は、終わります。"
"だが、まず仕事だ。"
沖に停泊しているポルトガル船に乗り込む。
"デイブレイク・ボーイズに先を越されたぞ。"
アムステルダムは、ナイフを拾う。
"これは。" 
"ジミー。伏せろ。"
警官が、銃声を鳴らし、威嚇する。
"港湾警察が、やって来るぞ。"
警官は、背中をナイフに刺され、倒れる。黒人の男が、小さく頷く。
"そこは?"
船室を覗く。
"皆殺しにしやがった。あるのは、船乗りの死体だけだ。逃げよう。"
アムステルダムは、事切れた警官の顔を確かめる。
"急げ。"
"アムステルダムは?どこだ。"
アムステルダムは、死体を、ボートに投げ入れる。
"仏を運べ。"
"なぜだ?"

"15ドルだ。どうする?"
"死にたてか?"
"まだ4時間だ。" 
アムステルダムは、男から、金を受け取る。
"じゃ、またな。"
新聞の見出し。
"死体を売るghoul(悪鬼)横行"
"何?"
"死体を売る。"
"そこに使われていた言葉だよ。"
ブッチャーが、尋ねる。
"悪鬼?"
"悪鬼。いい言葉だ。"
"死体を売る悪鬼横行。"
"新手口。ファイブ・ポインツに非難集中。鼻を高くしていいぞ。"
" Thank you. "
"死体を売るなんて、そりゃ、あんまりだ。"
マグロインが言う。
"手ぶらで帰るのか。『警察日報』に出るなんて、大したものだ。"
"死体は、土に埋められ、復活の日を待つもんだぞ。"
"お前ら、アイルランド人が、そんな事気にすんのか?お前だけ、信心深いのか?"
"俺は、『ぼったくり』じゃねえ。"
"そう呼ばれたのは、初めてだ。" 
"『ぼったくり』、そう『ぼったくり』。"
"意味によっては、勝負を挑む必要がある。"
"手当たり次第、何でも盗む奴の事だよ。盗っ人の面汚しだ。よく数えなよ。ビル。"
"誤魔化してねえ。"
"『ネコババ』って言葉なら、意味はよく分かる。その意味か?"
"お前に使う言葉は、幾つもある。"
"『ネコババ』もその一つか?"
"そうだとしたら?"  
"なら、やる事がある。"
"受けよう。"
2人の対決が始まる。
"賭けよう。"
2人は、素手で殴り合う。
"マグロイン。相手は餓鬼だ。"
"アムステルダムに4ドルだ。"   
アムステルダムは、またパンチをヒットさせる。
"マグロイン。左を固めろ。"
マグロインは、アムステルダムを壁に押さえつける。2人は、床に倒れ込み、揉み合う。アムステルダムが、後ろから腕を回して、マグロインの首を締める。マグロインを下に敷く。
"もういい。" 
"さあ、俺を何と呼ぶ?"
"もういい。引き分けろ。"
アムステルダムを引き剥がす。
"やめろ。お前の勝ちだ。"
"マグロイン。お前は、歳だ。"
ブッチャーは、アムステルダムの手を取り、アムステルダムの頬に押し当てる。
"マグロイン。その頭から、耳と鼻を削ごうか。このままでいい。まず、耳と鼻を削ぎ落として、頭で、スープを取ろう。"
"この頭は、まずそうだ。とんだアイリッシュ・シチューだ。"
"雑魚が、デカい魚に食い付いた。"
アムステルダムは、父を殺された日を思い出す。

別の日。ブッチャーは、ジョニーとアムステルダムを引き連れて歩く。
"天地創造7日目に、神は休息を取った。だが、その前に、英国の横で、クソをした。それが、アイルランドだ。怒るな。"
"平気です。俺は、この国生まれで、アイルランドの話は、孤児院で聞いただけ。"
"そのクソみたいな島のどこで、祖先は生まれたんだ?"
"ケリーとか。でも、施設で、なまりは消えました。"
"俺も、そういう所で育った。ここのすべては、俺のものだ。物乞い、新聞売り、盗っ人、安酒場、インチキ酒場、かっぱらい、スリ、おかま、中国人、誰もが、俺に金を払う。そうやって押し寄せる波に立ち向かう。そうだろ?"
" That's right. "
ジョニーは同調するが、アムステルダムは立ち止まる。
"国のために志願を。徴兵を待つのか?50ドル貰えるぞ。"
"3万人の志願兵が必要だ。1人に677ドル支給する。これに記入しろ。Thank you. "
"志願申込書に記入しろ。3食保証付きだ。3食保証付き。Young man. お国のためだ。"
アムステルダムも、用紙を受け取る。
"1日3食保証付きだよ。これを読んで、よく考えてくれ。" 
"誰もが、徴兵の話ばかり。300ドルありゃ、徴兵を逃げられる。300ドル?俺たちには、300万ドルも同じ。ギャングは、徴兵係も敬遠していた。第一、このNYまで、戦争が来る訳がない。"
" Good morning sir. "
" You. "
ジェニーに出くわす。
"ぶつかるなよ。"
"分かったわ。"
ジェニーは、つまずき、アムステルダムに倒れかかる。
"ぶつかるなって。"
" Sorry. "
アムステルダムは、全身をチェックする。
"全部ある?"
"そのようだ。"
"じゃ。"
"神のお恵みとご加護を。"
2人声を揃える。
ジェニーは、立ち去る。
アムステルダムは、すられたのに、気付く。
"汚いアマめ。"
アムステルダムは、ジェニーが乗った馬車に取り付く。
ジェニーは、馬車の中でコインを落とす。
"拾いましょう。"
隣の男が拾う。
"ありがとう."
" It's my pleasure. "
"話し掛けて、不躾とお思いでしょうが。"
"おっしゃる事によりますわ。"
ジェニーは、男のポケットに手を伸ばす。アムステルダムは、覗き見る。
"失礼ながら、あなたは、NY一の美女だ。"
" NYだけ?私は、ここで。"
"一緒に、歩かせて頂いても?"
財布をする。
"それは、行き過ぎですわ。"
アムステルダムは、ジェニーを尾行する。
"盗みには、色々手口がある。棒の先に釣り針を付け、店の商品を釣るやり方。教会を稼ぎ場とするスリ。女が男をベッドに誘い、仲間が財布を盗む手口。ジェニーは、色目を使って、男を惑わせるスリ。そして『キジ鳩』。"
ジェニーは、建物に入り、ドレスを1枚脱ぐ。
"『キジ鳩』とは、メイドを装って、金持ちの屋敷を選んで、裏口から入り込み、盗みを働く。"
今、まさにジェニーは、キジ鳩になっている。アムステルダムは、物陰から窺う。
"度胸がなきゃ、踏めないヤマだ。"
ジェニーが、一仕事終え、外に出る。アムステルダムは、捕まえる。
"メダルを返せ。"
ジェニーは、蹴りを繰り出すが、壁に押さえ付けられる。
"やるなよ。"
また蹴る。
”やるなって。"
ジェニーは、刃物を取り出し、アムステルダムの喉に突き立てる。
" Go back. さもないと、喉を切り裂くわよ。"
"そうか。やれよ。"
”やるわよ。"
"突けよ。"
アムステルダムは、ジェニーににじり寄り、刃物を奪う。
"メダルを返せ。"
"早く。"
ジェニーは、襟元のボタンを外す。沢山、首にぶら下がっている。
"どれが、あんたの?"
"そっくり頂こうか?"
"やったら。"
アムステルダムは、自分のメダルをちぎり取る。ボタンをとめてやる。
"一緒に、少し歩こう。"

