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ロゲさん フィンランドノート②

ロゲさんは、フィンランド行きの飛行機で、隣の席に座っていたスウェーデン人のおじさん。目がとっても大きくて、今思えば大きなくまさんのような、とても感じの良いおじさんだった。

こちらは27歳で初めての海外1人旅。親にはツアーだから心配しないでね、と言った。実際ツアーだけど、参加者は私だけ(1人部屋追加代金6泊分+1名催行追加代金=41,000円を躊躇なく支払っている)。若さゆえか、こわいものしらず。こわいよりもワクワクの方がまさる。もう楽しみで仕方なかった。

ムーミンが描かれたフィンエアーに乗り込み、出発を今か今かと待つ。27歳彼氏なし。出会いも大いに期待していた。フィンランドで私は出会い、向こうに住むんだと半分本気で思っていた。でも半分は、出会いのためではなくて。子どもの頃から大好きなフィンランドにどうしても1人で行かなければならない!という使命感があった。とにかく1人で行ってあじわいたかった。

二人掛けの座席。私は窓側で、ロゲさんは通路側だった。先にロゲさんは座っていて、とても親切に話しかけてくれた。「トイレに行きたい時とか、遠慮しないで起こしていいからね」と。感じの良い人でラッキーだった。何かと話しかけてくれる。「ぼくは日本のみんなからロゲさんって呼ばれてるんだ。本当はロジャーなんだけど」「日本の100円ショップっておもしろいね」「わたしはね、こんな仕事をしているんだ」写真をたくさん見せてくれる。スウェーデンと日本をけっこう行き来している方のようだった。

16歳の娘さんがいて、家には馬がいる、と言っていた。どんだけ広い家なんだろうと想像する。16歳の娘さんが乗馬でもするんだろうか。勝手に思い浮かべる。

10時間のフライト。飽きてくるが、隣のひとが親切だと安心できる。本当にありがたいと思った。私はメモ用紙で折り鶴を折って「どうぞ」とあげた。ロゲさんは喜んで胸のポケットにしまってくれた。メールして、と名刺をくれる。ヘルシンキに着き、手をふりあってわかれた。

日本に帰ってから、早速お礼のメールを送る。ロゲさんはデスクに折り鶴を飾ってくれたらしい。この折り鶴のおかげで商談がうまくいったよ、と書いてあった。ロゲさん、よく捨てなかったなあ。
仕事から帰ってメールをチェックする。ロゲさんはすぐメールを返してくれる。でも私には英語力がなさすぎて、返信するのにとても時間がかかる。夜中になる。返信がどんどん遅れてしまう。… メールは途絶えた。

ロゲさんはとてもいいおじさんだった。いいおじさんだなあ、と思うのは、この言葉を飛行機で言ってくれたから。私のフィンランド一人旅の背中を押してくれた。
「え、1人で旅するの?」驚いた顔。

" Brave woman "

大きな茶色い目で、ほほえんでこう言ってくれた。仕事もろもろ、なんだかダメダメだって思ってた27歳に、ロゲさんはこう言ってくれたのだ。

*brave…勇敢な、勇気がある