"この辺りだと、1日の稼ぎは?組んでもいい。"
"あなたは、お品の良さに欠けるわ。それに、私は、一匹狼なの。"
" Alone? ブッチャーへの払いは?"
"ないわ。"
" Nothing? "
" Special arrangement なの。"
"これでお別れよ。"
"そうだろうね。"

ハッピー・ジャックが、数名の男女を連れて、町を歩く。
"ポケットの金を握りしめ、目を西に。救いの大地を求め、水平線に目を凝らす。アメリカの大地を。"
"貧しさに驚かれたでしょう。"
"上流階級の連中も、訪れた。この街で、旧家のスキャマホーン一家。政治力はなかったが、発言権はあった。" 
また、ハッピー・ジャックが、夫妻を案内する。
"『ありのままのファイブ・ポインツをご覧になりたい』と。そう伺ったので。"
"身の安全は、守ってくれよ。"
"警官が同行しているのよ。危険など。"
"そのとおり。ご覧ください。"
鉄柱に、懐中時計をぶら下げる。
"行きましょう。"
"時計を置いて?"
"安全です。皆、私のだと知っている。"
男が、地面に横たわっている。
"酔っ払っているの?"
"いいえ、死人です。"
ブッチャーたちが現れる。
"やあ、マルレイニー。"
"観光案内か?"
"青少年指導の情報収集だよ。こちらは。"
"紹介は不要だ。5番街のスキャマホーンご一家。"
"ご夫妻とご令嬢。こちらは。"
"新聞業界の大物グリーリー氏。"
"『トリビューン』紙。"
"カッティングです。"
"ご機嫌いかが?"
"上々です。よろしく。"
手の甲に、キスをする。
"オレンジの香りですな。Delicious. "
"カッティング君。"
"女優のような娘さんだ。"
"ファイブ・ポインツのleader. "
"グリーリーさん。"
"ようこそ。ご心配なく、何も起きませんよ。"
"私がいるからね。"
ハッピー・ジャックが言う。
"ありがとう。ビル。どうぞ。"
"盗っ人が、偉そうに。"
"私の名を。"
"あなたは、有名ですから。"
"そうか。悪い気はせんな。"
アムステルダムが、ビルに言う。
"サツは、嫌いだ。"
"あのハッピー・ジャックは、俺の言いなりだよ。"
"俺の時計は、安全かな?"
大柄な男が、寄って来る。
"吊るしてみるがいい。"
" Someday? "
"そう。いつかな。"
"新入りか?"
"俺の温かい懐に転がり込んだアイルランドの餓鬼さ。"
男が、アムステルダムの顔に手を伸ばす。
"怒るな。顔を見ただけだよ。"
男が、かつての門番だと知れる。

"肉の捌き方を教えよう。人間と同じだ。肉と血。"
ブッチャーは、肉を捌く。
"組織、内臓。豚が、役に立つ。豚は、人間に一番近い体の構造をしている。"
"豚が?"
"持ってけ。母さん。"
"神の祝福を。"
"他人だよ。"
"知っているよ。"
吊るされた豚で、アムステルダムの体の箇所を示しながら、教える。
" Lever、腎臓、heart. ここを刺すと、血が噴き出る。こう刺す。こうだ。動脈を裂けば、死ぬ。You   
try. "
"やれ。"
壁に古ぼけたポスターを見る。
"ファイブ・ポインツで、ネイティブズ勝利"
父から、カミソリを受け取った事を思い出す。豚にナイフを振るう。
"肋骨で、刃を折るな。"
"いいぞ。動脈だ。ゆっくり血を流させ、死を味わわせる。Good. "
 
トゥイード。
"市に、毎月5,000ドルの請求を出せ。10%をリベートで返す。"
"ビル。"
"詳細は、彼と相談を。互いに、得な話だろ。"
"そいつらは?" 
ジョニーとアムステルダムを連れている。
" Thank you boys. " 
"失礼します。" 
ジョニーとアムステルダム。
"何か言いたいのか?"
"ビルに気に入られたな。何かしでかす気なら、好きにやれ。俺を巻き込むな。"
"俺は、ヘルゲートに16年。何とか生きられりゃいい。それよりいい道が?"
" No. "
"市民から、犯罪の苦情が多くて。まともに仕事も片付かん。『犯罪に目を瞑っている』と。タマニーを非難するやつまでおる。やっておれんよ。何とか手を打たなきゃ。'' 
"例えば?"
"絞首刑をやるってのも、一案だ。"
" Who? "
"そこら辺の小者で、十分だ。組に属さんこそ泥とか。"
" How many? "
"3or4。"
" Which? "
"4。"

公開処刑。
"お前たちの罪状は、次のとおり。猥褻罪、窃盗、空き巣、毒入り酒、男色、絞殺、その他、世の良俗を乱す諸々の行為。"
ビルらが見守る。 
"なかなかいい顔触れだ。気分はどうだ?アーサー。"
"まあまあだ。"
"アムステルダムだ。このマグロインをのした。"
"晴れのおめかしか?"
"身だしなみは大事だ。"
"その意気。"
ビルが、アーサーのペンダントを手に取る。
"これを1ドルで買おう。"
" Mother's. "
"1ドル50。" 
"売るよ。"
"また会おう。地獄の釜の横でな。"
ジェニーの姿も見える。
絞首台に立つ執行官が言う。
"せがれは、来ているか?せがれは?"
女が手を上げる。
"父さんよ。"
"お別れだ。坊主。"
"俺は、カードでも、汚い手は使わなかった。神よ、温かく迎えたまえ。"
拍手が起こる。
4人の罪人の頭が、黒い袋で覆われ、刑が執行される。

"慈善ダンスパーティー"
"その夜、改革団体が、ダンス・パーティーを催した。『朝は絞首刑、夜はダンス』って街だ。"
ジョニーとアムステルダム。
"確信はないけれど、彼女、俺に笑いかけたぜ。"
"それが手なのさ。"
"そんな。"
"アイルランド負傷兵です。"
アムステルダムは、呼び止められる。
"ケリーから?"
"そうです。"
"取っとけ。"  
コインを渡す。
" Thanks. "
" Ladies&gentlemen. 今夜は、大勢、若い方が参加されています。"
"盗っ人パーティーだな。"
"キリスト教の宗派は問いません。特に、今夜は、カトリック教徒の方々を、心から歓迎します。"
" Ladies come with me. "
"すぐダンスを始めます。"
"今晩は。"
"今晩は。牧師様。"
" Good evening. "
"髭が伸びてるわよ。"
"牧師様。光栄ですわ。"
トランスジェンダーの2人連れ。
牧師は、ジェニーに声を掛ける。
" Miss. "
"エヴァディーンよ。"
" Miss エヴァディーン。"
ジェニーを椅子に座らせ、手鏡を持たせる。
"紳士方は、こちらへ並んで貰おう。"
"鏡を持ち上げて。"
男に言う。
"鏡を見るんだ。"
後ろ向きのジェニーは、手鏡に映った男の顔を、品定めする。ジェニーは、首を振り続ける。
ジョニーの番。抱えたオルゴールが鳴る。ジェニーは、かぶりを振る。アムステルダムの番。
"彼を。"
"女王が、決定を下された。"
音楽が、奏でられる。
"あなたが、選ばれました。通常の礼拝は、6時と8時。"
"うるさい。"
アムステルダムは、ジェニーとダンスを踊る。
"何の真似だ。"
"踊ってよ。"
"なぜ、俺を選んだ。"
"いけない?"
"理由を聞きたい。"
足を踏む。
" Sorry. "
ジョニーは、観衆の輪から離れる。
"済まない。ダンスは、下手なんだ。"
"慣れている振りを。"
"パーティーは、初めてなんだ。"
"足元を見ないで。"
"もっと、強く抱いて。"
"こうかい?踊るなら、ジョニーと。"
"彼なんか。どうでもいいの。"
2人は、ベッドで互いの唇を求める。
"いけない。"
"待って。"
"外せよ。"
"締め直すのに、一晩かかるわ。"
アムステルダムは、激しく、ジェニーの体を求める。
"待って。外すわ。"
ジェニーの腹に、傷痕が見える。
"赤ん坊を取り出したの。Sorry. "
" It's fine. "
"あなたも傷痕が?"
"幾つかね。"
アムステルダムは、傷だらけの胸を見せる。ジェニーの手を取り、胸に置く。ジェニーは、傷痕に、キスする。
アムステルダムは、ジェニーのペンダントを手に取る。
"これは?"
"カッティングさんからの贈り物よ。"
アムステルダムの表情が、強ばる。
" Gift? "
"そうよ。"
"誕生日祝い?"
" No. "
"君からは、何を?"
"あなたに関係ないわ。"
"馬鹿ね。怒ったの?"
"そういう女か。"
"せっかちね。大抵の男は、やった後で、出て行くわよ。"
"奴の残り物なんか。"
ジェニーは、立ち去る。
火を囲み、ダンスを見物する人の輪。

拳闘の試合。
"せこい賭けは、無視する。15対1で、『目玉のモラン』に。"
アムステルダムが声を上げる。 
"誰もが、ブッチャーの僕。彼のために稼ぎ、駄賃を貰って礼を言う。"
"手入れだ。"
"トゥイードも。"
"ここまで。"
"この俺も。親父が嘆く。"
"何事だ?"
ブッチャーが、出て来る。
"悪いな。" 
記者は、トゥイードをスケッチする。
"市の条例だよ。ボクシングは禁止だ。"
"うるさい。賭け金を集めろ。"
"試合の途中なのに。"
"いいから集めろ。市警察には、袖の下を払ったぞ。"
"中央警察には、まだだ。"
"汚いぞ。"
"聞けよ。"  
アムステルダムが言う。
"黙れ。"
トゥイードが一喝する。
"何が黙れだ。話させろ。"
"市内でのボクシングは禁止。"
"そのとおり。"
"市外なら、いいんだろ。"

ボクシングの試合。
"75ラウンドで勝負あり。ノックアウト。"
"今夜の素晴らしい試合を可能にしたのは、この方の知恵のお陰です。"
試合が、川に浮かぶはしけで、行われている事が分かる。
"意表をつく会場。しかも合法的。カッティング氏に感謝。彼の若い協力者も紹介しましょう。"
アムステルダムが、リングに上がる。
"よくやった。"
"そう。上手く行った。"
"この場をお借りして、一言。ブロードウェイで開催する私の見世物へもどうぞ。『P.T.バーナムの驚異の見世物。"
"俺を庇護してくれるドラゴン。その翼は、温かかった。"
"我々は、アメリカの誕生を、今、この目で見ているのだ。どこにアメリカ人が?よそ者ばかりだ。白人や黒人の仕事を、5セントで奪うアイルランド人だ。奴らが、何の役に立つ?Votes. "
"票だと?"
"奴らは、皆、司祭の言いなり。司祭は、法王の言いなりさ。"
トゥイードが言う。
"彼は、アイルランド人に愛憎を。"
"ビル。この善良な連中を、どんどん投票所に送り込め。タマニーへの票は、高く買い取る。"
ブッチャーは、唾を吐く。
"俺の親父は、アメリカの建国に、命を捧げた。1814年7月25日、英軍との戦闘で、部下ともども殺された。その栄えある国を汚すのか?戦わなかった奴を受け入れて?シラミだらけで飢えているから?"
"戦いもいいが、永遠には、戦えんぞ。"
アムステルダムを連れて立ち去るブッチャーに、声を掛ける。
"敗北が、何だ。"
"負けるよ。"
" What did you say? "
"君は、未来に背を向けている。"
"俺の未来はある。"
"市民権の書類。こっちが、入隊の書類。国のために、戦え。Next. "
"署名を『×』印でいい。"
♪新大陸に渡れば ひと財産築けると
 ヤンキー大陸に着いたら
 手に銃を押し付けられ
 さあ お前も戦え リンカーンのために
"マスケット銃だ。濡らすなよ。弾薬箱も濡らすな。"
兵隊が、会話する。
" Where you going? "
"『テネシー』だと。"
"それ、どこ?"
♪この国には 戦争だけ
 耳をつんざく大砲の響き
 引き返して戻りたい
 懐かしい故郷 ダブリンに
"本当に、3度食事が?"
兵隊の隊列は、船に乗る。
岸壁には、棺が並ぶ。

"私の子供たち。私の子供たちよ。南北分裂の傷を癒そうではないか。戦争の、即、終結を。"
"アンクル・トムの小屋"
"南部と北部は、手を結ばねばならない。" 
リンカーンの演説。
"嘘つき。"
"消えろ。"
ブッチャーとアムステルダム。
"芝居の最後は?"
"客が騒ぎまくるのさ。芝居を見た事は?"
"ない。"
"レグリー君。鞭なんか捨てたまえ。イライザ。シェルビーの手を取れ。可愛いトプシー。お前は、アンクル・トムを。慰めておやり。"
宙吊りのリンカーンが、語りかける。
"もう死んでいるよ。"
観衆が、リンカーンに物を投げ付ける。ブッチャーとアムステルダムも投げる。
"降ろせ。"
"連邦政府なんか潰れろ。"
"連邦政府なんか潰れろ。"
アムステルダムも同調する。観衆が、舞台に上がり、役者と揉み合う。
男が、帽子の中から、銃を取り出す。
"同胞の恨みだ。"
"伏せろ。"
銃弾が、ブッチャーの胸に当たる。
"ブッチャーが撃たれた。"
ブッチャーは、雄叫びを上げる。
犯人は、観衆に取り囲まれ、アムステルダムが撃つ。
"そいつを押さえ込め。"
犯人は、うめき声を上げ、床でもがいている。ブッチャーが、近付き、蹴る。
"誰に雇われた?素直に答えろ。" 
"何と言った?"
"神に懺悔している。"
"クソっ。よく聞け。懺悔なら、俺にしろ。この屑。誰の身内だ?英語を喋らないと、刺し殺すぞ。ちゃんと英語で答えろ。誰の身内だ?誰に雇われていた?"
男は失神する。
"せりふを忘れたらしい。"
"いいチョッキだ。でも、もう着られんな。今夜のsouvenir にしよう。"
観衆が歓声を上げる。
ブッチャーは、帽子を取り、一礼する。
"芝居はどうなった?"
"役者ども、続けろ。休憩は、終わりだ。"

アムステルダムは、事件を思い出し、乱れた息を調える。男とぶつかる。
"シェイクスピアの悲劇だな。"
" What? "
"シェイクスピアを?"
モンクが尋ねる。
"聖書を書いた奴だよ。"
"何の話だ。" 
"親父と同じ、無学で、がさつなアイルランド野郎だ。"
胸ぐらをつかまれ、抵抗するが、壁に押し付けられる。
"人の頭をぶち割り、手当たり次第、ぶっ壊すだけか。親父と同類だ。"
"黙れ。手を離せ。" 
"『力のない者は、頭で勝負』だ。お前は、頭がいいのか、馬鹿なのか。兎に角、忘れるな。"
モンクは、行く。

"アムステルダム、アムステルダム。『ニューヨーク』がお呼びだぞ。"
ブッチャーとアムステルダムは、女を侍らし、酒を飲む。
"見ろよ。ありゃ一体、何だ?暗黒大陸のリズムに、アイルランドのステップを混ぜ、鍋に入れて、かき混ぜりゃ、ごった煮のアメリカ料理。とんだシチューだ。"
"記念品だ。"
真鍮の粒を取り出す。
"頂くよ。"
ビル、2階へ。"
女が誘う。
"前に寝たか?なれなれしく呼ぶな。"
"ビル。無事で良かった。すっ飛んで来たぞ。"
"死の天使がやって来た。"
"ビル。何を言っている。私は、何も関係など。"
トゥイードが言う。
"もし、そうなら。今頃、あんたは、棺の中だ。傷が痛むんだ。べらべら喋らず消えろ。"
"1杯だけ。"
"そいつは、病気持ちだぞ。"
"酷いわ。嘘よ。"
女たちは、徐々に消える。
"ジェニー。"
ブッチャーが、呼び掛ける。ブッチャーを介抱するジェニーから、アムステルダムは、目を背ける。
"我慢して。"
"男を泣かせる女だ。"
"我慢するのよ。" 
アムステルダムは、女が勧めるパイプを吸う。
"一人前だな。"
"心配するな。"
アムステルダムは、立ち上がり、グラスを掲げる。
"ブッチャーに。あんたに感謝している。永遠に。" 
"ブッチャーに。""ブッチャーに。"
アムステルダムは、その場を去る。
"早く消えなさい。" 
"さあ、早く。"
ジェニーは、居残る男たちを追い立てる。
アムステルダムは、ジェニーに噛み付く。
"君と寝ていない男が?"
" Yes. あんたよ。"
2人は、殴り合い、アムステルダムが、ジェニーを柱に押し付ける。
"暴れるな。"
"噛み付くわよ。"
"本気で、噛み付く積もりか?"
"怖い?"
ジェニーは、噛み付こうとするが、アムステルダムに、唇を奪われる。いつしか、互いに唇を求める。ジョニーが、物陰から見ている。ブッチャーは、ベッドに、女たちを侍らす。
アムステルダムが、ベッドで目覚めると、傍にブッチャーが、控えている。
" Can't sleep. "
"彼女とここで寝た。怒らないだろうな。"
"好きにするが、いいさ。"
"肩の傷が痛くて、眠れないのか?"
"眠れないたちでね。片目で眠るにも、片目しかない。歳は、いくつだ?"
"分からない。数えていない。"
" I'm 47。今年で47歳。"
"何の力で、ここまで生きられたのか。恐怖で、血の凍る場面。俺から盗む者は、手を。俺を怒らせた者は、その舌を。逆らう者は、首をはね、それを杭に突き刺した。見せしめのため、高い杭に。それで、物事が収まる。Fier. 今夜殺したあいつは誰か。知らん。虫ケラだ。思えば、恥ずかしい人生だ。恥を知る相手を、最後に殺ったのは、15年前。以来。階下にある肖像画を?"
" Hun m. "
"女を舐め過ぎて、口が開かんか?"
"見ましたよ。" 
"カッと来たか。気に入った。血がたぎっている証拠だ。神父の信条は、俺と同じだった。違ったのは、信仰心だけ。奴に貰った傷だ。足腰が立たんほど、殴られた。顔は歪み、腹を刺され、肋骨は、折れ曲がった。とどめを刺されかけ、俺は、目を逸らした。奴は、殺さなかった。俺が、一生、恥じるように。凄い男だ。俺は、逸らした目をえぐり、紙に包み、奴に送った。盲目で、戦えるなら、両目を送った。俺は、立ち直って、奴を奴の血の中に、葬った。"
"さすがだ。"
"記憶に値する相手は、奴だけだ。"
"息子が欲しかった。文明は、崩れかかっている。"
背中を見せているジェニーに、話しかける。
"何か言いたいか?言うなら、今だよ。あいつの話を。"
"あたしは、12歳。母さんが死んで、道端で暮らしていた。彼が拾って、面倒を見てくれたの。彼なりにね。お腹の赤ん坊を出して、彼は、傷のある女が嫌いなの。でも、言っておくわ。あたしが許すまで、彼は、あたしの体に触れなかった。"
アムステルダムは、ジェニーに背中を見せて、毛布に潜り込む。
" Who are you? Who are you? "

アムステルダムが、戸外の柱にナイフを投げる。刺さったナイフを抜き、また投げるを繰り返す。

ファイブ・ポインツの記念日。
中国人の舞。
"お集まりの皆さん、脅威と魅惑に満ち満ちたこの宮殿にようこそ。かのシェヘラザードが描いた夢の世界さえも超えて、アラビアン・ナイトの香しき夜が、皆さんの目を楽しませます。"
大勢の男女で、パゴダは賑わう。ジョニーがやって来る。
"第16回 1846年を記念する会"
"開催日 1846年2月3日"
ブッチャーは、ナイフを腰に差す。アムステルダムは、ナイフを握り、祈る。
"このドイツ美女を競る方は。鳥籠に入ったエキゾチックな鳥たちをご鑑賞あれ。男ならば、こう思う筈。『この鳥を、一夜、歌わせてみたい』と。それは、金次第。金を見れば、この鳥は歌います。"
女が、籠に入り、吊るされ、競りにかけられる。
アムステルダムは、パゴダに向かう。
"神よ。聖霊の鋼を我が背骨に。そして、聖母の愛を我が胸に。"
アムステルダムは、祈る。
ベッドに横たわる裸の女たち。
ブッチャー。
"気をつけろ。今、何と言った。" 
ジョニー。
"奴に騙されている。"
"騙されている?"

"幾ら出す?競り落とすのは、誰だ?"

ブッチャーとジョニー。 
"助けられた事を考えろ。"
"奴が、日夜、考えているのは、あんたを殺す事だ。"
ブッチャーは、ジョニーの胸ぐらをつかみ、壁に押し付ける。
"その汚い舌を引っこ抜くぞ。"
ナイフを、壁に突き立てる。
"ケツに突っ込んでやる。このドブネズミ野郎。"
"名は、ヴァロンだ。本当だよ。奴の名は、ヴァロンだ。"

パゴダのトゥイード。
"中国人は変わっている。"
"『何も隠していない』って事の証明に、袖が短い。"
"不便な風習だ。"
"ジョニー。"
アムステルダムが声を掛けるが、振り向かず、行ってしまう。
"どけ。"
男を所払いし、椅子に座る。ブッチャーを窺う。
"ご来場の紳士淑女方。ご静聴を。お気づきとは、思いますが、今夜は、ここに、我々の良き友にして、守護神ビル・カッティング氏が、目にも鮮やかなチョッキを着け、宴を共にしておられます。彼にお願いしましょう。ぜひ、その見事な技のご披露を。正確無比。大胆不敵な度胸。息を呑むドラマ。"
ブッチャーは、舞台に上がり、踊り子の足元に、ナイフを打つ。3投目は、踊り子のドレスの裾を貫く。
"『蜘蛛のキス』を。
"『朝顔の技』を。"
"『死の車輪』"
"ウィリアム・テル。"
"バタフライ。"
"蜘蛛のキス。"
"ブッチャーの弟子。"
"『ブッチャーの弟子』か。"
"それがいい。頼むぜ。"
アムステルダムのそばに、ジェニーが来る。
"探したのよ。"
"リクエストに応えよう。"
"早く帰れ。"
"それでは、危険を考えて、俺のかつての助手に助けを頼もう。ブッチャーの初代助手。どうだ、ジェニー。もう一度昔のよしみで。Com'on. "
ステージの絨毯が巻き取られる。
"抑えて。"
ジェニーは、前に進み出る。
"今晩は。ビル。"
"大丈夫だよ。"
アムステルダムが言う。
ブッチャーは、ジェニーにショールを羽織らせる。
"覚えているか?"
"勿論。"
壁の前に立つジェニーに、ブッチャーがナイフを投げる。2本のナイフが、ショールの肩口に刺さる。
"ショールは、脱いだ方がいいよ。Miss エヴァディーン。"
"じゃ、代わりを盗んで。"
拍手が起こる。
"ポケットの中に何が?"
"仕事は、今からなの。"
"俺の贈ったロケットだな。"
ジェニーは、ロケットを外す。ナイフが飛んで来る。ロケットを落とす。
"済まん。拾ってくれ。"
かがんだジェニーの手の先に、ナイフを打つ。
"またしくじった。"
笑い声が起こる。
"壊れちまった。腕が鈍ってしまった。"
ナイフは、ロケットのチェーンの輪を捉えている。ブッチャーが、またナイフを投げる。ジェニーは、間一髪、よける。
"派手なフィナーレはどうだ?"
"そんな甘い狙いで?"
ナイフが、ジェニーの首際に刺さる。
アムステルダムは、異常を察知する。
"異国の音楽は、やめろ。猿は引っ込め。バンドと交代だ。アメリカ人のための夜だ。"
"ジェニー。"
アムステルダムは、人混みをかき分け、ジェニーを探す。
アムステルダムは、ブッチャーに近づき、ナイフに手を掛ける。ブッチャーは、コップの酒に、火を点ける。
"脱帽。"
"我々は、忘れない。街に倒れた兄弟の事を。街の歩道は、彼らの血で、染まっている。我らは、今宵、敵の指導者を讃えたい。名誉に生き、信念のために、勇敢に戦い、その信念に殉じた。私は、敵に勝つべく、彼の命の炎を消し、この炎と共に、彼を飲みくだす。ヴァロン神父を讃えて。"
アムステルダムは、ブッチャーにナイフを投げるが、ナイフで払われる。アムステルダムは、空に銃を撃ち、ブッチャーの投げたナイフを、腹に受ける。
"思い知れ。"
アムステルダムは、捕らえられる。
"君たちに紹介しよう。ヴァロン神父のせがれだ。目をかけてやって、これが、その礼か。私の命を助け、その翌日は、男らしく戦いもせず、俺の暗殺を試みる。高潔な父親の名を汚す見下げ果てた奴だ。"
ブッチャーは、ナイフを抜き、アムステルダムの胸を切り付ける。アムステルダムは、隠した武器を奪われる。
"動かんように、押さえろ。"
アムステルダムは、台の上に載せられる。
"黒人の出る幕じゃぬえ、引っ込め。"
"消えろ。"
"新鮮な肉を料理してやろう。"
ブッチャーは、アムステルダムの上にまたがる。
"固い肉を、柔らかくしてやろう。可愛い顔に、別れを言え。"
アムステルダムの顔に、唾を吐き、頭を何度も打ち付ける。ジェニーが、悲鳴を上げる。 
"やめて。"
"どこを切る?リブ肉か?腰肉か、すね肉か?"
"レバーを。"
放り上げた包丁が、アムステルダムの顔のそばに刺さる。
"肺だ。"
"レバーを。"
"心臓をやれ。"
"こいつに心臓はない。"
"じゃ、殺せ。"
"こいつには、俺の手で殺す価値はない。そう。一生を恥を背負って、街をさまようのだ。サーカスの見世物のように。ブッチャーが命を助けたたった1人の男だ。"
焼けたナイフが、アムステルダムの頬に。押し当てられる。ジェニーは、叫び続ける。

▶︎デッド・ラビッツ再び
地下通路。
ジェニーが、医者を導く。
" Here. This way. Com'on. "
悶えるアムステルダム。ホルマリンをかがされ、眠りに落ちる。ジェニーは、アムステルダムの顔に、優しくキスをする。
"見せたいものがあるの。"
地下の貯蔵庫を開く。
"母の遺骨も入っているの。13歳の時から、1ドル稼ぐ度に、10セント貯めたの。215ドル貯まったわ。盗みで稼いだお金よ。見せたいのは、これ。元気になったら、ここへ。サンフランシスコよ。カリフォルニアのね。夢が、何でも叶う土地。この人たちは、素手で川から、黄金をすくっているの。今は、ここ。目指すのはここ。"
ジェニーは、地図上で示す。
"ここから、こんな風に回って、サンフランシスコへ。一番の近道よ。一緒に行って。"
モンクが、部屋に入って来る。ジェニーは、拳銃を向ける。
"そんなもの、俺に向けるな。彼と話をしたいんだ。"
ジェニーは、腰を下ろす。
"刻み目が、44個。死んでから神に。44回、申し開きをせねば。親父も、戦って死んだ。アイルランドの路上で。相手は、特権を得るために、民族抹殺を狙う連中だった。1,000年を超える怨念の戦い。その戦いが、海を越え、ここへ。俺たちより先にね。君の親父は、同胞のために戦った。『デッド・ラビッツ』を率いてね。もう少し、生きていたら、彼も、欲に塗れていたかな?"
アムステルダムが、体を起こす。
"親父のポケットを探ったろ?"
"これだよ。"
十字架があしらわれた小袋を取り出す。
"これを君にと。"
汚れた剃刀が入っている。
"血は、そのまま消えない。"

アムステルダムが町を歩く。人々が、遠巻きに見ている。アムステルダムは、広場のモニュメントの柵に、剃刀を掛ける。

頭を潰された兎。
ブッチャー。
"痩せこけた兎だ。"
"この3か月は、平和だったのに。どうだ?嫌な役目かな?"
"いいや。"
ハッピー・ジャックが答える。
"嫌じゃないさ。本当だよ。だが、俺は、法に仕える身。それが、俺の職務だ。"
"そりゃ、一体、何の話だ?今更、迷っていると、行き着く先は、地獄だぞ。"
"そんな話は、していない。"
"よく聞け。お前の良心の葛藤など、豚に食われろだ。薄ら馬鹿め。頭に刻みつけとけ。お前が、自ら行くんだ。子分なんかにやらせるなよ。お前が、自ら、その手で制裁を加えるんだ。哀れな兎を殺したやつにな。"
ブッチャーは、涙ぐむ。
"分かったな?"
" Right. "
"美味い豚でも食っていけ。"
ハッピー・ジャックは、外へ出る。
"ファイブ・ポインツ伝道所"

ハッピー・ジャックは、地下道にアムステルダムを探す。銃を撃つ。
"クソっ。お前か?はずみで、撃っただけだ。お前が、脅かしたから。お前に、手は出さん。警戒は、無用だ。親父の友達だよ。お前の『ジャックおじさん』だ。あの頃は、良かった。何もしないよ。"
アムステルダムは、背後から、首を絞める。
ハッピー・ジャックの死体は、広場の鉄柱に架けられる。
"死んでいるの?"
"こいつは、まずい。次に殺られるのは、政治家か?"
"政治家の数人より、奴の方が役に立った。それにしても、なかなかやる餓鬼だ。いずれ決着をつけてやる。"
集会所の建設が進む。アムステルダムも汗を流す。ジョニーたちがやって来る。
"やあ。"
奥で、車座を組む。
"毎日、アイルランドから船が来る。週に、15,000人が港に着く。ネイティブズが何だ。結束すりゃ、"gang"どころか"army"ができる。後は、火花一つ。火花一つで、我々、皆、目覚める。"
"俺がお前を売った。"
ジョニーが、口を開く。
"悪かった。"
"悪かった?裏切りの制裁は、killだ。"
"消えろ。2度と戻るな。"

ジョニーが、マッグロインに、行く手を阻まれる。
"どこへ行く?さあ、一緒に来るんだ。"
ブッチャーたちの前に晒される。
"ジョニー。トラブルか?"
"トラブルなど。"
"仲間と隠れてんのか?"
" No. もう別れました。俺は、あんたたちの味方だ。"
"昔から、ネイティブズだと思っていたよ。なのに、垂れ込み屋になった。ネイティブズになる資格を?ネイティブズとは、祖国のために、喜んで命を捧げる男の事だ。My father done. お前に、それができるか?"

"ジョニー、ジョニー。"
顔に傷を負い、戸外に立つジョニーの様子を、ビリーとジェニーが伺う。胸にも、傷を負っている。
"苦しくて、我慢できない。"
アムステルダムは、ジョニーの頭を抱く。
"殺してくれ。ひと思いに。Please. "
ジェニーは、アムステルダムに拳銃を持たせる。
"頼む。"
"許してくれ、ジョニー。"
ビリーは、引き金を引く。
ブッチャーは、刃物を研ぐ。
アムステルダムは、地面に膝まづく。
"聖なる母。死を迎える罪人に祈りを。アーメン。母さん。安らかに。"
マッグロインは、祈る。
"何している。"
ビリーが現れる。仲間に取り囲まれる。
"黒人が教会に。"
マッグロインは、殴られ、地面に倒れる。
"お前らに、何の関係が?"
"白人同士の争いと、教会に黒人を入れるのとは、別だ。"
"自分らの教会に戻れ。"
"お前ま、ジョニーの二の舞だぞ。"
"マッグロイン。"
ブッチャーが、現れる。
"教会に、黒人を入れるのか。"
マッグロインは、殴られる。

ブッチャー率いるネイティブズが、夜の町に繰り出す。
デッド・ラビッツの軍勢は、教会の前に終結する。
" Jesus. "
ネイティブズが、デッド・ラビッツに対峙する。
"地球は、回っている。人は、それを感じない。ある夜、ふと見上げると、たった一つの火花で、Sky is on fire. "
ブッチャーが、口を開く。
"情けない連中だ。準備ができるまで、待とう。"
"過去は、足元を照らす明かり。父たちが、示した道を歩んで行こう。信念こそ、敵がもっとも恐れる武器。"
ネイティブズは、引き揚げる。
"その力で、同胞は立ち上がり、敵を倒す。『デッド・ラビッツ』の名の由来は、『虐げられた者』。今も苦しむ者に、我々は、呼び掛ける。故郷を遠く離れ、海原を越えたこの地で、数が集まれば、大きな力が生まれ、同胞に救いが訪れる。"

"名前を登録するんだ。"
"誰が、軍隊なんか。"
" 300ドルあるのか?"
"ある訳ねえよ。"
"徴兵法の定めだ。徴兵免除には、300ドル要るんだ。ない奴は、徴兵する。"
男と官吏が揉み合う。
"待て。"
トゥイードが声を掛ける。
"君らは、移民だ。この国のため、戦う義務がある。"
"見ろ。戦争は、嫌だね。"
"お前らに、用はねえ。"
トゥイードは、男に尋ねる。
"この男と、話をしたい。"
"英語を話せんのか?"
"分からない。"
"話している。"

"悪いが、銃を、こっちに向けんでくれ。"
ジェニーは、微笑んで、銃を下げない。
"ヴァロン君。この記事を読んだかね?大司教は、アイルランド人の半数の支持を得ている。私と手を組み、ビル一派が推す候補者を潰そう。タマニーのために、票を集めてくれれば、たっぷり礼をしよう。ファイブ・ポインツの新しい友人。君が、その友人だ。"
"待ってくれ。トゥイードさん。もし、票を集めたら、俺の選ぶ候補の支持を?"
"できん。"
"全アイルランド票でも?"
"男が、女王になったら、可能だろう。"
"何だって?"
"あり得ないって事さ。市会議員程度なら、推薦しよう。"
"市会議員は、もういるわ。"
"だから。"
"その上は?Sherif. Sherif だ。アイルランド人を、sherif に推すんだ。そしたら、票集めに協力しよう。"
"市会議員以上は、無理だよ。"
" Why not? "
"全アイルランド票は、集まらん。"
" I can. "
"それに、保安官の職に適うアイルランド人などおらん。"

"モンク。見ろ。"
理髪店の椅子に座るモンクに、保安官候補のポスターを見せる。
"祖父様そっくりだ。"
"大物か?"
"酔っ払いさ。演説をしても?"
"だから、指名した。"

"現議員たちは、口では公約。手は、我々のポケットをまさぐっている。"
トゥイード陣営。
"我々は、地域のリーダービル・カッティングの支援を受け、民主主義を侵すすべての勢力に、戦いを挑む。"
モンク。
"我々は、搾取する者を、許さない。"
"アイルランド人排斥。"
"このウォルター・マクギンに、君らの1票を。"
"職を盗む貧乏移民を、追い返そう。"
"アイルランド人が戦う場所は、South じゃない。NYの路上だ。"
"ファイブ・ポインツが、生んだ闘士は?"
"モンク。"
" NY中に聞かせろ。"
"奴は、適任者だ。"
"44人と、ほかに数100人殺ってる。"
" Right? "
"市長にしたいね。"
ブッチャー。
"投票日だぞ。引っ立てろ。"
"逃げるな、黄色のチビ。"
"投票に行くんだ。ごろつきめ。"
"黒人のために、腕をなくしたんだ。"
"そりゃ、ご立派。"
ナイフを向ける。
"起きろ。投票日だ。スリにも投票権のある偉大な国だ。"
ジェニーは、理髪店で投票を呼び掛ける。
"もっと早く。"
"どこへ?"
"もう投票したよ。モンクに1票入れた。2度もね。"
"たった2度?それで、市民面すんな。"
"ダメよ、そこに座って。髭を剃り落として、もう一度、投票所に送れ。"
"『モンク/タマニー』と書けよ。"

"新しい市の裁判所が、必要だ。簡素で、金のかからん建物でいい。失礼。"
トゥイードは、出掛ける。
"モンクの票が、有権者数より、3,000票多い。"
"たった3,000?もっと集めて、圧勝しろ。"
"投票用紙がありません。"
"選挙は、投票用紙の数じゃない。票を数える者が、左右するんだ。"
モンクが、保安官に当選する。

"移民排斥のネイティブズ"
ブッチャーは、ネイティブズの旗に向かい、カードをもてあそぶ。

豚の生首。
"ビルからだよ。"
"モンク。"
生首に添えられた紙を取り上げる。
"今日だ。ビル"
理髪店を出たモンクの前に、ブッチャーが現れる。
"ファイブ・ポインツの諸君。カッティング氏は、私に喧嘩を売って、流血沙汰で、私を脅そうとしている。どっちを選ぶ?カビの生えた掟に生きている奴らを、この腕で黙らせるか、新世界の新しい声として、この私に公職を与えるか。"
"どうだ、ビル。彼らの答えだ。『流血』と聞いて、声も出ない。来い。民主的に、話をつけよう。"
2人は、理髪店に向かうが、ブッチャーは、モンクの背に、ナタを振るう。
"どうだ?これが、少数派の票だ。俺の羊肉の味は、どうだ?"
"よし、これを見るがいい。"
モンクの杖に、傷を付ける。
"お前を刻んだぞ。45番目の刻み目。『アイルランドの豚』"
杖を、地面に振り下ろす。
"骨も、アイルランドの緑色だろう。"

"フォチュナ・ジュヴェト・オーデンテ。天は、勇気ある者の味方。"
トゥイードが、宣言する。
選挙の勝利を祝い、音楽が演奏される。モンクの杖が、届けられる。

"当選した公職者を、殺した?"
"誰が選んだ?"
ブッチャーは、平然と言う。
"気は確かなのか?"
"綺麗事言うな。冷たくもなく、熱くもなく、生ぬるいお前など、噛んで吐き出せる。汚い世界に浸かれ。まず、父親。その次は、息子を殺る。広場を、奴の血で染める。2度塗りだ。奴の内臓で、部屋を飾るぞ。タマニーのファック野郎。今度、ポインツに現れたら、俺が、地獄に蹴落とす。祝賀会でも、何でもやれ。飯の邪魔をすんな。"

モンクの葬儀が行われる。
"止まれ。Raise. "
教会を出た棺は、霊柩車で運ばれる。ブッチャーの前を通りかかる。
"あいつ。"
アムステルダムが、制して、前に出る。
"挑戦する。" 
"いいとも。受けよう。"

"第6連隊死傷者名簿"
焼け野原に転がる死体。
"史上初の徴兵制度実施 NY市25,000名 ブルックリン7,000名"
"徴兵制度実施の日が、訪れた。"
"トマス・オニール。アンドリュー・ルイス..."
"戦死者の名を聞くようだった。
" J.B.グリーソン。"

"オコネル・ガールズ。"
"一方、我々の方は、組を招集。ドラムが響いた。"
"デッド・ラビッツ。"
"アメリカン警備団、大西洋警備団、スローター・ハウス、バワリー・ボーイズ、米国ネイティブズ連盟。"

"ジェームズ・ムーニー。"
"運命の時は、近付いていた。"
"日時は?"
"いつでも。"
"明日の夜明け。"
"場所は?"
"パラダイス・スクエア。"
"武器は?"
"決めてくれ。"
"煉瓦、棍棒、斧、ナイフ、ピストル。"
"ピストルは、外す。"
" Good boy. "
"これで、決定だ。解散。"

徴兵者の抽選。
"トマス・マカボイ。W.H.マイルズ。"
抽選所の窓が、破られる。
"徴兵制度反対。ぶっ壊せ。"
火が放たれる。
"金持ちを殺せ。"
トゥイードは、馬車に乗る。
"5番街へ。"
"息子を返して。"
"徴兵役場では、警官が、何人かの頭をぶち割り、皆、逃げ散った。暗闇に噂が、流れた。5番街のリッチな連中は、気分にまだ余裕があった。"
ビリヤードを楽しむ裕福層。
"リンカーンの演説は、腹に据えかねる。"
"当然だよ。私も同感だ。"
"世論は。"
"世論は、色々でも、正しい解釈は一つ。権利の濫用は、許し難い。"
"むしろ、あの程度だった事を、感謝しよう。グリーリー君。"
"この先は?それが心配だ。"
"トゥイード君。君が、よく口にする言葉があったな。"
"私が?"
"貧乏人の同士討ちで、すべてが解決。"

アムステルダムは、剃刀で、頬を傷つける。
"お別れよ。カリフォルニア行きの船に乗るわ。"
"明日まで待て。一緒に行く。"
"死んでるわ。"
"どうしろと?"
" I don't know. "
"明日には片がつく。"
"つかないわ。この街は、灰になる。"
ジェニーは、消える。

ビリヤード場。
"ファイブ・ポインツでは、騒ぎを起こしたい連中が、火を灯したローソクを、窓に立てているそうだ。人種を問わずにね。"
"この街は、狂っておらん。今夜も、夜は暗いよ。"
ファイブ・ポインツ。
家々の窓に、ローソクがともる。
朝。
"今日は、仕事に出るな。工場は閉鎖だ。"
"翌朝、陽が昇ると、街は二分されていた。全市から、人が集まった。工場労働者、街の清掃人。人種を越えて。徴兵制度や連邦に、関心などなかった連中だ。『金持ちは、戦争に行って、死ね』、『貧乏人は、家から出ないぞ』。大地は、震えていた。だが、俺には、親父の復讐がある。"
アムステルダムは、斧を手に取る。
ブッチャーは、ナイフを研ぐ。
"頭をぶち割ろうぜ。"
群衆が、暴徒と化す。
ブッチャーは、祈る。
"天なる神よ。私は、あなたの短剣です。"
アムステルダムも、祈る。
"お導きを。復讐の日です。"
7番街の邸宅でも、食事前の祈り。
"神は善。あなたに、感謝を捧げます。"
ブッチャー。
"あなたから、脚と力では、逃れられない。"
アムステルダム。
"血に渇いた剣が、その渇きを癒すまで、敵に永遠の眠りを。"
ブッチャー。
"審判を下される神よ。"
アムステルダム。
"悪を打ち砕く神よ。"
7番街。
"慈悲深き神よ。神の愛は、永遠なり。"
ブッチャー。
"アーメン。"
アムステルダム。
"アーメン。"
7番街。
"アーメン。"
邸宅の窓が割られる。暴徒たちが、侵入する。
"2階へ行け。女たちは、2階へ行け。"
ピストルで応戦するが、主は、すぐに暴徒に取り囲まれる。
"18管区7番街の27丁目に暴徒。警察に予備力なし。16管区。暴徒を恐れ。8番街の商店は、すべて閉店。"
警察が、鎮圧を図るが、投石にたじろぐ。
"戦ってみろ。腰抜けども。"
"4番街の黒人アパートを、暴徒が襲撃。略奪と放火。3番街では、銃砲店が襲われ、暴徒が、銃で武装。"
"ニガーをやれ。"
"3番街の保安官事務所で、火災発生。2人の黒人にリンチ。黒人が、全市で襲われ、大勢が助けを求めている。"
"徴兵逃れを追え。"
"パパが、300ドル払ったのか?"
"2番街21丁目の角の武器庫が襲われる。武器庫には、500丁の銃。"
ジェニーは、港に向かう。アムステルダムたちは、町を出発する。
"通信線を切られた。"
電柱に登った男が、感電し、宙吊りとなる。
"第4埠頭に暴徒。黒人を殺している。ここにも、暴徒が接近中。"
ジェニーは、棍棒で腹を殴られる。倒され、略奪される。
"そのバッグを奪え。"
"2番街の武器庫が、暴徒にやられた。建物が放火される。警官の負傷者数、既に300。軍隊の応援は。市長の屋敷に、暴徒。警官100人を回せ。2番街と33丁目の角で、放火。バーナム・サーカスから、動物が逃げ出した。"
ジェニーは、略奪者の女を、銃で撃つ。
"軍艦が2隻。砲撃位置についた。砲撃目標は、暴徒。暴徒の群れ、『トリビューン』社へ。警察が襲われたが、無防備。阻止できず。第7連隊が、救援に到着。ブロードウェイ方面へ。"
"手を離せ。"
"暴徒の数は、4,500。ハーレム橋が、焼き落とされる。"
"街を乗っ取られた。"
"行け。ニガーを殺っちまえ。"
"21管区。黒人が襲われている。黒人保育園の子供たちを守れ。7番街と28丁目で、黒人死亡。"
"殴り殺せ。"
"捕らえた暴徒は、どうします?"
"この戦いに、捕虜はない。それより、暴徒を早く抑え込むんだ。"
"軍隊が出動。暴徒は、散りません。命令は?次の命令は?"
デッド・ラビッツは、表に出る。お揃い風のシャツ。逃げ出した象に、たじろぐ。
ピット・ストリートとブルームの交差点。
"全隊止まれ。"
軍隊と暴徒が対峙する。
"銃を構えろ。" 
パラダイス・スクエアでは、ネイティブズとデッド・ラビッツが対峙する。
"合図しろ。ヴァロン。"
軍隊が、呼び掛ける。
"命令だ。早く散れ。"
"撃て。"
暴徒たちは、銃弾に倒れ、逃げ帰る。
アムステルダムは、斧を掲げる。
その時、軍艦から、大砲が発射され、デッド・ラビッツの隊列の後ろに、着弾する。以後も、次々と着弾し、双方の隊列は乱れる。
"広場から出すな。"
"ビル。"
大砲は、止まず、軍隊の兵士が侵入して来る。
"ビル。"
アムステルダムは、叫ぶ。
土煙の中、ブッチャーが駆け寄り、アムステルダムを斬りつける。アムステルダムは、突進して来る兵士を、銃剣で刺し殺す。
土ぼこりを浴び、ブッチャーとアムステルダムは、地面に横たわる。マッグロインが、逃走を試み、兵士の銃弾を浴びる。ブッチャーとアムステルダムは、起き上がるが、ブッチャーは、脇腹に被弾している。
男が、マッグロインを撃った兵士に、手斧で立ち向かう。
"シャング。やめろ。"
シャングは、なぶり殺される。
ブッチャーは、腹に刺さった瓦礫を抜く。
"神よ。感謝を。アメリカ人として、死ねる。"
ブッチャーは、膝まづいたまま、脚の短剣を抜く。
アムステルダムは、ブッチャーを刺す。ブッチャーは、前に崩れる。一瞬、アムステルダムを見るが、瞼が閉じられる。
ジェニーが、広場にやって来て、仰向けに寝そべるアムステルダムに寄り添う。2人は、抱き合う。
"明日の朝、波止場で、下船する移民に、スープとパンを配れ。" 
トゥイードが言う。死体が穴に埋められる。
"沢山の票を失ったからな。"
"その夜、死体の上に、ローソクが灯された。友達が、確認できるように。市による無料サービスだった。シャング、ジミー・スポイルズ、ヘル・キャット、マッグロインその他。敵も味方も、今となっては、関係ない。"
アムステルダムは、ジェニーに支えられ、よろよろ歩く。
"昼夜4日をかけて、暴動は、やっと鎮圧された。あの週に、何人の市民が死んだかは、今も分からない。父は言った。『人間は、皆、血と試練から生まれる』と。" 
アムステルダムは、剃刀を土に埋める。
"この大都会にも、同じ事が言える。あの狂騒の日々の中で生き、また死んだ者には、すべてが、根こそぎ、洗い流されたようだった。また、新しい街が、造られるだろう。"
"ウィリアム・カッティング1860年没"
"時の流れる限り、そして、我々の事を知る者もない。"
橋がかかり、摩天楼が聳える。
【感想】
ギャング映画というより、ギャング創成期1840〜60年代南北戦争期のアメリカ・NYの状況を描く。ただし、史実には即さないと言う。また、スコセッシのディカプリオ起用第1作でもある。土ぼこりっぽい街に、庶民は、モノトーンのwoolyな簡素な衣装をまとう。ギャングの頭領ブッチャーは、酷薄な男として描かれるが、終始、ダニエル・デイ・ルイスは、微笑みをたたえているように見えて、役にそぐわない感がある。大金を投じた往時のNYの街並みを再現したセットが素晴らしい。

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